COLUMNコラム
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共同親権が選べる時代の離婚相談──確認事項が増えた今、ヒアリングと記録の精度が結果を左右する
若手弁護士向け 2026.06.25.

若手弁護士

横田

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~目次~
共同親権という選択肢が増えたことの意味
2026年4月1日に施行された改正民法によって、離婚後の親権について共同親権という選択肢が加わりました。
これまでは離婚後の親権者は父母のどちらか一方に定める単独親権のみでしたが、今後は父母双方を親権者とすることも選べるようになります。
相談の入口で、まず確認すべき項目が一つ増えたことになります。依頼者が共同を望むのか単独を望むのか、その意向の背景に何があるのか。ここを丁寧に聴き取らないと、後の方針全体がぶれてしまいます。
制度の選択肢が増えたぶん、初回相談で押さえるべき情報量が確実に増えています。
注意したいのは、依頼者の「共同にしたい」「単独がいい」という言葉の裏に、いろいろな事情が潜んでいることです。相手と協力していきたいという前向きな動機のこともあれば、財産分与や面会交流の交渉を有利に運びたいという思惑が混じることもあります。逆に、相手の関与をできるだけ避けたいという強い希望の背景に、過去のトラブルや不安が隠れている場合もある。
言葉どおりに受け取って方針を立てるのではなく、なぜそう望むのかまで踏み込んで聴くことが、後で「思っていたのと違う」を防ぐ第一歩になります。
共同という選択肢が加わったことで、この「意向の背景を読む」作業の比重が一段と増した、と言えます。
- 離婚後の親権が「共同か単独か」という選択を含むようになった
- 依頼者の意向と、その背景事情の聴取が出発点になる
- 「共同/単独」を望む動機まで踏み込んで聴くことが大切
- 選択肢が増えたぶん、初回相談での確認項目が増えている


急迫時の単独行使と、日常行為の範囲
共同親権を選んだ場合、親権の行使は原則として父母が共同で行うことになります。
ただし、ここに実務上重要な例外があります。
子の利益のために急迫の事情があるときは、一方の親が単独で親権を行使できるとされ、また監護や教育に関する日常の行為についても、単独で行えるものとして整理されています。
問題は、「急迫」や「日常行為」の線引きが、抽象的には分かっても具体的事案では悩ましいという点です。緊急の医療をどう扱うか、進学に関わる判断はどちらに入るのか。相談の段階で、想定される場面を依頼者と一緒に洗い出しておくと、後のトラブルを減らせます。ここは説明の腕の見せどころでもあります。
具体的には、子の進学先や習い事の選択、引っ越しを伴う転校、予防接種や手術といった医療上の判断など、生活の中で実際に意思決定が必要になる場面を一つずつ挙げて、「これは共同で決めるべきか、一方で決めてよさそうか」を一緒に考えておくと、依頼者の理解が具体的になります。線引きが微妙な事項ほど、事前に相手とどう連絡を取り合うか、合意できないときにどうするかまで見通しておくことが大切です。すべてに明快な答えが出るわけではありませんが、「迷いどころがどこにあるか」を共有しておくだけでも、後の紛争の芽を早めに摘めます。断定を避けつつ、起こりうる場面を一緒に想像する。その姿勢が、依頼者の安心につながります。
- 共同親権では原則共同行使だが、急迫時は単独行使が認められる
- 監護・教育の日常行為は単独で行えるものとして整理されている
- 進学・医療・転居など、実際の意思決定場面を具体的に洗い出す
- 具体的場面ごとの線引きを、相談時に依頼者と想定しておく


