COLUMNコラム
もっと身近な法律を。横田秀俊法律事務所のコラムをお届けします。
熟年離婚で気をつけること|長年の財産分与・年金分割・離婚後の生活
離婚 2026.07.28.

Dさん

横田

Dさん

横田

Dさん

横田

婚姻期間が長いほど複雑になる財産分与
熟年離婚の最大の論点は、財産の清算、すなわち財産分与です。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚にあたって分け合う仕組みです。どちらの名義になっているかにかかわらず、結婚していた期間に夫婦が協力して形成した財産は、原則として分与の対象になります。
若い世代の離婚であれば、結婚から日が浅く、財産も預貯金が中心でシンプルなことが多いものです。ところが熟年離婚の場合、婚姻期間が数十年に及ぶことも珍しくなく、その分だけ対象となる財産が多岐にわたります。預貯金や現金だけでなく、不動産、退職金、生命保険の解約返戻金、企業年金、有価証券など、さまざまな種類の財産が積み重なっているのが一般的です。
このように財産が多岐にわたると、いくつもの難しさが生じます。
ひとつは、どこまでが分与の対象になるのかという問題です。
たとえば、結婚前から一方が持っていた財産や、婚姻中でも相続や贈与で一方が得た財産(特有財産)は、原則として分与の対象外と整理されます。長い結婚生活の中では、共有財産と特有財産が入り混じっていることも多く、その仕分けに専門的な検討が必要になります。
もうひとつは、評価額をいくらと見るかという問題です。
不動産や保険、退職金などは、評価の仕方によって金額が大きく変わります。同じ財産でも、見方が違えば分与額が数百万円単位で変わることもあり、ここで意見が割れやすくなります。
さらに、長い年月のうちに名義や口座が複雑化していることも、熟年離婚特有の難しさです。古い口座、使っていない保険、名義の入り組んだ不動産など、財産の全体像を把握する作業そのものに手間がかかります。「うちには大した財産はない」と思っていても、整理してみると相当な財産が見つかることは少なくありません。
まずは財産の全体像を正確につかむことが、熟年離婚の出発点になります。


自宅・退職金・年金など分けにくい財産
熟年離婚でとりわけもめやすいのが、預貯金のように単純に分けられない「分けにくい財産」です。
代表的なものを見ていきましょう。
ひとつめは、退職金や企業年金です。
すでに受け取った退職金は、婚姻期間に対応する部分が分与の対象になり得ます。まだ受け取っていない将来の退職金についても、支給される蓋然性が高い場合には、対象として検討されます。勤続年数のうち婚姻期間が占める割合に応じて評価するなど、計算には一定の考え方があり、一律ではありません。企業年金も同様に、婚姻期間に対応する部分の扱いが問題になります。長年同じ勤め先で働いてきた配偶者がいる場合、退職金は財産分与の中で大きな比重を占めることがあります。
ふたつめは、自宅不動産です。
熟年世帯では持ち家のあるケースが多く、その分け方が大きな争点になります。考えられる方向性としては、自宅を売却して代金を分ける方法と、どちらか一方が住み続けて、その代わりにもう一方へ代償金を支払う方法があります。住宅ローンが残っている場合は、自宅の時価がローン残債を上回るか下回るかで処理の方向性が変わり、さらに複雑になります。名義変更やローンの借り換えには金融機関の同意が必要なこともあり、当事者だけでは解決しきれない場面もあります。
この分けにくい財産については、次のような論点を押さえておくとよいでしょう。
- 退職金や企業年金の取り扱い(すでに受け取ったもの・将来受け取る見込みのもの)
- 自宅不動産をどう分けるか(売却して分けるか、住み続ける側が代償金を払うか)
- 長期間のうちに名義や口座が複雑化し、財産の全体像を把握する作業自体に手間がかかること
これらは、単純に「半分ずつ」と割り切れない典型例です。評価の前提が一つ変わるだけで結論が動くため、感情的な対立にもなりやすい領域です。だからこそ、財産の全体像を正確に把握し、適切な評価のもとで交渉に臨むことが、納得のいく清算につながります。


