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親権者はどうやって決まる?裁判所が重視する判断基準

離婚 2026.07.11.

親権者はどうやって決まる?裁判所が重視する判断基準
離婚の話を進めているのですが、夫が「俺のほうが収入が多いから親権は当然こちらだ」と言って譲りません。本当に収入が多いほうが親権を取れるのでしょうか。

Dさん

微笑

横田

いいえ、それは大きな誤解です。裁判所は「どちらが経済的に豊かか」で親権者を決めているわけではありません。あくまで「どちらが育てるのが子どもの利益になるか」という観点で判断します。収入の差は、親権ではなく養育費で調整するのが基本的な考え方です。
そうなんですね。では、実際には何を見て決められるのでしょうか。

Dさん

微笑

横田

いくつかの要素を総合して判断します。これまで誰が中心になって子どもの世話をしてきたか、離婚後の生活環境が安定しているか、子ども自身がどう感じているか、といった点ですね。一つひとつ整理してご説明しましょう。
ぜひお願いします。漠然と不安だったので、基準がわかると心強いです。

Dさん

微笑

横田

ご安心ください。順を追って見ていけば、ご自身が何を準備すべきかも見えてきます。当事務所は福井県内に限らず全国のご相談に対応していますので、遠方の方も同じようにサポートいたします。
この記事でわかることとして、親権者は親の都合でなく子の利益を基準に決まること、家庭裁判所が重視する具体的な判断基準、収入が多い方が有利という思い込みが正確でない理由の3点を挙げている。

親権者を決める大原則は「子の利益」

離婚をする際、未成年の子どもがいる場合には、必ず親権者を決めなければなりません。協議離婚であれば、離婚届に親権者を記入しないと役所で受理されない仕組みになっています。

ここでまず押さえていただきたいのは、親権者を決める基準が「親にとってどちらが望ましいか」ではなく、「子どもにとってどちらが望ましいか」だという点です。

これを法律の世界では「子の利益(子の福祉)」と呼びます。

親同士の言い分には、それぞれの感情や事情が色濃く反映されます。

「自分のほうが愛情が深い」「相手は離婚の原因をつくった」といった主張は、当事者にとっては切実ですが、裁判所はそうした親側の事情だけで親権者を決めることはしません。離婚の原因をつくった側であっても、子どもを育てる親としては適任だと判断されることは珍しくありません。

つまり、夫婦間の対立の延長線上で親権を語るのではなく、「この子が安定して健やかに育つために、どちらが親権者となるのが望ましいか」という視点に立つことが出発点になります。

もう一点、誤解されやすいのが「親権」という言葉そのものです。

親権というと「子どもを自分のものにする権利」のように響きますが、本来は、子どもを監護・養育し、その財産を管理して、子どもの利益のために行使する義務的な側面の強いものです。子どもを支配する権利ではなく、子どもを守り育てる責任だと捉えていただくと、裁判所の判断基準も理解しやすくなります。

親権争いが「親同士の勝ち負け」になってしまうと、結局は子どもがその間で苦しむことになりかねません。冷静に、子どもにとっての最善を見据える姿勢が何より大切です。

大原則として、親権者を決める基準は「親にとって」ではなく「子どもにとって」であり、法律用語で「子の利益(子の福祉)」と呼ばれ、離婚の原因をつくった側でも適任と判断されうると説明。
親権は「権利」よりも「責任」であり、子を監護・養育しその財産を管理して子の利益のために行使する義務的な側面が強いこと、親権争いが親同士の勝ち負けになると子どもが苦しむと説明。

