COLUMNコラム
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親権者はどうやって決まる?裁判所が重視する判断基準
離婚 2026.07.11.

Dさん

横田

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横田

親権者を決める大原則は「子の利益」
離婚をする際、未成年の子どもがいる場合には、必ず親権者を決めなければなりません。協議離婚であれば、離婚届に親権者を記入しないと役所で受理されない仕組みになっています。
ここでまず押さえていただきたいのは、親権者を決める基準が「親にとってどちらが望ましいか」ではなく、「子どもにとってどちらが望ましいか」だという点です。
これを法律の世界では「子の利益(子の福祉)」と呼びます。
親同士の言い分には、それぞれの感情や事情が色濃く反映されます。
「自分のほうが愛情が深い」「相手は離婚の原因をつくった」といった主張は、当事者にとっては切実ですが、裁判所はそうした親側の事情だけで親権者を決めることはしません。離婚の原因をつくった側であっても、子どもを育てる親としては適任だと判断されることは珍しくありません。
つまり、夫婦間の対立の延長線上で親権を語るのではなく、「この子が安定して健やかに育つために、どちらが親権者となるのが望ましいか」という視点に立つことが出発点になります。
もう一点、誤解されやすいのが「親権」という言葉そのものです。
親権というと「子どもを自分のものにする権利」のように響きますが、本来は、子どもを監護・養育し、その財産を管理して、子どもの利益のために行使する義務的な側面の強いものです。子どもを支配する権利ではなく、子どもを守り育てる責任だと捉えていただくと、裁判所の判断基準も理解しやすくなります。
親権争いが「親同士の勝ち負け」になってしまうと、結局は子どもがその間で苦しむことになりかねません。冷静に、子どもにとっての最善を見据える姿勢が何より大切です。


裁判所が重視する5つの判断基準
それでは、家庭裁判所は具体的に何を見ているのでしょうか。実務上、重視される代表的な要素を挙げます。
- 監護の継続性:これまで実際に誰が中心となって子どもの世話をしてきたか、という点です。食事の用意、送り迎え、通院、学校行事への対応など、日常的な養育を担ってきた親が引き続き育てるほうが、子どもにとって環境の変化が少なく安定すると考えられます。これは多くのケースで重視される要素です。
- 子の意思:子ども自身がどちらと暮らしたいと考えているか、という点です。とくに15歳以上の子どもについては、家庭裁判所が手続のなかでその意思を聴かなければならないとされています。15歳未満であっても、年齢や成熟度に応じて、子どもの気持ちは可能な範囲で考慮されます。
- 監護環境・養育能力:離婚後の住まいや生活リズム、子どもの通園・通学のしやすさ、心身の健康状態など、子どもが実際に過ごす環境が整っているかどうかです。あわせて、親自身が継続して子どもを育てていける状態にあるかも見られます。
- 補助者の有無:親が働いている間など、子どもの面倒を見られないときに、祖父母などのサポートを受けられる体制があるかどうかです。一人で抱え込まずに育てられる環境があることは、安定した養育につながると評価されます。
- これまでの監護状況と今後の見通し:過去の養育実績だけでなく、これから先も安定して子どもと向き合えるかという将来の見通しも考慮されます。
これらは、どれか一つで決まるものではなく、総合的に判断されます。ご自身がどの点で強みを持ち、どの点を補う必要があるのかを早めに整理しておくことが大切です。
なお、実務では「兄弟姉妹を分離しない」という考え方も重視される傾向があります。
きょうだいは一緒に育つほうが情緒の安定につながると考えられるため、特段の事情がない限り、きょうだいをばらばらの親が引き取る形は避けられることが多いのです。また、これまで主に子どもを世話してきた親が、別居の際に子どもを連れて出ているかどうかも、現実の監護状況として考慮されます。ただし、相手に無断で子どもを連れ去るような形は、かえって不利に評価されることがありますので、別居の進め方には十分な注意が必要です。


