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ネットのひな形は危険!「コピペ契約書」に潜む3つの落とし穴

企業法務 2025.12.22.

ネットのひな形は危険!「コピペ契約書」に潜む3つの落とし穴

 インターネットが普及した現代において、どのような書類でも「テンプレート」や「ひな形」が容易に入手できるようになりました。契約書もその例外ではありません。

 「業務委託契約書 ひな形」「売買契約書 テンプレート」といったキーワードで検索すれば、数えきれないほどのサンプルが無料で手に入ります。

 多くの経営者様や個人事業主の方は、「契約書を一から作ると弁護士費用がかかる」「取引開始まで時間がない」といった理由から、こうしたネット上のひな形を利用されているのではないでしょうか。社名や日付、金額の部分だけを書き換えれば、一見すると立派な契約書が完成するように見えます。

 しかし、その「手軽さ」の裏には、企業の存続さえ危うくしかねない重大なリスクが隠されています。ネット上のひな形は、あくまで架空のモデルケースにすぎず、あなたの会社のビジネスや利益を守るようには作られていません。

 本記事では、安易な「コピペ契約書」がなぜ危険なのか、実際のトラブル事例や法律の仕組みを交えながら、特に注意すべき3つの落とし穴について詳しく解説します。

落とし穴①:自社に有利な条項が入っていない(民法の原則通りになってしまう)

 ネット上で無料公開されている契約書の多くは、「誰が使っても大きな問題が起きない」ように、非常に中立的、あるいは簡易的な内容で作られています。これは一見すると公平で良いことのように思えますが、商売の現場においては「自社を守る武器がない」ことと同義です。

 日本の法律には「契約自由の原則」があり、公序良俗に反しない限り、当事者間で自由なルールを決めることができます。逆に言えば、契約書に特別なルールを定めていない事項については、国の法律である「民法」の原則的な規定が適用されることになります。

 民法はあくまで一般原則を定めた法律であり、個別のビジネスにおける力関係やリスクまでは考慮してくれません。

 例えば、あなたがシステム開発やデザイン制作などの「業務を受注する側」だとしましょう。

 もし、納品後に顧客から「イメージと違うから修正してほしい」と無限に修正を要求されたらどうしますか?契約書に「修正は2回までとし、それ以降は別途費用が発生する」という条項が入っていなければ、民法の原則や解釈によっては、完成するまでタダで働き続けなければならないリスクが生じます。

 逆に、あなたが「発注する側」の場合、相手が納期に遅れたり、品質が悪かったりしたときに、契約の解除や損害賠償をスムーズに行えるような条項が入っているかどうかが重要になります。一般的なひな形には、こうした「あなたの立場(受注側か発注側か)に特化した有利な条項」は、ほとんど含まれていません。

 結果として、トラブルが起きた際に「契約書に書いていない以上、法的に強く言えない」という状況に陥ってしまうのです。

落とし穴②:管轄裁判所が「東京」になっており、裁判のたびに遠征するリスク

 地方でビジネスを行っている企業にとって、最も現実的かつ痛恨のミスとなり得るのが、この「管轄裁判所」の問題です。

 契約書の最後の方には、必ずと言っていいほど「裁判管轄」に関する条項があります。

「本契約に関し紛争が生じた場合は、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」

 といった文言です。

 ネット上のひな形の多くは、東京の法律事務所や企業が作成したものがベースになっていることが多く、この〇〇の部分が「東京」になっているケースが圧倒的に多いのです。

 もし、福井県にある企業が、この条項をそのままにして契約を結んでしまったらどうなるでしょうか。

 取引相手とトラブルになり、裁判を起こす必要が出てきた場合、あるいは相手から訴えられた場合、わざわざ「東京地方裁判所」まで行かなければなりません。

 今の時代、Web会議などでの期日対応も進んではいますが、証人尋問など重要な局面では出廷が必要になることもあります。

 また、弁護士に依頼する場合も、「東京の裁判所に対応できる弁護士」を選ばなければならず、地元の弁護士に依頼すれば東京までの出張日当が加算されることになりますし、東京の弁護士を探すのも一苦労です。

 例えば、50万円の未払い金を回収したいと考えたとします。

 しかし、裁判のために東京へ何度も往復する交通費、宿泊費、そして弁護士費用を計算すると、回収できる金額よりもコストの方が高くなってしまう(費用倒れ)可能性があります。

 相手方はそれを見越して、「どうせ東京までは来られないだろう」とタカをくくって強気な態度に出てくるかもしれません。

 「管轄裁判所を自社の近く(福井地方裁判所など)にしておく」ことは、いざという時に低コストで戦えるようにするための、極めて重要な防衛策なのです。

落とし穴③:2020年施行の「改正民法」に対応していない古いひな形の危険性

 インターネット上の情報は、一度公開されると半永久的に残り続けます。

 検索で上位に表示された契約書のひな形が、実は10年前に作成されたものだった、ということも珍しくありません。

 ここで大きな問題となるのが、2020年4月1日に施行された「改正民法」です。この改正は、約120年ぶりに契約に関するルールを抜本的に見直したもので、実務に与える影響は甚大です。

 代表的な例として、「瑕疵(かし)担保責任」という言葉があります。改正前は「隠れた欠陥」を指す用語として使われていましたが、改正法では廃止され、代わりに「契約不適合責任」という、より広範で明確な概念に変更されました。

 もし、あなたが使ったひな形に「瑕疵担保責任」という古い用語がそのまま残っていたらどうなるでしょうか。

「この契約書は改正法に対応していない=法的な知識が乏しい会社が作ったものだ」

 と相手に見抜かれてしまい、ビジネス上の信用を損なう可能性があります。

 さらに実務的なリスクとして、古い条項と新しい法律のどちらを優先するのか解釈が分かれ、本来なら請求できたはずの「代金減額請求権」や「追完請求権(修理などを求める権利)」がスムーズに行使できなくなるおそれもあります。

 また、個人の連帯保証人に関するルールも厳格化されており、古いひな形のまま保証人を設定しても、その契約自体が無効になってしまうケースさえあります。

 「タダで手に入れた古い地図」を頼りに航海に出るのが危険であるのと同様に、古いひな形で現在のビジネスを行うことは、無用なトラブルを招く原因となります。

契約書はコストではなく「未来への投資」

 契約書作成にかかる費用を「無駄なコスト」と捉えるか、「将来の紛争を防ぐための保険」と捉えるかで、企業の安全性は大きく変わります。

 ネットのひな形は、あくまで「素材」にすぎません。

 素材をそのまま使うのではなく、自社の業務内容、商流、相手との関係性に合わせてカスタマイズし、法的な不備がないかチェックすることこそが重要です。

 しっかりとした契約書があれば、万が一相手と揉めそうになった時でも、契約書の条項を示すだけで早期解決できることが多々あります。結果として、裁判費用や解決にかかる膨大な時間を節約することにつながるのです。

 弁護士法人横田秀俊法律事務所では、地元福井の企業の皆様が安心して取引を行えるよう、契約書の作成・リーガルチェックに力を入れています。

「ネットのひな形をベースにしたいが、不安がある」

「自社のビジネスに合ったオリジナルの契約書を作りたい」

 など、どのようなご相談でも構いません。トラブルが起きてから慌てるのではなく、起きる前の対策として、ぜひ当事務所をご活用ください。

立場に応じたカスタマイズが必要 管轄裁判所は自社の近くに 最新の法律に準拠して内容に
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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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