裁判所が重視する5つの判断基準

それでは、家庭裁判所は具体的に何を見ているのでしょうか。実務上、重視される代表的な要素を挙げます。

  1. 監護の継続性:これまで実際に誰が中心となって子どもの世話をしてきたか、という点です。食事の用意、送り迎え、通院、学校行事への対応など、日常的な養育を担ってきた親が引き続き育てるほうが、子どもにとって環境の変化が少なく安定すると考えられます。これは多くのケースで重視される要素です。
  2. 子の意思:子ども自身がどちらと暮らしたいと考えているか、という点です。とくに15歳以上の子どもについては、家庭裁判所が手続のなかでその意思を聴かなければならないとされています。15歳未満であっても、年齢や成熟度に応じて、子どもの気持ちは可能な範囲で考慮されます。
  3. 監護環境・養育能力:離婚後の住まいや生活リズム、子どもの通園・通学のしやすさ、心身の健康状態など、子どもが実際に過ごす環境が整っているかどうかです。あわせて、親自身が継続して子どもを育てていける状態にあるかも見られます。
  4. 補助者の有無:親が働いている間など、子どもの面倒を見られないときに、祖父母などのサポートを受けられる体制があるかどうかです。一人で抱え込まずに育てられる環境があることは、安定した養育につながると評価されます。
  5. これまでの監護状況と今後の見通し:過去の養育実績だけでなく、これから先も安定して子どもと向き合えるかという将来の見通しも考慮されます。

これらは、どれか一つで決まるものではなく、総合的に判断されます。ご自身がどの点で強みを持ち、どの点を補う必要があるのかを早めに整理しておくことが大切です。

なお、実務では「兄弟姉妹を分離しない」という考え方も重視される傾向があります。

きょうだいは一緒に育つほうが情緒の安定につながると考えられるため、特段の事情がない限り、きょうだいをばらばらの親が引き取る形は避けられることが多いのです。また、これまで主に子どもを世話してきた親が、別居の際に子どもを連れて出ているかどうかも、現実の監護状況として考慮されます。ただし、相手に無断で子どもを連れ去るような形は、かえって不利に評価されることがありますので、別居の進め方には十分な注意が必要です。

裁判所が重視する5つの判断基準として、監護の継続性、子の意思、監護環境・養育能力、補助者の有無、これまでの監護状況と今後の見通しを挙げ、それぞれの内容を簡潔に説明している。
判断は一つの要素でなく総合的に見られること、強みと補うべき点を早めに整理する必要があること、兄弟姉妹を分離しない考え方が重視される傾向、相手に無断で子を連れ去ると不利に評価されうる点を説明。

「収入が多い方が有利」は本当か

冒頭のご相談にもあったように、「収入が多いほうが親権を取れる」という思い込みは非常に根強いものです。

しかし、これは正確ではありません。

たしかに、子どもを育てるにはお金がかかります。しかし、その経済的な差は親権ではなく「養育費」で調整するというのが、法律上の基本的な考え方です。仮に収入の少ない親が親権者となっても、もう一方の親が収入に応じた養育費を支払うことで、子どもの生活費は確保されます。

そのため裁判所は、収入の多寡そのものを親権の決め手とはしません。

むしろ重視されるのは、これまで誰が日々の養育を担ってきたか、離婚後も子どもが安定して暮らせるか、といった点です。専業主婦・主夫の方が「収入がないから親権は無理だ」とあきらめてしまうケースを見かけますが、それは早計です。日常の養育を中心的に担ってきた方であれば、むしろ有利に働く要素を多く持っていることが少なくありません。

逆に、収入が高くても、仕事が忙しく子どもとほとんど関わってこなかったという場合には、それが必ずしも有利に働くとは限りません。お金で測れない「これまでの関わり」こそが、判断の中心にあるのです。

もちろん、経済的な事情がまったく無関係というわけではありません。離婚後に子どもを養育できるだけの生活基盤があるかどうかは、監護環境の一要素として見られます。ただし、それは「相手より収入が多いかどうか」という比較の問題ではなく、「その親のもとで子どもが安定して暮らしていけるか」という観点です。

収入が少なくても、養育費を受け取ることで生活を組み立てられるのであれば、親権者となることに支障はありません。経済力の差そのものを過度に気にする必要はない、と知っておいていただきたいと思います。

根強い思い込みとして「収入が多い方が有利」は正確でないと指摘。経済的な差は親権でなく養育費で調整するのが法律上の基本的な考え方であり、収入が少ない親でも養育費で子どもの生活費は確保されると説明。
「収入がないから無理」はあきらめすぎと指摘。日常の養育を担ってきた親はむしろ有利な要素を多く持つ一方、収入が高くても関わりが薄い親は必ずしも有利とは限らないと対比して説明している。

