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「24時間365日対応」と書く前に──業務広告規程の改正と、表示と実態を一致させるという地味な作業

若手弁護士向け 2026.06.23.

「24時間365日対応」と書く前に──業務広告規程の改正と、表示と実態を一致させるという地味な作業
横田先生、独立も視野に入ってきたので、そろそろ自分のホームページを作ろうかと思っているんです。集客を考えると、やっぱり目を引く文句は入れたくなりますよね。

若手弁護士

微笑

横田

気持ちはよく分かります。ただ、その「目を引く文句」が今いちばん注意を要するところでね。日弁連の業務広告に関する指針が見直されて、表現のチェックがより具体的になっているんです。
見直し、ですか。正直、広告規程ってあまり真面目に読んだことがなくて。

若手弁護士

微笑

横田

登録して数年は、自分が広告の「出し手」になる場面が少ないですからね。でも独立して自分の名前で集客するとなると、話は別です。
たとえばどのあたりが引っかかりやすいんでしょう。

若手弁護士

微笑

横田

典型は「24時間365日対応」と「No.1」。どちらも、書いた瞬間に実態との距離を問われる表現なんですよ。
嘘でなくても受け手を誤解させれば誤導広告になり、媒体が比較を容易にした今は表現の正確さが問われると説くスライド。

なぜ今、業務広告の表示が問われるのか

弁護士の業務広告は、もともと弁護士等の業務広告に関する規程と、その運用を示す指針によって枠づけられています。

虚偽広告や誤導広告、つまり事実に反する表示や、事実に反しなくても受け手を誤解させる表示は禁止されている、という建付けです。

ここ数年で改正・見直しが重ねられ、ポータルサイトやSNSを含めた具体的な場面を想定した記述が増えてきました。

背景にあるのは、広告媒体の変化です。かつては事務所案内や電話帳が中心でしたが、今は検索結果・口コミ・動画・SNSが入口になっています。受け手が情報を比較しやすくなった分、ちょっとした誇張が「誤解を生む表示」として目立ちやすくなった、という事情があります。検索すれば同じ分野の事務所がいくつも並び、利用者は表示を横に並べて比べます。そこで一つだけ強い言葉を使えば、相対的に過大な印象を与えてしまう。媒体が比較を容易にしたぶん、表現の正確さが以前より問われるようになった、と言い換えてもよいでしょう。

もう一つ意識したいのは、広告が一度出すと残り続ける性質を持つことです。紙の広告は配り終えれば消えますが、Web上の表示は検索結果やアーカイブとして長く残ります。数年前に書いた一文が、体制が変わった後もそのまま閲覧され続ける、という事態が起こりやすい。出すときだけでなく、出した後に点検し続ける前提で考えておくのが現実的です。

  • 規制の対象は紙媒体に限らず、Web全般・SNS・動画にも及ぶ
  • 「嘘ではないが誤解させる」表示も誤導広告として問題になりうる
  • Web上の表示は長く残るため、出した後の点検も前提に考える
  • 集客を本格化させる独立前後こそ、自分の表示を点検する好機
業務広告は規程と運用指針で枠づけられ、虚偽広告だけでなく事実でも誤解させる誤導広告も禁止で、規制はネットや動画、各種の発信欄にも及ぶと示すスライド。
利用者が表示を横並びで比べる今はちょっとした誇張が際立ち、ネット上の表示は削除しなければ長く残るため、公開後も点検し続ける前提が要ると述べるスライド。

「24時間365日対応」が誤導広告になりうる理由

若手の方からよく相談を受けるのが、この「24時間365日対応」という表現です。

一見すると単なるサービス内容の説明に見えますが、問題は実態との一致にあります。

たとえば、夜間や休日に電話を受けるのは外部のコールセンターや事務員で、弁護士自身が相談に応じられる体制が整っていない。それなのに「いつでも弁護士が対応します」と読める書き方をしていれば、受け手は「深夜でも弁護士本人がすぐ動いてくれる」と期待します。その期待と実態がずれていれば、誤導と評価される余地が出てきます。とくに刑事の身柄事件や交通事故の初動など、時間の切迫した分野では「すぐ動いてもらえる」という期待が強く働きます。だからこそ、書いた言葉と実際の稼働の差が表面化しやすいわけです。

