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個人事業主・自営業者の自己破産。「店を守りたい」は通用しない?事業廃止と再就職の現実

破産・再生 2026.03.15.

個人事業主・自営業者の自己破産。「店を守りたい」は通用しない?事業廃止と再就職の現実
横田先生、資金繰りがもう限界です。自己破産を考えているんですが……店だけはどうしても残したいんです。この店は私の人生そのものですし、常連さんも待っています。借金だけチャラにして、営業を続ける方法はありませんか?

Aさん

横田

……あのですね。あなたは経営者でしょう?もっと数字と現実を直視してください。「借金は払えないけれど、商売道具の店は残せ」なんて、そんな虫のいい話が通用するわけがないでしょう。赤字を垂れ流しているその「人生そのもの」が、あなたの家族の生活を食いつぶしている元凶なんですよ。
うっ……それはそうですけど。でも、在庫の商品だってまだあるし、売掛金が入れば少しは回るんです。破産したら、従業員も路頭に迷うじゃないですか。私が悪者になるのは怖いです。

Aさん

横田

あなたが決断を先延ばしにすればするほど、従業員の給料も払えなくなり、取引先も連鎖倒産し、被害は拡大します。それが本当の「悪者」です。 店を畳む痛みを受け入れられないなら、ここから帰ってください。でも、泥をかぶってでも再出発する覚悟があるなら、従業員を守るための「法律の武器」を授けます。どうしますか?

個人事業主の破産は「同時廃止」では終わらない

まず、サラリーマンの自己破産と、個人事業主(自営業者)の自己破産は、手続きの重みが全く違うということを理解してください。

個人の破産であれば、財産がなければ書類審査だけで終わる「同時廃止」という簡易な手続きが選ばれることが多いです。

しかし、個人事業主の場合は、原則として【管財事件(かんざいじけん)】になります。

なぜか。事業をやっていた以上、そこには必ず「プラスの財産」と「複雑な権利関係」が残っているからです。

  • 店舗にある在庫商品
  • まだ回収していない売掛金(ツケ)
  • 業務用冷蔵庫やパソコンなどの什器備品
  • 店舗の敷金や保証金

これらを裁判所が選んだ【破産管財人(弁護士)】が厳しく調査し、お金に換え(換価)、債権者に平等に配る手続きが必要になります。

そのため、裁判所に納める予納金(最低20万円程度~)が必要になり、手続き期間も半年から1年近くかかるのが一般的です。

「紙切れ一枚出して終わり」ではないのです。

サラリーマンと個人事業主の自己破産の違いを比較した図解。サラリーマンは財産がなければ書類審査のみの「同時廃止」で済むことが多い一方、個人事業主は原則「管財事件」となります。事業に伴うプラスの財産や複雑な権利関係が残るため、裁判所が選任した破産管財人(弁護士)による厳しい調査が行われることを説明しています。
個人事業主が「管財事件」になる理由として、残る可能性が高い4つの財産を例示。1.店舗の在庫商品、2.未回収の売掛金(ツケ)、3.業務用冷蔵庫やPCなどの什器備品、4.店舗の敷金や保証金。これらを破産管財人が調査・換価し、債権者に平等に配当する手続きが必要になるため、調査が必須であると解説しています。
管財事件の手続きに関する目安の紹介。費用面では裁判所に納める予納金が最低20万円程度から必要です。期間は半年から1年近くかかるのが一般的で、単に書類を提出して終わりではないことを強調。画像内には時計と書類のアイコンが添えられ、時間とコストの両面で負担がかかることを視覚的に示しています。

お店の在庫・売掛金・備品はどうなる?

