COLUMNコラム
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別居中の生活費「婚姻費用」を請求する方法|相場と請求のタイミング
離婚 2026.07.21.

Dさん

横田

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横田

婚姻費用とは何か――夫婦の生活保持義務
婚姻費用とは、夫婦と未成熟の子どもが通常の社会生活を維持するために必要な費用のことをいいます。
具体的には、衣食住の費用、子どもの教育費、医療費などが含まれます。
民法は、夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないと定めています。ここから導かれるのが、夫婦の生活保持義務という考え方です。これは、自分と同じ程度の生活を相手にも保障する義務であり、単に最低限の生活を支えればよいという「生活扶助義務」よりも重いものとされています。
ポイントは、この義務が別居していても、離婚が成立するまで続くという点です。
「もう一緒に暮らしていないのだから関係ない」と考える方もいますが、法律上は夫婦である限り、収入の多い側が少ない側を支える関係は変わりません。
特に、収入の少ない側が子どもを連れて別居しているケースでは、婚姻費用には子どもの養育に必要な費用も含まれます。離婚後の「養育費」とは別物で、婚姻費用のほうが子どもの分も含めて支払われるため、一般に金額は大きくなる傾向があります。離婚を急ぐあまり婚姻費用の請求をおろそかにすると、本来受け取れたはずの生活費を取り逃がしてしまうことにもなりかねません。
なお、ここで言う「別居」は、必ずしも離婚を前提としたものに限られません。たとえば、関係を見つめ直すための一時的な別居や、相手のDVから逃れるための避難であっても、夫婦である以上は婚姻費用を請求できます。離婚するかどうかをまだ決めかねている段階でも、生活費の確保は別の問題として進められると考えてよいでしょう。
別居を決意したとき、多くの方が「これからの生活費をどうしよう」という不安を抱えます。とりわけ、専業主婦(夫)であった方や、パート収入しかない方にとって、当面の暮らしをどう支えるかは切実な問題です。婚姻費用は、その不安を法的に支える重要な制度であり、別居後の生活を立て直すための土台になるものなのです。



婚姻費用の相場――算定表の使い方
では、実際にいくらもらえるのでしょうか。
家庭裁判所の実務では、婚姻費用算定表という一覧表が広く用いられています。これは、夫婦双方の収入と、子どもの人数・年齢に応じて、おおよその金額を示したものです。
算定表を使うときの基本的な流れは、次のとおりです。
- 支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収を確認する。給与所得者か自営業者かで見る欄が異なります。
- 子どもの人数と年齢(0〜14歳か、15歳以上か)に応じた表を選ぶ。
- 双方の年収が交わる箇所を読み取り、金額の幅を把握する。
たとえば、支払う側が会社員で年収600万円、受け取る側がパートで年収100万円、子ども1人(14歳以下)というケースでは、月々おおむね8万円から10万円程度の幅に収まることが多いといえます。あくまで目安であり、個別の事情で増減します。
注意したいのは、収入の捉え方です。
源泉徴収票の額面なのか、自営業者の所得なのか、ボーナスや手当をどう扱うのか。ここを正確に押さえないと、相場から外れた金額で合意してしまうおそれがあります。また、私立学校の学費や高額な医療費など、算定表だけでは反映しきれない特別な出費がある場合は、別途上乗せを主張できることもあります。
もう一つ知っておきたいのは、住宅ローンや家賃の扱いです。たとえば、別居後も支払う側がそのまま自宅のローンを払い続け、受け取る側がその家に住んでいるような場合には、住居費の負担を考慮して婚姻費用の金額が調整されることがあります。このあたりは画一的に決まるものではなく、具体的な事情に応じた判断が必要になる典型的な場面です。
算定表は便利な道具ですが、自分のケースに正しく当てはめるには専門的な判断が必要です。金額に少しでも疑問があれば、早めに弁護士に確認することをおすすめします。
当事務所は福井県大野市にありますが、オンラインでの相談も承っており、全国どこからでもご利用いただけます。