ポイントは、表現そのものの善し悪しではなく、書いた内容を裏づける稼働ができているか、という点です。

実際に当番制で弁護士が対応しているなら問題は小さい。逆に、受付だけ24時間なのに対応主体をぼかしていれば、表示の見直しを求められる可能性があります。回避の方向もシンプルで、「24時間お電話を受け付け、内容に応じて弁護士が折り返します」のように、受付と弁護士対応を分けて書けば、できることを正確に伝えつつ過大な期待を防げます。

言葉を弱めるというより、事実の粒度を上げる作業だと考えると取り組みやすいはずです。

  • 「受付」と「弁護士による対応」を区別して書いているか
  • 表示している対応水準を、実際の稼働で裏づけられるか
  • 切迫した分野ほど「すぐ動く」期待が強く、表示の差が表面化しやすい
  • 誇張ではなく、できることを正確に書く方が結果的に信頼される
受付が24時間でも弁護士が動けない体制で「いつでも対応」と読める書き方をすれば、期待と実態がずれて誤導と評価される余地があると解説するスライド。
問われるのは表現の善し悪しでなく書いた内容を稼働で裏づけられるかで、受付と弁護士対応を分けて書けばできることを正確に伝えられると述べるスライド。

「必ず」「最短即日」「No.1」──比較・断定表現の落とし穴

次に気をつけたいのが、結果や順位に関わる表現です。

「必ず回収できます」「必ず勝てます」といった断定表現は、結果を保証していると読まれやすく、是正の対象になりやすい類型です。

法的結論は事案により変わるものですから、確実性をうたう表現とは相性が悪い。依頼者の側も、後から「必ずと言われたのに結果が違う」と受け止めれば、信頼関係そのものに響きます。

広告の問題にとどまらず、受任後のトラブルの芽にもなりうる、ということです。

「最短即日対応」のようなスピードの訴求も、常に即日対応できるわけでないなら、条件や例外を示さずに書くと誤解を招きます。

「No.1」「地域一番」といった比較優位の表示は、客観的な根拠と調査の出典を示せない限り、避けるのが無難です。何を母数に、いつ、誰が調べた何の順位なのかを説明できないなら、書かない判断が安全だということです。

「相談実績多数」「地域で長く活動」といった、検証可能で控えめな表現に置き換えれば、過大な印象を避けつつ強みは伝えられます。

訴求したい中身を捨てるのではなく、断定や順位という形を避けて同じ価値を伝える、と考えるのがコツです。

  • 結果や成功率を保証するように読める表現は避ける
  • スピードや費用は、条件・前提を併記して誤解を防ぐ
  • 比較・順位表示は客観的根拠と出典をセットで考える
  • 断定や順位を避け、検証可能で控えめな表現に置き換える
「必ず勝てます」などの断定は結果保証と読まれ是正の対象になりやすく、受任後のもめごとの芽にもなるため避けるべきと説くスライド。
「最短即日」は条件を併記し、「地域一番」など比較優位は客観的根拠と出典がなければ避け、検証可能で控えめな表現に置き換えるべきと述べるスライド。

掲載中止命令と懲戒のリアルな距離感

「多少盛っても、せいぜい注意される程度では」と感じる方もいるかもしれません。ただ、手続の流れを知っておくと受け止め方が変わります。

広告規程に反する表示について、弁護士会から表示の訂正や掲載中止を求められることがあり、その求めに正当な理由なく従わない場合には、懲戒手続につながる可能性が説明されています。

つまり、表示それ自体だけでなく、指摘を受けた後の対応姿勢も評価されるということです。

素直に修正すれば多くは是正で収まる一方、放置すれば話が大きくなりうる。ここは過度に恐れる必要はありませんが、軽く見るべきところでもありません。とくに独立直後は、ホームページの更新を業者任せにしていて、自分が何を表示しているか把握しきれていない、という状態に陥りがちです。

