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家族の喧嘩が「逮捕」につながる時〜阿部前監督の報道から考える「暴行罪」と「しつけ」の境界線〜

ニュース解説 2026.05.29.

家族の喧嘩が「逮捕」につながる時〜阿部前監督の報道から考える「暴行罪」と「しつけ」の境界線〜
「横田先生、前巨人軍監督が長女への暴行容疑で逮捕されたというニュース、見ましたか?単なる家族の喧嘩で警察が動き、監督辞任にまで発展するなんて、少し怖くなりました。」

相談者

真顔

横田

「ニュースをご覧になって不安になられたのですね、お気持ちはよく分かります。ただ、法律上は『家の中の出来事だから許される』という考え方はせず、他者に物理的な力を加えれば暴力とみなされてしまう、という原則があるのです。」
「でも、ニュースを見る限り、大ケガをさせたわけではないんですよね?少し手が出たくらいで逮捕というのは、いくら何でも大げさではないでしょうか。」

相談者

真顔

横田

「実はそこが誤解されやすいポイントなのです。目に見えるケガがなくても暴行罪という犯罪が成立する可能性があるため、決して他人事ではないんですよ。」
「えっ、私も子供が言うことを聞かないと、ついカッとなって腕を強く引っ張ったりしてしまいます…。これは真剣に法律を知っておかないといけませんね。」

相談者

真顔

横田

「そうですよね、親としてはつい感情的になってしまう瞬間もあると思います。ただ、今はしつけであっても手を出してはいけない時代になっています。ご自身の身を守るためにも、現代の法律が家庭内のトラブルをどう捉えているか、一緒に確認していきましょう。」
「家庭内トラブルは法的問題になり得る」と題したスライド。家族間の出来事でも家の中だから許されるとは限らず、物理的な力を加えれば状況により犯罪として扱われる可能性があること、感情的な対立ほど早めに距離と第三者の視点を入れることが大切だと説明しています。

傷害だけではない。ケガがなくても成立する「暴行罪」の恐ろしさ

先日、プロ野球の元監督が長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、その直後に監督を辞任するという衝撃的なニュースが報じられました。

報道によれば、姉妹間の喧嘩を止めに入った際の行為が発端となり、長女が外部の機関へ相談したことで警察の介入に至ったとされています。

その後、長女側からすでに父とは仲直りしているとのコメントが出されたものの、社会的影響の大きさから監督辞任という重い決断を下す結果となりました。

このニュースを見て、他人の家でも起きそうな喧嘩なのにと感じた方も少なくないでしょう。

しかし、ここで最も注意すべき法的なポイントは、【ケガがなくても暴行罪は成立する】という事実です。

多くの方は、殴る蹴るの暴力を振るい、相手に打撲や骨折、出血などの傷害(ケガ)を負わせた場合にのみ犯罪になる、すなわち刑法第204条の傷害罪のイメージを強く持っています。

しかし、刑法第208条には暴行罪が明確に定められています。

法律上における暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を指します。つまり、直接的に相手の身体を傷つけていなくても、不法な物理的力を加えれば犯罪が成立するのです。

