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【弁護士が警告】銀行口座凍結と「仮払い制度」の危険な落とし穴~安易な引き出しが借金地獄を招く理由~

コラム 2025.11.24. #相続問題

【弁護士が警告】銀行口座凍結と「仮払い制度」の危険な落とし穴~安易な引き出しが借金地獄を招く理由~

 ご家族が亡くなられた後、葬儀費用や当面の生活費など、急なお金が必要になる場面は少なくありません。しかし、金融機関に死亡の事実を伝えると口座は即座に「凍結」されてしまいます。

 この不便を解消するために「預貯金の仮払い制度」というものがありますが、実はこの制度、安易に利用すると取り返しのつかない事態を招く恐れがあることをご存知でしょうか?

 「銀行の窓口で勧められたから」と手続きを進める前に、必ずこの記事を読んでリスクを確認してください。

なぜ銀行口座は凍結されるのか?その理由と仕組み

 人が亡くなると、その瞬間から亡くなった方(被相続人)の財産は、相続人全員の共有財産となります。 もし、一部の相続人が勝手にお金を引き出してしまうと、他の相続人の権利が侵害されたり、後の遺産分割協議で「使途不明金」として大きなトラブルに発展したりする可能性があります。そのため、金融機関は口座名義人の死亡を知った時点で口座をロック(凍結)し、原則として遺産分割協議が完了するまで、一切の入出金を停止するのです。

 便利な「預貯金の仮払い制度」とは

 口座が凍結されると、残された家族の生活費や、急ぎ支払わなければならない葬儀費用などに困るケースが多発しました。そこで、民法改正により新設されたのが「預貯金の仮払い制度」です。

 この制度を使えば、遺産分割協議が終わる前であっても、以下の計算式で算出される金額(かつ、1つの金融機関につき最大150万円)までなら、相続人が単独で払い戻しを受けることができます。

引き出せる上限額 = 相続開始時の預金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分

 書類さえ揃えれば窓口で手続きができるため、一見すると非常に便利で救いのある制度に見えます。しかし、弁護士の視点から見ると、ここには重大な落とし穴が潜んでいます。

【最大の警告】制度利用が招く「法定単純承認」の恐怖

 この制度を利用する際、最も警戒しなければならないのが「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」という法的効果です。

 相続には、プラスの財産(預金や不動産)だけでなく、マイナスの財産(借金や保証債務)もすべて引き継ぐというルールがあります。もし、借金の方が多ければ、相続人は「相続放棄」をして、借金の支払いを免れることができます。

 しかし、民法には次のような厳しいルールが存在します。

【民法第921条(法定単純承認)】 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす。

 つまり、「亡くなった方のお金を使う(処分する)= 私はすべての遺産(借金含む)を無条件で引き継ぎます」という意思表示をしたと法的に扱われてしまうのです。

 「仮払い制度」を使って預金を引き出し、それを消費する行為は、まさにこの「相続財産の処分」に該当する可能性が極めて高い行為です。

「隠れた借金」が発覚しても、もう手遅れになるケース

 想像してみてください。

 手元の現金がないため、仮払い制度を使って父の口座から100万円を引き出し、葬儀代や生活費に使った。

 その数ヶ月後、父の遺品整理をしていたら、消費者金融からの督促状や、友人の連帯保証人になっていた契約書が出てきた。

 借金の総額は1,000万円以上。とても払えないため、家庭裁判所に「相続放棄」を申し立てた。

この場合、相続放棄は認められるでしょうか?

 答えは、「認められない可能性が高い」です。

 すでに仮払い制度でお金を引き出して使ってしまっているため、「法定単純承認」が成立しているとみなされます。その結果、あなたは1,000万円の借金を背負うことが確定してしまうのです。

 たとえ制度上引き出しが認められていても、「引き出した結果、相続放棄ができなくなる」というリスクについて、銀行の窓口では詳しく警告してくれないことがほとんどです。

「葬儀費用なら大丈夫」という誤解とリスク

 インターネット上では「葬儀費用に充てるためであれば、預金を使っても単純承認にはならない」という情報を見かけることがあります。

 確かに、過去の裁判例では、身分相応の常識的な範囲内の葬儀費用であれば「処分」には当たらないと判断されたケースもあります。しかし、これはあくまで「ケースバイケース」であり、法律で明文化された絶対のルールではありません。

・その葬儀の規模は適切だったか?

・仏壇や墓石の購入は含まれていないか?

・引き出したお金の一部を生活費に流用していないか?

 少しでも判断を誤れば、裁判所から「単純承認」と認定され、莫大な借金を背負うことになります。「葬儀代だから大丈夫だろう」という自己判断は、あまりにも危険な賭けなのです。

預金を引き出す前に、まずは弁護士にご相談を

 「預貯金の仮払い制度」は便利な制度ですが、同時に「相続放棄の選択肢を消滅させるスイッチ」でもあります。

 被相続人の資産状況や負債状況が100%明らかになっていない段階で、安易に預金に手をつけるべきではありません。一時の現金を確保した代償として、一生を左右するような負債を抱え込むことだけは避ける必要があります。

 

当事務所では、以下の手順で安全確実な相続手続きをサポートします。

徹底的な財産調査: 預金だけでなく、隠れた借金がないかを信用情報機関等を通じて調査します。

リスクの判定: 仮払い制度を利用しても問題ない状況か、あるいは相続放棄を検討すべきかを法的に判断します。

・手続きの代行: 複雑な金融機関とのやり取りや、裁判所への申述をすべて代行します。

 

「お金が必要だから銀行に行こう」と考えるその前に、まずは一度、当事務所へご連絡ください。 あなたの行動が「単純承認」とみなされる前に、専門家がリスクを回避する最善策をご提案します。

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