COLUMNコラム
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【養育費①】法定養育費の新設|取り決めをしなくても月2万円を請求できる時代に
離婚 2026.07.12.

Dさん

横田

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なぜ「法定養育費」がつくられたのか
これまでの日本では、養育費の取り決めがされないまま離婚に至るケースが非常に多く、結果として養育費を一切受け取れていないひとり親家庭が数多く存在してきました。
離婚を急ぐあまり、お金の話を後回しにしてしまったり、相手と関わりたくない一心で取り決めをしなかったりと、事情はさまざまです。
しかし、その負担を最も受けるのは子どもです。
本来であれば、子どもは父母の双方から扶養を受ける権利を持っています。取り決めがなかったというだけで、子どもの生活が立ちゆかなくなるのは望ましくありません。
そこで、令和8年4月1日に施行された改正民法では、取り決めがないまま離婚した場合でも、子どもを主に育てている親が一定額を当然に請求できる「法定養育費」という制度が新たに設けられました。
これは、養育費を受け取れない子どもをなくし、ひとり親家庭の生活を下支えすることを目的としたものです。
つまり、「取り決めをしなかったから養育費はゼロ」という従来の落とし穴を、法律のほうで埋めるための仕組みだと理解していただくとよいでしょう。
背景には、養育費の受け取り状況の厳しさがあります。
これまで、離婚した母子家庭のうち、実際に養育費を受け取れているのは一部にとどまるといわれてきました。取り決め自体がされていなかったり、取り決めても支払いが途絶えてしまったりと、理由はさまざまですが、いずれにせよ、その影響を受けるのは何の責任もない子どもです。
子どもの貧困をなくすという社会全体の課題に応えるためにも、まずは「取り決めがなくても最低限の養育費は確保される」という土台をつくることが必要とされたのです。
法定養育費は、その第一歩として位置づけられる制度です。

法定養育費の中身——いくら、いつから請求できるのか
それでは、法定養育費の具体的な内容を見ていきます。
ポイントは次のとおりです。
- 請求できる人:子どもを主に監護している親(主たる監護者)です。離婚後、実際に子どもと暮らし、日々の世話をしている親が対象になります。
- 金額:当面は、子ども1人あたり月額2万円が想定されています。子どもが2人いれば月額4万円、3人いれば月額6万円という計算です。
- いつからの分を請求できるか:離婚の時点にさかのぼって請求できる点が大きな特徴です。離婚してしばらく経ってから請求する場合でも、離婚時からの分をまとめて求めることができます。
- いつまで続く制度か:法定養育費は、養育費の額が正式に取り決められるまで、あるいは子どもが成人に達するまでの間、支払いの対象となります。正式な金額が決まれば、そちらに切り替わります。
このように、法定養育費は「取り決めをしていなくても、子どもの生活を最低限支えるお金を確保できる」仕組みです。
これまでであれば、取り決めがなければまず請求の交渉や調停から始める必要がありましたが、その前の段階でも、一定額の支払いを求められるようになったわけです。
なお、支払う側に一切の支払い能力がないような場合にまで、無条件に支払いを強いるものではありません。
法定養育費にも、支払う親の生活を著しく害するようなときには、その支払いを拒んだり減額を求めたりできる仕組みが設けられています。あくまで、双方の生活が成り立つことを前提に、子どもの最低限の生活を支えるという趣旨の制度です。
とはいえ、多くのケースでは、月2万円程度であれば支払いが見込まれる金額ですので、受け取る側にとっては心強い後ろ盾になります。
「取り決めをしていないから何ももらえない」と思い込んでいた方にとっては、状況が大きく変わったといえるでしょう。



あくまで「暫定的な制度」であることに注意
ここで非常に大切なことをお伝えします。
法定養育費は、あくまで「当面のつなぎ」「暫定的な制度」だという点です。
月額2万円という金額は、本来支払われるべき養育費の相場を踏まえたものではありません。むしろ、「最低限これだけは確保しよう」という趣旨で定められた、底上げのための金額です。
実際の養育には、食費や衣服費だけでなく、保育料や学費、医療費など、さまざまな費用がかかります。子ども1人につき月2万円で、その全てをまかなえるわけではありません。
後ほど別の回で詳しくお話ししますが、養育費は本来、双方の収入や子どもの人数・年齢に応じて、算定表を目安に決めるのが一般的です。そして、その金額は多くの場合、月2万円を上回ります。
収入の状況によっては、子ども1人で月4万円、5万円、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。
したがって、法定養育費の月2万円を「これがもらえる金額なのだ」と受け止めてしまうのは、大きな誤解です。これは、正式な取り決めができるまでの間、子どもの生活を支えるための仮の金額にすぎません。本来受け取れるはずの額との差は、決して小さくないのです。
具体的に考えてみましょう。たとえば、支払う側に一定の収入があり、子どもが一人いるケースでは、算定表に基づく本来の養育費が月4万円から6万円程度になることも珍しくありません。
仮に本来の額が月5万円だとすれば、法定養育費の月2万円との差は、毎月3万円です。これが一年続けば36万円、子どもが成人するまでの長い期間で考えれば、数百万円規模の差になることもあります。
「とりあえず2万円もらえるから十分」と考えてしまうと、子どものために本来確保できたはずの大きな金額を、みすみす逃してしまうことになりかねません。


だからこそ、養育費はきちんと取り決めるべき
法定養育費という新しい制度ができたことで、「取り決めをしなくても何とかなる」という印象を持たれるかもしれません。
しかし、私たちがお伝えしたいのはむしろ逆です。
だからこそ、養育費はきちんと取り決めておくべきだということです。
理由は明快です。
第一に、すでに述べたとおり、本来の養育費の相場は法定養育費の月2万円を上回ることが多く、きちんと取り決めれば、子どものために受け取れる金額は大きくなります。
第二に、正式に取り決めて公正証書などの形に残しておけば、支払いが滞ったときの対応も格段にしやすくなります。法定養育費はあくまで暫定の仕組みであり、長期的に子どもの生活を安定させるには、正式な取り決めに勝るものはありません。
「相手と関わりたくない」「もめたくない」というお気持ちはよくわかります。それでも、養育費は親同士のためではなく、子どものために確保するものです。
話し合いが難しい場合には、弁護士が間に入って交渉することもできますし、調停などの手続を通じて決めることもできます。
すでに取り決めをせずに離婚してしまった方も、あきらめる必要はありません。
法定養育費を足がかりにしつつ、本来の金額での取り決めを目指すことが可能です。
まずはご自身のケースでいくらが妥当なのか、相場感を知るところから始めていただければと思います。




まとめ
令和8年4月施行の改正民法により、取り決めをしないまま離婚しても、主たる監護者が離婚時にさかのぼって法定養育費を請求できるようになりました。
当面は子ども1人月額2万円です。
ただしこれは正式な額が決まるまでの暫定的な制度であり、本来の相場はこれを上回ることが多いため、養育費はきちんと取り決めることをお勧めします。



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横田

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