COLUMNコラム
もっと身近な法律を。横田秀俊法律事務所のコラムをお届けします。
【養育費②】養育費の相場と算定表の見方、不払いに強くなった新ルール(先取特権)
離婚 2026.07.13.

Dさん

横田

Dさん

横田

Dさん

横田

養育費の金額は「算定表」で決めるのが基本
養育費の金額は、当事者の話し合いで自由に決めることもできますが、相場の目安がないままでは交渉がまとまりにくいものです。
そこで実務で広く使われているのが、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」です。
この算定表は、統計に基づいて、標準的な世帯の生活費から養育費の目安を導き出せるように作られています。
裁判所の調停や審判でもこの算定表が基準として用いられており、当事者間の話し合いでも、これを出発点にするのが一般的です。
算定表を使う最大の利点は、客観的で公平な目安が得られることです。
「相手が提示した金額が妥当なのか」「自分が求めている額は高すぎないか」といった迷いを、ある程度解消できます。インターネットでも見ることができますので、まずはご自身のケースに近い金額を確認してみるとよいでしょう。
ただし、算定表はあくまで「標準的なケースの目安」です。個別の事情によっては、表の金額から調整が必要になることもあります。
また、算定表で得られるのはあくまで「目安」であって、必ずその金額にしなければならないというものではありません。当事者が合意すれば、算定表より高い額でも低い額でも取り決めることはできます。ただ、合意できずに調停や審判に進んだ場合には、この算定表が判断の基準として用いられますので、交渉の出発点としては算定表を踏まえておくのが現実的です。
相場からかけ離れた金額を主張しても、調停などではなかなか通りません。逆にいえば、算定表の金額を知っておくことで、不当に低い額で押し切られてしまうのを防げます。

算定表の見方——4つの要素を当てはめる
算定表で養育費の目安を求めるには、次の4つの要素を当てはめます。
- 支払う側(義務者)の年収:養育費を支払うほうの親の年収です。源泉徴収票や確定申告書などから確認します。
- 受け取る側(権利者)の年収:養育費を受け取るほうの親の年収です。収入がない場合はゼロとして当てはめます。
- 給与所得者か自営業者か:同じ年収でも、会社員などの給与所得者と、自営業者とでは、手元に残るお金の考え方が異なります。そのため、算定表は給与所得者用と自営業者用に分かれています。ご自身と相手がどちらに当たるかを確認する必要があります。
- 子どもの人数と年齢:子どもが何人いるか、そして0歳から14歳までか、15歳以上かによって、表が分かれています。一般に、年齢が上がるほど教育費などがかさむため、15歳以上の子どもについては金額が高めに設定されています。
これらを当てはめると、該当する金額の幅が示されます。たとえば「月6万円から8万円」といった具合です。実際には、その幅の中で個別事情を踏まえて具体的な金額を決めていきます。
注意したいのは、相手が自営業者の場合や、収入を正確に把握しにくい場合です。年収の認定をめぐって争いになることもありますので、相手の収入を裏づける資料をどう集めるかが重要になります。
たとえば、自営業の方が確定申告で経費を多めに計上していると、申告上の所得が実態より低く見えることがあります。その場合、申告書の数字をそのまま使うと、本来より安い養育費になってしまいかねません。
実務では、経費の中に養育費の計算上は収入とみなすべきものが含まれていないか、といった点まで踏み込んで検討することがあります。また、相手が収入を隠そうとするケースでは、源泉徴収票や課税証明書をどう入手するかも課題になります。
こうした場面では、専門家による精査が金額を大きく左右します。当てはめる数字一つで結論が変わるからこそ、丁寧な確認が欠かせません。