年金分割の重要性と期限
熟年離婚で、財産分与とあわせてぜひ押さえておきたいのが年金分割です。これは、婚姻期間中の厚生年金の納付記録(標準報酬)を、夫婦で分け合う制度です。離婚後に受け取る年金額に長期的に影響するため、特に婚姻期間が長い熟年離婚では、決して軽視できません。
注意していただきたいのは、年金分割は「年金そのものを半分にする」制度ではないという点です。
あくまで婚姻期間に対応する厚生年金の記録を分け合うものであり、自営業の方の国民年金部分などは対象になりません。分割の割合には上限があり、合意分割と3号分割という仕組みがあって、相手の合意が必要かどうかなどに違いがあります。
熟年離婚で年金分割が特に重要になるのは、老後の生活設計に直結するからです。長年専業主婦・主夫として家庭を支えてきた方の場合、ご自身名義の年金記録が少なく、離婚後の年金が手薄になりがちです。年金分割を行うことで、その後の生活の安定度が変わってきます。
そして、ここがもっとも見落とされやすい点ですが、年金分割の請求には期限があります。
原則として、離婚成立から一定期間内、具体的には離婚の翌日から2年以内に手続きをする必要があります。この期限を過ぎてしまうと、原則として年金分割を請求できなくなってしまいます。
「離婚で頭がいっぱいで、年金のことまで手が回らなかった」「制度を知らないうちに期限が過ぎていた」というのは、熟年離婚で実際に起こりがちな失敗です。年金分割は地味な手続きに見えるかもしれませんが、その後の長い人生の生活を支えるお金に関わります。離婚を決めた段階で、年金分割も忘れずに視野に入れておくことが大切です。


令和8年改正と早期着手の大切さ
財産分与に関連して、知っておいていただきたい法改正があります。令和8年(2026年)4月1日に施行された改正民法により、財産分与を請求できる期間が、これまでの離婚後2年から5年に延長されました。
この延長は、熟年離婚にとって実務上意味のある変化です。先に述べたとおり、熟年離婚は財産が多岐にわたり、その把握や評価に時間がかかります。「離婚は成立したけれど、財産分与の話し合いまでは手が回らなかった」というケースも少なくありません。請求できる期間が5年に延びたことで、こうした場合でも清算の機会が確保されやすくなりました。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、期間が延びたからといって、先延ばしを勧めるものではないという点です。むしろ、財産分与については早く動くほうが安全です。時間が経つほど、相手の財産の状況は把握しづらくなります。預貯金が使われてしまったり、書類などの証拠が散逸したり、相手が財産を移してしまったりするリスクが高まるからです。延長はあくまで救済の幅が広がったものであって、早期に着手すべきことに変わりはありません。
さらに重要なのは、この5年への延長は財産分与の話であり、先ほどの年金分割の期限(原則として離婚後2年)とは別だという点です。「財産分与が5年になったのだから、年金分割も5年だろう」と思い込むと、年金分割の期限を逃しかねません。両者は別の制度であり、それぞれ期限が異なることを、はっきり区別しておいてください。
熟年離婚では、財産の調査・評価から、自宅や退職金の分け方、年金分割、そして離婚後の生活の見通しまでを、一体のものとして組み立てる必要があります。これらは互いに絡み合っており、専門的な判断が求められる場面が多くあります。とりわけ、財産の把握や評価、期限の管理は、ご自身だけで進めるには負担が大きいものです。
当事務所は福井県大野市にありますが、地域を問わず全国のご相談に対応しています。
長年の結婚生活で築かれた財産を適正に清算し、年金分割などの期限を逃さず、離婚後の生活まで見据えた見通しを立てるために、早い段階でご相談いただくことをおすすめします。





まとめ
熟年離婚では、婚姻期間が長いほど財産が多岐にわたり、退職金・企業年金・自宅・保険・有価証券などの清算が複雑になります。
自宅の分け方や退職金の評価には専門的な検討が必要で、年金分割は老後の生活に直結する重要な手続きです。
年金分割は原則離婚後2年、財産分与は令和8年改正で離婚後5年と期限が異なる点に注意し、いずれも早めに着手するのが安全です。


Dさん

横田

Dさん

横田

Dさん

横田
【お問い合わせ】
ご相談は、ご来所のほか、オンライン(ZOOM、Google Meetなど)でも承っております。
当事務所は福井県大野市にございますが、地域を問わず全国のご相談・ご依頼に対応しています。
相談料は30分5,500円(税込)です。
お支払いは、対面でのカード決済およびQRコード決済(PayPayは非対応)に対応しております。なお、メールでのご相談受付は行っておりません。
〒912-0087 福井県大野市城町8番6号 弁護士法人横田秀俊法律事務所
電話:0779-64-4099