たとえば、相手の服の胸ぐらを強く掴んで揺さぶる行為、腕を無理やり引っ張る行為、直接当たらなくても相手の近くに物を力いっぱい投げつける行為などが該当します。

家庭内という密室では感情が高ぶりやすいですが、【家族だから許される】という考えは現代においては通用しない認識であると知っておく必要があります。

「報道から見える問題の流れ」と題したスライド。家族間の喧嘩、仲裁行為、外部相談、警察介入、社会的影響の五段階が矢印でつながる図解。下部に「家庭内の出来事でも、外部相談をきっかけに公的手続へ進むことがある」と記され、外部相談が転機になると示しています。
「家族だから許されるわけではない」と題したスライド。家庭内でも法律上は例外にならず、相手の身体に力を加える行為は問題になり得ること、家族関係を理由に暴力が当然に許されるわけではないことを示す。右側には粘土風の家のイラストが描かれている。
「傷害罪と暴行罪の違い」を表で比較したスライド。ケガの有無では傷害罪はケガが中心、暴行罪はケガがなくても成立し得る。問題になる行為は打撲や骨折に対し胸ぐらや腕を強く引くなど。注意点は結果の重さか力の行使そのものかと示す。
「暴行に当たり得る行為」を粘土風イラストで示したスライド。胸ぐらをつかむ、強く腕を引く、近くに物を投げるの三例を並べ、いずれも「ケガがなくても問題になり得る」と注意喚起。ケガがなくても不法な有形力の行使は暴行に当たり得ると結論づけている。

「しつけ」や「仲裁」は暴力を正当化する魔法の言葉にはならない

子供の激しい喧嘩を止めるためだった、言うことを全く聞かない子供へのしつけだったという目的があれば、親の行為は許されるのではないかと考える方もいるかもしれません。

特に親の立場からすると、危険な喧嘩を力ずくで止めることは親の責任であると感じることもあるでしょう。

しかし、家族間の喧嘩の仲裁であっても、実力行使によってその場を力で収めようとする行為は、法的に違法と判断される可能性が高いのが実情です。

たとえば、相手が刃物を持って襲いかかってきた家族を取り押さえるといった、極端に危険な状況下で自分や他人の命を守るための正当防衛や緊急避難が成立するような特殊なケースは別ですが、単なる口論や小競り合いを暴力で制圧することは許されません。

感情的になっている相手を力でねじ伏せようとすれば、かえって激しい反発を招き、事態を悪化させるだけです。

間に割って入って両者を引き離すことと、相手を投げ飛ばしたり胸ぐらを掴んだりするような攻撃的な行動は、法的に明確に区別されます。

制圧するのではなく、距離をとらせるという冷静な対応が求められるのです。

「『しつけ』は免罪符にならない」と題したスライド。目的があっても暴力は当然には正当化されない、力で制圧する対応は事態を悪化させることがある、大切なのは距離を取り冷静さを確保することの三点を挙げ、家と人の粘土イラストを添えています。
「仲裁と制圧は違う」と題したスライド。仲裁は距離を取らせ安全を確保し冷静に場を分けること、制圧は力でねじ伏せ胸ぐらをつかみ投げ飛ばすことと対比。止める目的でも力で抑え込む対応は危険、と粘土の人物イラストで示しています。

民法改正による「懲戒権」削除と現代の体罰禁止の考え方

しつけと称した暴力が法的に認められない背景には、近年の重要な法改正が存在します。

かつて、日本の民法第822条には、親権者が子供を戒めることができるとする【懲戒権】という規定が存在していました。

親は子供を正しく導くために、ある程度の懲戒処分を行う権利があるという考え方に基づくものでした。

しかし、この懲戒権という言葉を理由にして、度を越した体罰や児童虐待が正当化されてしまう痛ましい事件が後を絶たなかったという悲しい背景があります。

児童相談所や警察が介入しようとしても、親側から「これは法律で認められたしつけだ」と主張され、対応が遅れてしまうケースが問題視されるようになりました。

こうした深刻な社会的状況を重く見た国は、法改正に踏み切りました。

2022年(令和4年)の民法改正により、この懲戒権の規定は完全に削除され、子供に対する体罰の禁止が法律上に明記されることになったのです。

したがって、現在では【しつけのためだから多少叩いてもよい】という主張は、警察の捜査や裁判において法的に全く認められなくなっています。

「体罰を許す時代ではない」と題したスライド。令和四年の民法改正で、以前あった親の懲戒に関する規定が現在は削除され体罰を正当化しにくくなったと説明。しつけを理由にした体罰は現代の法律実務では通用しにくいと結んでいます。
「子どもを守る視点が重視される」と題したスライド。家庭内でも子どもの安全は最優先に考えられ、親子関係でも人格を尊重する対応が求められること、冷静で非暴力的な対応が問題の深刻化を防ぐと説明。家と人を表す粘土風イラスト付き。