破産を決意した経営者がやりがちな間違いがあります。

「どうせ破産するなら、在庫を安く売って現金化し、当面の生活費にしよう」

「仲の良い取引先からの売掛金だけ回収して、こっそり隠しておこう」

はっきり言いますが、これは【犯罪】です。

詐欺破産罪に問われる可能性があるだけでなく、免責(借金の帳消し)そのものが認められなくなります。

破産手続開始決定が出た瞬間から、あなたの店の在庫も、売掛金を請求する権利も、すべて【破産管財人の管理下】に移ります。

あなたには、勝手に商品を売る権利も、売掛金を受け取る権利もなくなります。

・在庫商品

管財人が適切な価格で売却処分するか、価値がないと判断されれば廃棄処分(放棄)されます。

・売掛金

管財人があなたの代わりに取引先に請求書を送り、回収します。

・什器備品

リース物件であればリース会社が引き上げます。所有物であれば管財人が売却します。

「もったいない」と思うかもしれませんが、これらはすべて債権者への配当原資です。

勝手に処分することは絶対に許されません。

破産直前の不適切な行為への警告。在庫の安売り現金化や、特定の取引先への優先的な支払い(売掛金回収の隠匿)は「詐欺破産罪」に問われる可能性があり、免責が認められなくなるリスクを説明。破産手続き開始決定後は、在庫や売掛金の請求権などすべての管理権が破産管財人に移るという変化についても記述しています。
破産管財人が行う具体的な財産処分の流れ。在庫商品は適切な価格で売却または廃棄され、売掛金は管財人が取引先へ請求書を送って回収します。什器備品については、リース物件は返却、所有物は売却されます。これらはすべて債権者への配当原資となるため、債務者が勝手に処分することは厳禁であると強調しています。


先生、厳しいですね……。在庫を勝手に売るのがダメなのは分かりました。でも、従業員のことだけはどうしても気がかりです。今月の給料も払えていない状態で、「明日から来なくていい」なんて言えませんよ。

Aさん

横田

情に流されてはいけません。あなたが「言いにくい」と口ごもっている間にも、従業員は生活費を当てにして働いているんです。払えないのに働かせることこそ、最も残酷な行為だと気づいてください。
それは……分かりますが、恨まれるのが怖いんです。「社長に裏切られた」って後ろ指さされるのが。

Aさん

横田

恨まれるのは社長の最後の仕事です。その代わり、従業員が路頭に迷わないように手配するのが「責任」でしょう。お金がないなら、国の制度を使ってでも彼らの生活を守る。それが今のあなたにできる唯一の償いです。次はその話をしますよ。

最もつらい決断「従業員の解雇」と未払い賃金

事業を停止し、自己破産をする以上、従業員は全員【解雇】することになります。

長年苦楽を共にしたスタッフに解雇を告げるのは、身を切られるような思いでしょう。

しかし、これは避けて通れません。

問題は、未払いの給料や退職金です。

破産するほどですから、手元に現金がないケースがほとんどでしょう。

「給料も払わずに解雇なんて労働基準法違反だ!」と詰め寄られるかもしれません。

しかし、無い袖は振れません。

ここで嘘をついて「来月には払うから」と引き留めるのが最悪です。

正直に「倒産します。給料は払えません」と伝え、即時に解雇予告を行う必要があります。

事業停止に伴う従業員解雇の厳しい現実と注意点。破産にあたり全員解雇は避けられませんが、手元に現金がなく給料や退職金が払えないケースが多々あります。最悪なのは嘘をついて引き留めることであり、正直に「倒産すること、給料が払えないこと」を伝え、即時に解雇予告を行うことが重要であると説いています。

国が給料を立て替えてくれる「未払賃金立替払制度」

ここで登場するのが、経営者の最後の命綱とも言える【未払賃金立替払制度(みばらいちんぎんたてかえばらいせいど)】です。

これは、会社が倒産して賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、国(独立行政法人労働者健康安全機構)が会社に代わって、未払い賃金の一部を立て替えて支払う制度です。

<対象となるもの>

・定期賃金(毎月の給料)

・退職金

※ボーナスは対象外です。

<支払われる額>

未払い総額の【8割】です。

(ただし、年齢に応じた上限額があります)

この制度を利用すれば、満額ではないものの、従業員にはまとまったお金が入ります。当面の生活費を確保することはできるのです。

弁護士に依頼すれば、破産申立てと並行して、この制度を利用するための手続きや証明書の発行をサポートします。

「ごめん、給料は払えない。でも、この制度を使えば国から8割は出るから、すぐに手続きをしてほしい」と案内することが、従業員に対する最後の誠意です。

「未払賃金立替払制度」の具体的な内容。対象は毎月の定期賃金と退職金で、ボーナスは対象外です。支払額は未払総額の8割(年齢に応じた上限あり)。弁護士に依頼すれば破産申立てと並行して手続きをサポートできるとし、「国から8割出る」と案内することが従業員への最後の誠意であるとアドバイスしています。