請求のタイミングが重要――「請求した時点」から
婚姻費用について、最も多くの方が損をしてしまうのがタイミングの問題です。
実務上、婚姻費用は原則として、請求の意思を相手に示した時点から認められると考えられています。つまり、別居を始めてから何か月も経ってから請求しても、別居開始時点までさかのぼって全額がもらえるとは限らないのです。「言わなくても当然もらえるはず」と思って放置していると、その間の分を取り逃がしてしまう危険があります。
ですから、別居を決めたら、できるだけ早く請求の意思を明確に伝えておくことが大切です。
具体的には、次のような方法があります。
- 内容証明郵便で請求の意思と日付を残す。
- 婚姻費用分担請求の調停を申し立てる(申立日が請求時点の証拠になります)。
- メールやメッセージなど、日付の残る形で請求を伝える。
口頭で「生活費を払ってほしい」と言うだけでは、後から「言った」「言わない」の争いになりがちです。
請求した事実と日付を客観的に残すことが、後の交渉や審判で大きな意味を持ちます。
よくある失敗が、「離婚の話し合いがまとまってから生活費の相談をしよう」と後回しにしてしまうケースです。離婚の協議は数か月単位で長引くことも珍しくありません。その間ずっと生活費を受け取れなければ、貯金を取り崩して暮らすことになり、精神的にも追い詰められてしまいます。離婚の話し合いと婚姻費用の請求は、切り離して同時並行で進めてよいのです。
別居の準備で頭がいっぱいになりがちな時期ですが、生活費の請求は一日でも早く動くことが、結果的にご自身を守ります。「とりあえず請求の意思だけは伝えておく」という最初の一歩を、ぜひ忘れないでください。



話し合いがまとまらないとき――調停・審判の流れ
相手が任意に支払ってくれれば、金額を取り決めて支払いを受ければ済みます。しかし、相手が支払いを拒んだり、金額で折り合えなかったりすることは珍しくありません。
そうした場合に利用するのが、家庭裁判所の手続きです。
まず行うのが、婚姻費用分担請求調停です。
調停では、調停委員が双方の話を交互に聞きながら、収入資料などをもとに適正な金額の合意を目指します。直接顔を合わせずに話を進められるため、感情的な対立が激しいケースでも利用しやすい手続きです。
調停でも合意に至らなかった場合は、自動的に審判へと移行します。審判では、裁判官が双方の収入や事情を踏まえ、算定表を基準として金額を決定します。当事者が合意できなくても、裁判所が結論を出してくれるという点が大きな特徴です。
ここで覚えておいていただきたいのは、調停の申立日が、先ほど述べた「請求した時点」の有力な証拠になるという点です。話し合いが難航しそうだと感じたら、調停の申立てをためらわないことが、結果的に受け取れる金額を守ることにつながります。
調停を申し立ててから審判で結論が出るまでには、ある程度の時間がかかります。その間も生活は続きますから、申立てが遅れるほど不安定な時期が長引いてしまいます。逆に言えば、早く動き出すほど、収入の多い側に支払いを促す圧力が早く働き始めるということでもあります。相手が「話し合いには応じない」という態度であっても、調停・審判という制度がある以上、最終的には適正な金額が定まると考えてよいでしょう。
なお、いったん金額が決まった後でも、双方の収入が大きく変わったり、子どもの進学などで事情が変化したりした場合には、金額の変更を求めることもできます。婚姻費用は「一度決めたら終わり」ではなく、状況の変化に応じて見直せる柔軟な制度でもあるのです。
手続き自体は本人でも進められますが、収入資料の読み解きや適正額の主張には専門的な知識が必要な場面も多くあります。
早い段階で弁護士に相談しておくと、見通しを立てやすくなるでしょう。



まとめ
婚姻費用は、別居中の生活を支える大切な制度です。
離婚成立まで請求でき、金額は算定表を基準に決まります。そして何より、請求のタイミングが早いほど有利です。
別居を考え始めたら、生活費の確保を後回しにせず、早めに意思表示をしておきましょう。
話し合いが難しいときは、調停・審判という手続きが用意されています。


Dさん

横田

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