共同親権が導入されても、もめれば家裁が判断する

令和8年4月に施行された改正民法により、離婚後の親権について「共同親権」を選べるようになりました

これまでは離婚後の親権は父母のどちらか一方に限られていましたが、改正後は、父母の協議によって共同親権とすることもできるようになっています。

もっとも、ここで誤解してはならないのは、共同親権が導入されたからといって、親権の話し合いがなくなるわけではないという点です。

共同親権とするか単独親権とするかは、まず父母の協議で決めます。そして、協議がまとまらない場合には、最終的に家庭裁判所が「子の利益」を基準として判断する仕組みになっています。

つまり、親権をめぐって意見が対立したときに、家庭裁判所がこれまで説明してきたような基準で判断するという構造は、改正後も変わりません。さらに、父母の間にDVや虐待のおそれがあるなど、共同して親権を行うことが子の利益を害すると認められる場合には、家庭裁判所は単独親権としなければならないとされています。

また、共同親権を選んだ場合には、進学先の決定や重要な医療など、子どもに関わる一定の事項について、父母が共同で決めることになります。離婚後も相手と協議を続けていく必要があるため、関係性によっては負担が大きくなることもあります。逆に、単独親権であれば、親権者が一人で判断できる一方、もう一方の親の関与は限られます。どちらが子どもにとって、そしてご自身にとって望ましいかは、夫婦の関係や子どもの状況によって大きく異なります。

制度の選択肢が増えたぶん、ご自身のケースで何を選ぶべきか、どう交渉すべきかは、これまで以上に慎重な検討が必要になりました。新しい制度の運用は始まったばかりですので、最新の実務を踏まえた助言を受けることをお勧めします。安易に「とりあえず共同親権で」と決めてしまうと、後々の協議で行き詰まることもあります。ご自身の状況を冷静に見極めたうえで判断していただきたいところです。

令和8年改正後も、共同親権とするか単独親権とするかはまず父母の協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所が子の利益を基準に判断すること、DVや虐待のおそれがある場合は単独親権になる旨を説明。
「とりあえず共同親権で」は避けるべきと助言。共同親権では進学先や重要な医療など父母が共同で決め離婚後も協議が続く一方、単独親権では親権者が一人で判断できると対比し、慎重な検討を促している。
できる準備として、送り迎えや通院の記録、学校・園とのやり取りの記録、日常の養育の実態、離婚後の住まいや養育サポート体制の見通しを整理することを提案。子への聞き方には配慮が必要と注意。
実務の傾向として「きょうだいは一緒に、が原則」と説明。きょうだいは一緒に育つほうが情緒の安定につながると考えられ、特段の事情がない限りきょうだいを別々の親が引き取る形は避けられることが多いと解説。
基準がわかれば準備すべきことが見えると説明。漠然とした不安も具体的な準備に変えられること、子の年齢や状況で進め方が変わること、一人で抱え込まず早めの相談で多くの準備ができることを伝えている。

まとめ

親権者は「収入」ではなく「子の利益」を基準に決まります。

これまで誰が子どもを育ててきたか、子ども自身がどう感じているか、離婚後の環境が安定しているか——こうした要素を総合的に見て判断されます。

共同親権が導入された後も、協議が調わなければ家庭裁判所が子の利益を基準に判断する点は変わりません。

この記事の要点として、親権者は収入でなく子の利益を基準に決まること、5つの要素を総合的に判断すること、収入差は養育費で調整すること、共同親権導入後も家裁が子の利益で判断することの4点をまとめている。

お話を聞いて、収入だけで決まるわけではないとわかって安心しました。私は子どもの世話をずっと続けてきたので、その点は強みになりそうですね。

Dさん

微笑

横田

ええ、これまでの養育の実績は大きな意味を持ちます。送り迎えや通院の記録、学校とのやりとりなど、日常の関わりがわかる資料を整理しておかれるとよいでしょう。
わかりました。子どもの気持ちも大切にしたいのですが、本人に「どっちと暮らしたい」と聞いてもいいものでしょうか。

Dさん

微笑

横田

子どもに選択を迫る形は、かえって負担になることがあります。聞き方には配慮が必要ですので、進め方を含めてご相談いただければと思います。お子さんの年齢や状況によって対応も変わってきます。
そうですね、慎重に考えます。一度きちんと相談に伺いたいです。

Dさん

微笑

横田

ぜひお越しください。当事務所は全国のご相談に対応しており、遠方の方にはオンラインでの面談も承っています。お一人で抱え込まず、早めにご相談いただければ、できる準備も多くあります。

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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