法定養育費という新しい前提
養育費についても見直しが入りました。注目したいのが法定養育費の仕組みです。
父母の間で養育費の取り決めがされていない場合でも、一定の要件のもとで、法務省令で定める算定方法による一定額を請求できる枠組みが設けられました。
これまでは「取り決めがないと請求が難しい」という説明をする場面がありましたが、その前提が変わります。取り決めがないまま離婚してしまったケースでも、一定額の請求の余地があると説明できるようになる。依頼者にとっては心強い変化ですが、要件や金額の算定は省令に沿って確認する必要があり、安易に断定はできません。制度の存在を踏まえつつ、個別事情に即して丁寧に説明する姿勢が求められます。
この点で気をつけたいのは、依頼者が「法律で決まった額がもらえるなら、もう交渉しなくていいのでは」と受け止めてしまう場合があることです。法定養育費は、あくまで取り決めがない場合の枠組みであって、当事者間で適切に取り決めをすること自体の重要性が下がるわけではありません。むしろ、個別事情を反映した取り決めをきちんと結んでおくことの意義は変わらない、という点も併せて伝えておくと、依頼者の判断を誤らせずに済みます。
新しい制度を「最後の備え」として正確に位置づけつつ、本筋の取り決めをおろそかにしない。そのバランスを言葉にして説明できると、依頼者の納得感が違ってきます。
- 取り決めがなくても、一定要件下で一定額の養育費を請求できる枠組み
- 金額の算定は法務省令の定めに沿って確認する
- 適切な取り決めをすること自体の重要性は変わらないと伝える
- 「請求の余地がある」ことと「必ず取れる」ことは区別して説明する


先取特権で変わる、不払い時の説明
養育費の実効性を高める仕組みとして、子の監護費用に関する先取特権が整理されました。
これにより、養育費の支払が滞った場合に、債務名義を得る手間を経ずに差押えに進みやすくなる場面が想定されます。
不払いへの対応は、これまで「まず債務名義を確保し、それから執行へ」という説明が基本でした。今後は、先取特権を前提とした回収の道筋も視野に入れて説明することになります。
もっとも、対象となる範囲や金額には省令上の枠があり、どんな場合でも自由に差し押さえられるわけではありません。期待を持たせすぎず、しかし使える手段は正確に伝える、というバランスが大事になります。
依頼者の関心は、結局のところ「払われなかったときに、どこまで実効的に取れるのか」に集まります。だからこそ、この仕組みを説明するときは、回収手段の選択肢が広がったという事実と、それでも個別事情によって使える範囲が変わるという留保を、セットで伝えることが大切です。
先取特権という言葉だけが独り歩きして「滞ったらすぐ差し押さえられる」と理解されると、後で「話が違う」となりかねません。制度の輪郭を正確に描きつつ、実際にどう動かすかは個別に検討が要る、という二段構えで説明する丁寧さが、依頼者の信頼につながります。
- 子の監護費用について先取特権が整理され、回収の選択肢が広がった
- 不払い時に差押えへ進みやすくなる場面が想定される
- 「選択肢が広がった事実」と「個別事情による留保」をセットで伝える
- 対象・金額には省令上の枠があり、過度な期待を持たせない説明を


確認項目が増えるほど、ヒアリングと記録が効く
ここまで見てきたように、共同親権の導入で離婚相談の確認事項は確実に増えました。
親権の形態、急迫時や日常行為の扱い、法定養育費の可否、先取特権による回収の見通し。これだけの項目を、相談のたびに記憶だけで漏れなくさばくのは現実的ではありません。
だからこそ、確認項目を構造化したチェックリストを用意し、それを案件情報と連動させておくことが効いてきます。聴き取った内容がそのまま案件の記録として残り、次の打合せや書面作成にすぐ使える。確認項目が増えた局面では、ヒアリングの網羅性と記録の正確さが、そのまま方針の質を左右します。制度が複雑になったぶん、それを支える足場を整えることの価値が上がっている、ということです。
離婚相談は、一回で終わらず複数回にわたることも多く、その間に依頼者の意向が揺れたり、新しい事情が出てきたりします。初回に聴いた内容と、二回目に聴いた内容が食い違うこともある。こうした変化を時系列で追えるように記録しておくと、方針のぶれを防ぎ、依頼者にも「前回はこうおっしゃっていましたね」と確認しながら進められます。記憶に頼ると、聴いたつもりで聴いていなかった項目が後から発覚する、という事態が起きやすい。確認項目をリスト化し、聴いた内容と日付を残していく地道な作業が、結果として依頼者への説明の質と、こちらの安心の両方を支えてくれます。
- 増えた確認項目は、構造化したチェックリストで漏れを防ぐ
- 聴取内容を案件情報と連動させ、記録として残す
- 複数回の相談で意向が変わる場合に備え、時系列で記録する
- ヒアリングの網羅性と記録の正確さが、方針の質に直結する



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