COLUMNコラム
自己破産しても手元に残せる財産(自由財産)について解説
破産・再生 2026.02.22.
~目次~
借金問題に悩み、自己破産を検討されている方の多くが抱く最大の不安は、「家にある全ての財産が没収され、明日からの生活が立ち行かなくなるのではないか」という点です。
テレビドラマなどの影響で、身ぐるみを剥がされるような凄惨なイメージを持たれている方も少なくありません。
しかし、自己破産制度の真の目的は、債務者をどん底に突き落とすことではなく、借金をリセットして「経済的な更生(再スタート)」を支援することにあります。
そのため、法律では「自由財産」として、破産した後も手元に残して良い財産が明確に定められています。
本コラムでは、自己破産をしても没収されない財産の種類や、裁判所の判断で残せる範囲が広がる「自由財産の拡張」について、専門的な視点から詳しく解説します。

自己破産の本来の目的と財産処分の考え方
自己破産とは、裁判所に申し立てを行い、支払い不能の状態にあることを認めてもらうことで、借金の支払い義務を免除(免責)してもらう手続きです。
この手続きの原則は、「債務者が持っている価値のある財産をお金に換え、債権者に公平に配当する」ことにあります。
しかし、もし全ての財産を没収してしまったら、破産した人は翌日から食事をすることも、住居を維持することもできなくなります。
これでは、憲法が保障する生存権や、破産法の目的である「経済的更生」を果たすことができません。そのため、破産手続においても、破産者の今後の生活に不可欠な一定の財産については、債権者への配当に回さず、本人の手元に残すことが認められています。 これを「自由財産」と呼びます。

法律で守られた「本来的自由財産」とは
破産法第34条では、破産管財人が処分できない(=破産者の手元に残る)財産として、大きく分けて以下のものが指定されています。
これらは、裁判所の特別な判断を仰ぐまでもなく、当然に手元に残せる財産です。
- 新得財産(しんとくざいさん):破産手続開始決定の後に取得した財産。例えば、手続き開始後に支給された給料などは、全て本人のものです。
- 差押禁止財産:法律上、差し押さえることが禁止されている財産。年金受給権や、生活に不可欠な家財道具などがこれに当たります。
- 99万円以下の現金:破産者が当面の生活を維持するために必要な資金として認められています。

生活の生命線となる「99万円以下の現金」
自己破産において、もっとも大きな安心材料となるのが、「99万円以下の現金」をそのまま持ち続けることができるというルールです。
ここで注意が必要なのは、「現金」と「預貯金」の区別です。
法律上の厳密な解釈では、タンス預金などの「手元にある現金」は99万円まで無条件で守られますが、銀行口座にある「預貯金」は、後述する「自由財産の拡張」の対象として扱われることが一般的です。
この99万円という金額は、標準的な世帯の約3ヶ月分の生活費を想定して算出されています。
これだけの現金が手元に残れば、破産手続き中やその後の生活を立て直すための大きな足がかりとなります。「自己破産をしたら一銭も残らない」というのは大きな誤解なのです。

没収されない「生活必需品」の具体的な範囲
「家具や家電もすべて没収されて、空っぽの部屋に住まなければならないのか」という質問もよくいただきますが、その心配も基本的には不要です。
民事執行法に基づき、生活に欠かせない家財道具は差し押さえが禁止されています。
具体的には、以下のようなものが手元に残せます。
- 衣服、寝具、家具: 日常生活で通常使用しているもの。
- 調理器具、食器、冷蔵庫、電子レンジ: 自炊に必要な設備。
- 洗濯機、掃除機、テレビ、パソコン: 一般的な生活水準を維持するために必要な家電。
- 学習机、本棚: 子供の教育や、破産者の更生に必要なもの。
ただし、「骨董的な価値がある高級家具」や「100万円を超えるような超大型テレビ」など、換価価値が非常に高い特殊な物品については、処分の対象となる可能性があります。
一般的な家庭にある通常の家財道具であれば、まず没収されることはありませんのでご安心ください。

裁判所の運用による「自由財産の拡張」
法律で定められた「本来的自由財産」以外にも、裁判所の判断によって「自由財産」として認められる範囲を広げることができます。これを「自由財産の拡張」といいます。
日本の多くの裁判所では、一定の基準以下の財産については、手続きの簡素化と破産者の更生支援のために、拡張を認める運用を行っています。
一般的には、「1項目につき20万円以下の価値しかない財産」については、手元に残せるケースが多いです。
対象となる主な財産は以下の通りです。
- 預貯金: 合計額が20万円以下のもの。
- 生命保険の解約返戻金: 解約したとしても戻ってくる金額が20万円以下のもの。
- 自動車: 査定額(市場価値)が20万円以下のもの。初年度登録から数年以上経過している軽自動車などは、多くの場合そのまま維持できます。
- 居住用建物の敷金返還請求権:退去時に戻る予定の敷金。

福井地方裁判所における運用の実務と特徴
当事務所が拠点とする福井県、とりわけ福井地方裁判所管内においても、全国的な標準に近い運用がなされています。
福井地裁では、個別の事情を考慮しつつも、預貯金、保険、自動車などの項目ごとに20万円の基準を適用し、生活再建に支障がないかを慎重に判断してくれます。
私たち弁護士は、申立書を作成する段階で、どの財産を「自由財産の拡張」として申請すべきかを精査します。
特に地方都市においては、自動車は通勤や通院に不可欠な「生活の足」です。
そのため、自動車の価値が20万円を多少超えるような場合でも、「これがなければ生活が成り立たない」という事情をしっかりと疎明(説明)することで、維持が認められる可能性を模索します。
地元の実情を熟知した弁護士に依頼するメリットは、こうした細やかな主張の積み重ねにあります。

自己破産をしても守られる「これからの生活」
自己破産をしても、家族の財産が当然に没収されることはありません。
破産手続きはあくまで「個人」単位のものです。例えばご主人が破産したからといって、奥様名義の預金や車が取り上げられることはないのです。
また、自己破産をした事実が近所の人や会社に知れ渡ることも、通常はありません。
官報という国が発行する記録には掲載されますが、一般の人が毎日官報をチェックしているケースは極めて稀です。
自己破産は「終わり」ではなく、借金に追われる日々から解放され、前を向いて歩き出すための「スタートライン」です。
財産を適切に守りながら、新たな生活基盤を築くための法的な手段なのです。

全国どこからでも相談可能。当事務所のサポート体制
弁護士法人横田秀俊法律事務所は、福井県大野市に事務所を構えておりますが、ご相談は福井県内に限らず、全国各地からのご依頼に対応しております。
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借金の問題は、一人で抱え込むほど解決が遠のき、精神的な負担も大きくなります。
「自分の場合は何が残せるのか?」という具体的な不安を、ぜひ私たちにぶつけてください。

まとめ
「自己破産をすると全てを失う」というのは、大きな誤解です。
- 99万円以下の現金は残せます。
- 日常の生活必需品は没収されません。
- 20万円以下の預貯金や車なども、運用の範囲内で残せる可能性が高いです。
法的なルールを正しく理解し、適切に手続きを進めることで、あなたの生活基盤を守りながら借金を整理することができます。
当事務所は、あなたの新しい人生の第一歩を全力でバックアップいたします。
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