AI(ChatGPT)から警察介入へ。現代における通報の多様化

今回の事件で特に注目を集めたのは、被害者となった18歳の長女が、最初に生成AIであるChatGPTに相談を持ちかけたという報道です。

AIに対して「父親から暴力を振るわれたがどうすればいいか」といった趣旨の相談を行い、そこから得られたアドバイスに従って児童相談所へ連絡し、最終的に警察の介入(110番通報)に繋がったとされています。

この経緯は、家庭内のトラブルが外部に発覚するプロセスが現代において大きく変化していることを示しています。

これまでは、密室でのトラブルは当事者が直接警察に駆け込むか、近隣住民が騒ぎを聞きつけて通報するかの二択が主流でした。しかし現在では、スマートフォン一つで客観的な知識を持つAIに相談し、自身の状況が客観的に見て異常である(法的に保護されるべき状態である)と認識する機会が劇的に増えています。

家庭内という閉鎖的な環境にいると、「自分が悪いから怒られているんだ」「親に逆らうことはできない」と思い込んでしまう被害者は少なくありません。

しかし、テクノロジーの進化により、第三者の客観的な視点を手軽に取り入れることが可能となり、結果として公的機関へのアクセスへのハードルが下がっているのです。

「相談経路は広がっている」と題したスライド。不安に気づく、生成型人工知能に相談、相談窓口へ連絡、公的機関につながる、という四段階の流れを矢印で図解。家庭内の問題も、外部の視点に触れる経路が増えていると締めくくる。
「通報までの流れを理解する」と題したスライド。不安の認識、外部相談、公的機関へ連絡、警察介入の四段階を矢印で図解。家庭内の出来事でも、外部相談をきっかけに公的手続へ進むことがあると説明する。粘土風アイコン付き。

逮捕=実刑という誤解。早期釈放の裏にある法的な要件

現行犯逮捕の翌日に元監督が釈放されたことに対し、有名人だから特別扱いされたのではないかと疑問を抱いた方もいるかもしれません。

しかし、これは決して特別扱いではなく、日本の刑事訴訟法に則った一般的な判断です。

そもそも【逮捕】という手続きに対する世間の大きな誤解があります。

逮捕とは、犯人に罰を与えるための手続き(刑罰)ではありません。

逮捕の本来の目的は、被疑者が逃亡することや、証拠を隠滅することを防ぐために、身柄を一時的に拘束するという捜査上の手段に過ぎないのです。

今回のようなケースでは、被疑者の身元(住所や職業)がはっきりと判明しており、本人も事実関係を大筋で認めて捜査に協力的な姿勢を示していたと考えられます。そのような状況下では、警察や検察の判断として、この人物が逃亡したり、証拠を隠滅したりする恐れはないとみなされます。

身柄を拘束し続ける法的な理由(要件)がなくなるため、速やかに釈放されるのが大原則なのです。

以後は、日常生活や仕事を続けながら取り調べを受ける【在宅事件(任意捜査)】へと切り替わります。

「逮捕は刑罰ではない」と題したスライド。逮捕は罰ではなく、目的は逃亡や証拠隠滅の防止であり、早期釈放もあり得ると説明。身柄拘束が続くかどうかは事情に応じて判断されると示し、砂時計や法律書のイラストを添えている。

