COLUMNコラム
警備員・保険外交員は要注意!自己破産中の「職業制限」と復権の時期
破産・再生 2026.03.12.
~目次~

(相談者) 横田先生、借金の返済がもう限界で自己破産を考えているのですが……
一つだけ、どうしても踏み切れない理由があるんです。実は私、警備員の仕事をしているんです。「破産すると警備員になれない」と聞いたことがあるのですが、仕事をクビになってしまうのでしょうか?

(横田弁護士) なるほど、それはご不安ですよね。結論から申し上げますと、警備員や保険外交員など、一部の職業には確かに法律上の【資格制限(職業制限)】があります。
しかし、これは「一生その仕事ができなくなる」という意味ではありません。手続き中の「数ヶ月間だけ」仕事ができない期間がある、というのが正しい理解です。

(相談者) えっ、一生じゃないんですか?てっきり免許剥奪のようなイメージを持っていました。数ヶ月で済むなら、会社に相談して部署異動などで乗り切れるかもしれません。

(横田弁護士) おっしゃる通りです。実際にそのように対応されて、職を失わずに解決された方はたくさんいらっしゃいます。それに、どうしてもその数ヶ月すら仕事を休めない場合は、「個人再生」という別の解決策もあります。
今日は、この職業制限の仕組みと、仕事を守るための具体的な対策について詳しく解説しましょう。
自己破産で仕事ができなくなる?「資格制限」の正体
借金問題の解決策として強力な自己破産ですが、デメリットの一つに【資格制限(しかくせいげん)】があります。
これは、破産手続きが開始してから免責(借金の免除)が確定するまでの間、特定の職業に就くことや、特定の資格を使った業務を行うことが法律で禁止される制度です。
なぜこのような制限があるのでしょうか。
制限される職業の多くは、「他人のお金を預かる業務」や「高度な信用が求められる業務」、「他人の秘密を取り扱う業務」です。経済的に破綻してしまった状態の人がこれらの業務を行うと、横領などの不正を働く誘惑に駆られやすく、顧客に損害を与えるリスクがあると考えられているためです。
しかし、冒頭でもお伝えした通り、これは【一時的な措置】に過ぎません。
永久に資格を剥奪されるわけではないという点を、まずは正しく理解してください。

要チェック!法律で制限される具体的な職業リスト
では、具体的にどのような職業が制限を受けるのでしょうか。
代表的なものを挙げます。ご自身の職業が該当するか確認してみてください。
■ 士業・専門職
弁護士、司法書士、行政書士、税理士、公認会計士、社会保険労務士など 法律や会計を扱う専門職は、ほぼすべて制限の対象となります。
■ 金融・不動産・保険関係
- 生命保険募集人(保険外交員)
- 損害保険代理店
- 宅地建物取引士(宅建士)
- 質屋、貸金業者
- 証券外務員
これらはお金を直接扱う業務であり、顧客の財産を守る観点から厳しく制限されています。特に生命保険の外交員の方は、登録がいったん抹消されることになります。
■ 警備・保安関係 ・警備員(警備業者および警備員)
警備業法により、破産手続き中の人は警備員になれないと定められています。これは、現金輸送や鍵の管理など、高い信用が求められるためです。
※工事現場の交通誘導員なども「警備員」に含まれるため注意が必要です。
■ その他 ・旅行業務取扱管理者
- 建設業の建設業者(個人事業主や役員の場合)
- 風俗営業の管理者
- 廃棄物処理業者
ここに挙げた以外にも、商工会議所の会員資格や、特定の公的委員会の委員など、細かな制限が存在します。
ご自身の職業が該当するかどうか不安な場合は、必ず弁護士にご確認ください。



制限されるのはいつからいつまで?「復権」のタイミング
最も重要なのが、「いつからいつまで働けないのか」という期間の問題です。
制限が始まるのは、【破産手続開始決定】が出た時点です。
弁護士に依頼した日や、裁判所に申立て書類を提出した日ではありません。申立てから1~2ヶ月後くらいに裁判所が出す決定のタイミングです。
制限が終わるのは、【復権(ふっけん)】した時点です。復権とは、失っていた権利が復活することを指します。
通常は、裁判所から「免責許可決定」が出て、それが「確定」した瞬間に復権します。
期間の目安は以下の通りです。
■ 同時廃止事件の場合(財産がほとんどない場合)
手続きがスピーディーに進むため、制限期間は【2~3ヶ月程度】で済むことが一般的です。
■ 管財事件の場合(一定の財産がある、免責不許可事由がある場合)
破産管財人が選任され、詳しく調査が行われるため、期間は長くなります。一般的には【4ヶ月~6ヶ月程度】、長引けば1年近くかかることもあります。
この期間さえ乗り越えれば、法的な制限は解除され、堂々と元の業務に戻ることができます。資格試験を再受験する必要もありませんし、再び登録申請を行えば資格者として働けます。


会社の社長や役員は辞任しなければならないのか
中小企業の経営者や、会社の取締役(役員)をされている方の場合、以前の商法では「破産=退任」と明確に定められていました。
しかし、現在の会社法では、破産手続開始決定を受けても、自動的に役員の資格を失う(欠格事由になる)という規定はなくなりました。
ただし、注意が必要です。
民法653条により、会社と役員との間の「委任契約」は、破産によって【終了】してしまいます。つまり、法律上いったんは退任せざるを得ません。
しかし、株主総会で「再任(再び選任すること)」されれば、破産手続き中であっても取締役に戻ることができます。
実務上は、ご自身がオーナー社長であれば、株主総会(自分ひとり、あるいは親族)ですぐに再選任決議を行い、そのまま社長業を継続するという方法が取られることが多いです。
雇われ社長や平取締役の場合は、会社側が再任してくれるかどうかの判断になります。