店舗・事務所の明け渡しと原状回復費用

テナントとして店舗や事務所を借りている場合、賃貸借契約は解除し、明け渡さなければなりません。

通常、契約書には「スケルトン戻し(内装を全部撤去してコンクリートむき出しの状態に戻すこと)」などの【原状回復義務】が定められています。

しかし、解体工事には数百万単位の費用がかかります。

破産する人にそんなお金はありませんよね。

ではどうするか。

基本的には、【敷金(保証金)】で相殺してもらうことになります。

敷金で足りない分についてはどうなるかというと、これも「破産債権(借金)」の一部として扱われます。つまり、大家さんには申し訳ないですが、原状回復できないまま退去し、その工事費用の請求権も破産手続きの中で免責(ゼロ)にしてもらうことになるのです。

管財人が大家さんと交渉し、「現状のまま明け渡す」か「敷金の範囲内でできる限り片付ける」かを取り決めます。

あなたが勝手に夜逃げをするのとはわけが違います。

テナント退去時の原状回復(スケルトン戻し)に関する課題。通常、契約書には解体工事の義務が定められていますが、これには数百万円単位の多額の費用がかかります。破産に追い込まれた状況ではこの費用の捻出が困難であり、経営者にとって大きな負担となる実態を、矢印を用いたフロー図で説明しています。
高額な原状回復費用への対処法。基本的には敷金(保証金)で相殺し、足りない分は「破産債権」として扱います。原状回復できないまま退去し、残った工事費用の請求権は破産手続きの中で免責(ゼロ)にしてもらいます。管財人が大家と交渉し、現状渡しや敷金内での片付けを調整する、法律に基づいた正当な手続きです。

「元社長」から「会社員」へ。再就職という希望

自己破産をすると、しばらくの間(免責決定までの数ヶ月)は、警備員や保険外交員など一部の職種に就く制限がかかりますが、それ以外の職業であれば、破産手続き中であっても働くことができます。

多くの元経営者の方が、破産を機にサラリーマンとして再就職されています。

「自分の城を失った」という喪失感はあるでしょう。

しかし、実際に再就職した方からは、こんな声をよく聞きます。

「毎月の資金繰りで胃が痛くなる夜がなくなった」

「働いた分だけ確実にお金がもらえることが、こんなにありがたいとは思わなかった」

「休日に電話が鳴る恐怖から解放された」

事業の失敗は、人生の失敗ではありません。

経営者として培ったスキルやバイタリティは、雇われる立場になっても必ず役に立ちます。

「借金のない体」になって、安定した給料を得る生活。

それは、あなたが思っている以上に穏やかで、幸せなものかもしれません。

破産後のキャリア再建に関する解説。自己破産をしても、免責決定までの数ヶ月間は警備員や保険外交員など一部の職種に制限がかかるものの、それ以外の職業であれば手続き中も就労可能です。多くの元経営者がサラリーマンとして再出発し、「資金繰りの悩みから解放された」「休日が穏やかになった」といった前向きな声を寄せていることを紹介しています。
経営者に向けた再出発へのエール。「事業の失敗は、人生の失敗ではない」という強いメッセージを軸に、経営者として培ったスキルやバイタリティは再就職後も必ず役に立つと説いています。「借金のない体」で安定した給料を得る生活がいかに穏やかで幸せなものであるかを伝え、新しい人生への第一歩を後押しする内容となっています。

先生、目が覚めました。店に固執して、従業員を泥船に乗せ続けるところでした。未払い賃金の立替制度があるなら、少しは胸のつかえが取れます。廃業して、サラリーマンに戻ろうと思います。

Aさん

横田

その決断で正解です。経営者のプライドなんて、明日食べるご飯の前では何の役にも立ちません。でも、従業員を守ろうとしたその責任感だけは、次の仕事でも持っていてください。
はい。正直、再就職できるか不安ですが、資金繰りのプレッシャーから解放されると思うと、少しホッとしています。手続き、お願いします。

Aさん

横田

ええ、引き受けました。管財事件になりますから、やることは山積みです。隠し事はなしですよ。店をきれいに畳んで、胸を張って新しい人生を始めましょう。


【お問い合わせ先】

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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