当事者間の「和解」がその後の刑事処分に与える極めて重要な影響

釈放された後の手続きにおいて、非常に重要な鍵を握るのが当事者間の関係修復です。

今回の事件では、被害者である長女側がすでに父とは仲直りしていると公表している点が、今後の法的な処分に極めて大きな影響を与えます。

暴行罪や傷害罪といった犯罪において、当事者間で話し合いが行われ、示談や和解が成立している場合、被害者が加害者の処罰を強く望んでいないという意思表示になります。

具体的には、被害届の取り下げや、処罰を求めない旨の嘆願書が提出されるケースがこれに当たります。

検察官は、被疑者を裁判にかける(起訴する)かどうかの判断を下す際、被害者の処罰感情を非常に重く見ます。

家族間の事件であり、すでに家庭内で問題が解決して和解が成立している場合、最終的に検察官の裁量判断で【不起訴処分】となるケースは非常に多く見られます。

早期の和解と被害感情の修復が、前科をつけないための最大のポイントとなるのです。

「和解は処分判断に影響する」と題したスライド。被害者側の意向である処罰感情から、示談・和解による関係修復と被害感情の整理を経て、最終判断に影響し得る処分判断へと矢印で流れを図示。早期の関係修復が手続の見通しに関わると述べている。

密室のトラブルを最悪の事態にしないための予防策と外部介入

家族の恥は外に出すべきではない、家庭内の問題は家族だけで解決すべきだという日本の伝統的な価値観は、時にトラブルを長引かせてしまう要因にもなります。

家庭という外からは見えない閉鎖的な空間では、親と子、夫と妻といった力関係が無意識のうちに固定化されてしまいます。

閉鎖空間でエスカレートした感情は行き場を失い、最終的に手を出してしまう、暴言を吐き続けるという望ましくない形で爆発しがちです。

今回の出来事は、社会的地位や名誉があり、普段は冷静な判断ができるはずの人物であっても、家族という特殊な関係性の中では感情のコントロールがいかに難しくなるかという事実を示しています。

もし現在、あなた自身が家庭内の不和、離婚問題、配偶者からのDV、あるいは子供との関係性などで深い悩みを抱えているのであれば、決定的な事件が起きて警察が介入する事態になる前に、第三者の目を入れることをお勧めします。

当事者同士で話し合おうとすると、どうしても感情的な対立の連鎖に陥り、解決の糸口を見つけることが難しくなります。

弁護士は、法律の専門家として客観的な視点から状況を整理し、代理人としてあなたの代わりに冷静な話し合いを進めるサポートが可能です。

深刻なケースであれば、公的機関と連携しながら、身の安全を確保するための法的な手続きを迅速にとることもできます。

家庭内の問題は、一人で抱え込まずに、法律の専門家という客観的な外部の力を頼ることが円満な解決への第一歩となります。

「手を出す前に、距離と相談を選ぶ」と題したスライド。距離を取る、一人で抱え込まない、第三者の視点を入れる、の三段階を矢印で図示。家庭内の問題ほど客観的な基準と外部の視点が大切であると、家や本などのイラストとともに伝えている。

「家庭内の問題こそ、こじれる前に外部の専門家に頼るべきだということがよく分かりました。家族だからこそ、冷静になれないのですね。」

相談者

真顔

横田

「おっしゃる通りです。家庭内だけのルールで解決しようとすると、どうしても無理が生じてしまいます。そんな時こそ、法律という客観的な基準を取り入れることで、事態が好転することが多いんですよ。」
「もし自分の手に負えないと感じたら、すぐに横田先生にご相談させていただいてもよろしいでしょうか?福井県外に住んでいる親戚にも教えたいのですが。」

相談者

微笑

横田

「もちろんです。トラブルは『少し手に負えないかも』と感じた初期の段階でご相談いただくのが、一番スムーズに解決するコツです。当事務所はオンラインで全国どこからでもご相談いただけますので、親戚の方にもぜひお気軽にお声がけくださいね。」
「心強いお言葉、ありがとうございます。不安になったら、迷わずご相談するようにしますね。」

相談者

微笑

横田

「はい、いつでもお待ちしております。一人で抱え込まず、まずはリラックスしてお話しをお聞かせくださいね。」

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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