公務員や一般企業の会社員への影響は?
上記以外の一般的な職業については、基本的に制限はありません。
・公務員
意外に思われるかもしれませんが、公務員(地方公務員法、国家公務員法)には、現在、破産による欠格条項はありません。市役所の職員、教員、警察官、消防士などは、破産しても職を失うことはありません。
※ただし、公正取引委員会の委員など、ごく一部の特別職には制限があります。
・一般企業の会社員(事務、営業、製造、販売など)
制限職種以外の仕事であれば、全く影響はありません。医師、看護師、薬剤師、介護福祉士などの医療福祉系の国家資格も、基本的には制限されません。
また、会社が「破産したこと」を理由に従業員を解雇することは、労働基準法や労働契約法上、不当解雇として無効になる可能性が高いです。
破産は個人の経済的な事情であり、業務遂行能力とは直接関係がないからです。

制限期間中の仕事をどう乗り切るか
警備員や保険外交員の方が自己破産をする場合、制限期間中の数ヶ月をどう過ごすかが最大の課題です。
主な対策は以下の3つです。
① 配置転換(部署異動)をお願いする
これが最も安全な方法です。
例えば警備会社であれば、現場の警備員から「内勤の事務」や「管制業務」へ。
保険会社であれば、「営業職」から「事務職」へ。
資格を使わない部署へ一時的に異動させてもらうことで、雇用契約を維持したまま期間をやり過ごすことができます。
② 休職する
異動先がない場合、数ヶ月間の休職を申し出る方法です。収入は途絶えてしまいますが、退職せずに籍を残すことができます。
③ 期間工やアルバイトで繋ぐ
やむを得ず退職となった場合でも、復権すればまた再就職は可能です。
その間の生活費は、制限のない職種(工場、清掃、運送など)のアルバイトで稼ぎ、復権後に元の業界へ復帰するというプランを立てます。

どうしても仕事が続けたい場合の「個人再生」という選択
「会社に知られたくないから異動の相談はできない」
「今のポジションを外れるとキャリアが終わってしまう」
「住宅ローンが残っている自宅も守りたい」
そのような場合は、自己破産ではなく【個人再生(こじんさいせい)】という手続きを検討すべきです。
個人再生とは、借金をゼロにするのではなく、概ね5分の1程度(最大10分の1)に大幅減額し、残りを3年~5年で分割返済する制度です。
個人再生の最大の特徴は、【職業制限(資格制限)が一切ない】ことです。
警備員も、保険外交員も、宅建士も、仕事を続けながら手続きが可能です。
借金の減額幅は自己破産に劣りますが、「仕事を失わない」というメリットは非常に大きいです。

ひとりで悩まず、キャリアを守る方法を一緒に考えましょう
「破産したら仕事ができなくなる」という恐怖で、相談を先延ばしにしていませんか?
しかし、悩んでいる間にも借金は膨らみ、給料の差し押さえなどを受ければ、それこそ会社に居づらくなってしまいます。
職業制限は、正しく恐れれば怖くありません。
「いつ復権できるのか」「会社にどう説明すればいいのか」、あるいは「職業制限のない個人再生を選ぶべきか」。これらは、あなたの状況や借金額、会社の就業規則などを総合的に見て判断する必要があります。
当事務所では、あなたの「今の生活」だけでなく、「将来のキャリア」まで見据えた最適な解決策をご提案します。
福井県大野市に拠点を置いていますが、オンラインシステムを活用し、日本全国どこからでもご相談いただけます。
職業制限に関する不安がある方は、ぜひ一度、専門家の意見を聞いてみてください。


(相談者) よく分かりました。てっきりクビになって終わりだと思っていましたが、一時的に内勤にしてもらうとか、個人再生を選ぶとか、やりようはあるんですね。少し光が見えてきました。

(横田弁護士) その通りです。法律はあなたから生活の糧を奪うためにあるのではありません。職業制限があるからこそ、早めに準備をして、会社への説明や手続きのタイミングを調整することが重要です。一番避けたいのは、何も対策せずにいきなり破産して、会社に迷惑をかけてしまうことですからね。

(相談者) はい。実は会社の上司は理解のある人なので、正直に事情を話して、内勤にしてもらえないか相談してみようと思います。そのための準備を先生にお願いできますか?

(横田弁護士) もちろんです。会社への説明の仕方や、手続きのスケジュール管理もしっかりサポートします。仕事も生活も両方守れるよう、一緒に頑張りましょう。
【お問い合わせ先】
弁護士法人横田秀俊法律事務所
〒912-0087 福井県大野市城町8番6号
電話:0779-64-4099
■ 日本全国対応可能・オンライン相談推奨
当事務所では、Google MeetやZOOMなどを活用したオンライン法律相談を積極的に行っております。 職業制限の問題は、地域を問わず共通の法律問題です。北海道から沖縄まで、全国どちらにお住まいの方でも、距離を感じさせない親身な対応をお約束します。
■ 法律相談料
30分 5,500円(税込)
■ 決済方法
対面でのご相談の場合は、現金のほか、各種クレジットカード決済、QRコード決済に対応しております。
ご自身の職業が制限対象かどうか、まずは確認するだけでも大きな一歩です。
「コラムを読んだ」とお伝えいただければスムーズです。お電話にて、お気軽にご予約ください。