指摘を受けてから慌てて探す、という事態を避けるためにも、表示の内容と、それを修正できる手段を自分の手元に置いておくことが大切になります。

  • 是正を求められた段階で速やかに直せば、影響は限定的になりやすい
  • 求めを無視・放置する姿勢こそが、より重い問題に発展しうる
  • 表示内容と修正手段を自分の手元に置き、指摘に即応できるようにする
  • 「指摘されたら直す」前提で、修正しやすい管理にしておく
広告規程違反の表示は弁護士会から訂正や掲載中止を求められ、正当な理由なく従わなければ懲戒手続につながりうると、手続の流れを示すスライド。
指摘後に速やかに直せば是正で収まるが放置すれば問題は拡大するため、表示内容と修正手段を手元に置き指摘に即応できる管理にすべきと述べるスライド。

HP・ポータル・SNSプロフィールの棚卸し

最後は実務的な作業です。

自分が情報を出している場所を、いちど全部書き出してみてください。自前のホームページ、弁護士検索ポータルの登録欄、各種SNSのプロフィール、過去に出した広告記事──意外と散らばっているものです。

とくにポータルサイトは、登録時に入力した文言がそのまま残っていることが多く、自前のHPは直したのにポータル側は古いまま、という食い違いが起きがちです。

そして、それぞれの表示が今の実態と一致しているかを確認します。取扱分野、対応時間、料金、実績の書き方。数年前に勢いで書いた一文が、今の体制と食い違っていることは珍しくありません。

表示と実態を一致させる前提として、自分が今どれだけの案件を、どんな体制で回しているのかを正確に把握できていることが欠かせません。稼働の実像が見えていなければ、「対応できます」と書いてよいかの判断自体ができないからです。

たとえば「相続に注力」と書くなら、実際にその分野の案件をどの程度扱っているのか、自分で説明できる状態になっているか。表示の見直しは、結局のところ自分の実務を棚卸しする作業と地続きなのです。

  • 情報発信の場所をすべて洗い出し、一覧にする
  • ポータルの登録欄など、更新漏れが起きやすい場所を特に確認する
  • 各表示を現在の取扱分野・体制・料金と突き合わせる
  • 表示の妥当性は、自分の稼働実態を把握できて初めて判断できる
広告表示を棚卸しする手順のチェックリスト。情報を出している場所の洗い出し、検索サイトの更新漏れの確認、取扱分野や料金の照合、稼働実態からの可否判断を列挙。
ホームページを直しても検索サイトの登録欄は古いまま残りがちで、表示の見直しは自分の実務を棚卸しする作業と地続きであると説くスライド。

こうして見ると、広告の問題って結局「自分が何をどれだけできているか」を正確に把握できているかどうかに行き着くんですね。

若手弁護士

微笑

横田

まさにそこなんです。だから私は、広告表現を考える前に、まず案件と稼働を見える化することをお勧めしています。うちで提供している案件管理ツールも、案件数・進行状況・対応履歴を一覧で押さえられるので、「この対応水準は本当に表示してよいのか」を判断する材料になります。広告のためというより、自分の実態を自分で説明できる状態をつくる道具、という感覚ですね。
なるほど。表示の根拠を、感覚ではなくデータで持っておくということですか。

若手弁護士

微笑

横田

ええ。誇張する必要がなくなる、というのも大きい。実態が見えていれば、できることを正確に書くだけで十分に伝わりますから。
独立前に、まず自分の足元を数字で見える化しておきます。

若手弁護士

微笑

横田

それが一番の広告対策だと思いますよ。表現を盛るより、ずっと持続的です。
なぜ今問われるか、24時間対応の書き方、断定・比較の注意、表示の棚卸しの四点を振り返り、盛るより表示を実態に合わせるべきと結論づける。
表示を盛るより実態に合わせるほうが強いと述べ、書く前に自分の稼働実態を棚卸ししておくよう呼びかけ、事務所名を示す。
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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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