算定表だけでは決まらない費用もある
算定表で示される金額は、衣食住や通常の教育費など、標準的な養育にかかる費用を想定したものです。しかし、子育てには、この標準的な範囲を超える特別な出費が生じることがあります。
これを「特別費用」と呼びます。
代表的なものとしては、私立学校の学費、塾や習い事の費用、大学の進学費用、あるいは持病の治療にかかる高額な医療費などが挙げられます。
これらは標準的な算定表には織り込まれていないため、算定表の金額に上乗せして、別途分担を求める余地があります。
ただし、これらの特別費用が当然に認められるわけではありません。たとえば私立学校の費用であれば、支払う側がその進学を了承していたか、家庭の経済状況に照らして相応のものか、といった事情が考慮されます。一方的に「私立に通わせるから費用を負担してほしい」と求めても、必ず認められるとは限らないのです。
だからこそ、養育費を取り決める段階で、将来かかりうる費用についてもできる限り話し合い、合意の形に残しておくことが望ましいといえます。後になって「聞いていない」「そんな約束はしていない」というトラブルを防ぐためにも、専門家を交えた取り決めには意味があります。

不払いに強くなった新ルール「先取特権」とは
養育費を取り決めても、実際には支払いが滞ってしまうケースが少なくありません。これまで、滞った養育費を強制的に回収するには、原則として「債務名義」と呼ばれるもの——公正証書や、調停調書、判決など——が必要でした。口約束やただのメモだけでは、いきなり相手の財産を差し押さえることはできなかったのです。
ところが、令和8年4月に施行された改正民法によって、この点が大きく変わりました。
養育費の債権に「一般先取特権」が認められたのです。
「先取特権」とは、ある債権について、他の債権者に優先して弁済を受けられる権利のことです。今回の改正で養育費にこの権利が認められたことにより、債務名義がなくても、相手の財産に対する差押えなどの強制執行に進めるようになりました。
つまり、公正証書を作っていなかった場合でも、滞った養育費の回収に踏み出しやすくなったということです。これは、養育費を受け取る側にとって、非常に大きな後押しとなる改正です。
もっとも、強制執行をするには、相手にどのような財産があるのかを把握する必要があります。預金がどの銀行にあるのか、勤務先はどこか、といった情報がわからなければ、せっかくの権利も活かせません。
そこで重要になるのが、相手の財産調査です。
裁判所を通じて財産情報を調べる手続も整備されていますが、どの手続をどう使うかは個別の判断が必要です。
財産調査の方法としては、裁判所を通じて、相手の預貯金口座の情報や勤務先の情報を取得する手続が用意されています。給与を差し押さえる場合は勤務先が、預金を差し押さえる場合は取引銀行が、それぞれわかっている必要があります。これらの情報を集める手続を適切に使うことで、回収の実効性が高まります。逆にいえば、いくら先取特権が認められても、相手の財産の所在が全く分からなければ、執行のしようがありません。だからこそ、離婚の交渉をしている段階から、相手の勤務先や取引銀行といった情報を、できる範囲で把握しておくことが、後の不払いへの備えになります。
不払いに強い制度が整ったとはいえ、それを実際に活かすには専門的な対応が欠かせません。どの手続をどう組み合わせるか、財産をどう特定するかは、ケースによって判断が分かれます。支払いが滞ってお困りの方は、早めにご相談いただくことをお勧めします。






まとめ
養育費は、双方の年収・給与か自営か・子どもの人数と年齢という要素を算定表に当てはめて、目安を求めるのが基本です。
私立学費や医療費などの特別費用は別途加算の余地があります。
令和8年4月施行の改正で養育費債権に先取特権が認められ、債務名義がなくても差押えなどの強制執行が可能になりました。
回収のためには相手の財産調査が重要になります。



Dさん

横田

Dさん

横田

Dさん

横田
【お問い合わせ】
ご相談は、ご来所のほか、オンライン(ZOOM、Google Meetなど)でも承っております。
当事務所は福井県大野市にございますが、地域を問わず全国のご相談・ご依頼に対応しています。
相談料は30分5,500円(税込)です。
お支払いは、対面でのカード決済およびQRコード決済(PayPayは非対応)に対応しております。
なお、メールでのご相談受付は行っておりません。
〒912-0087 福井県大野市城町8番6号 弁護士法人横田秀俊法律事務所
電話:0779-64-4099