「収入が多い方が有利」は本当か
冒頭のご相談にもあったように、「収入が多いほうが親権を取れる」という思い込みは非常に根強いものです。
しかし、これは正確ではありません。
たしかに、子どもを育てるにはお金がかかります。しかし、その経済的な差は親権ではなく「養育費」で調整するというのが、法律上の基本的な考え方です。仮に収入の少ない親が親権者となっても、もう一方の親が収入に応じた養育費を支払うことで、子どもの生活費は確保されます。
そのため裁判所は、収入の多寡そのものを親権の決め手とはしません。
むしろ重視されるのは、これまで誰が日々の養育を担ってきたか、離婚後も子どもが安定して暮らせるか、といった点です。専業主婦・主夫の方が「収入がないから親権は無理だ」とあきらめてしまうケースを見かけますが、それは早計です。日常の養育を中心的に担ってきた方であれば、むしろ有利に働く要素を多く持っていることが少なくありません。
逆に、収入が高くても、仕事が忙しく子どもとほとんど関わってこなかったという場合には、それが必ずしも有利に働くとは限りません。お金で測れない「これまでの関わり」こそが、判断の中心にあるのです。
もちろん、経済的な事情がまったく無関係というわけではありません。離婚後に子どもを養育できるだけの生活基盤があるかどうかは、監護環境の一要素として見られます。ただし、それは「相手より収入が多いかどうか」という比較の問題ではなく、「その親のもとで子どもが安定して暮らしていけるか」という観点です。
収入が少なくても、養育費を受け取ることで生活を組み立てられるのであれば、親権者となることに支障はありません。経済力の差そのものを過度に気にする必要はない、と知っておいていただきたいと思います。


共同親権が導入されても、もめれば家裁が判断する
令和8年4月に施行された改正民法により、離婚後の親権について「共同親権」を選べるようになりました。
これまでは離婚後の親権は父母のどちらか一方に限られていましたが、改正後は、父母の協議によって共同親権とすることもできるようになっています。
もっとも、ここで誤解してはならないのは、共同親権が導入されたからといって、親権の話し合いがなくなるわけではないという点です。
共同親権とするか単独親権とするかは、まず父母の協議で決めます。そして、協議がまとまらない場合には、最終的に家庭裁判所が「子の利益」を基準として判断する仕組みになっています。
つまり、親権をめぐって意見が対立したときに、家庭裁判所がこれまで説明してきたような基準で判断するという構造は、改正後も変わりません。さらに、父母の間にDVや虐待のおそれがあるなど、共同して親権を行うことが子の利益を害すると認められる場合には、家庭裁判所は単独親権としなければならないとされています。
また、共同親権を選んだ場合には、進学先の決定や重要な医療など、子どもに関わる一定の事項について、父母が共同で決めることになります。離婚後も相手と協議を続けていく必要があるため、関係性によっては負担が大きくなることもあります。逆に、単独親権であれば、親権者が一人で判断できる一方、もう一方の親の関与は限られます。どちらが子どもにとって、そしてご自身にとって望ましいかは、夫婦の関係や子どもの状況によって大きく異なります。
制度の選択肢が増えたぶん、ご自身のケースで何を選ぶべきか、どう交渉すべきかは、これまで以上に慎重な検討が必要になりました。新しい制度の運用は始まったばかりですので、最新の実務を踏まえた助言を受けることをお勧めします。安易に「とりあえず共同親権で」と決めてしまうと、後々の協議で行き詰まることもあります。ご自身の状況を冷静に見極めたうえで判断していただきたいところです。





まとめ
親権者は「収入」ではなく「子の利益」を基準に決まります。
これまで誰が子どもを育ててきたか、子ども自身がどう感じているか、離婚後の環境が安定しているか——こうした要素を総合的に見て判断されます。
共同親権が導入された後も、協議が調わなければ家庭裁判所が子の利益を基準に判断する点は変わりません。


Dさん

横田

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