COLUMNコラム
もしも逮捕されたら…医師法・薬機法違反の刑事弁護
エステ法務 2026.02.15.
~目次~
美容サロンの経営において、アートメイクや脱毛、ピーリングといった施術は、一歩間違えると「医師法違反」や「薬機法違反」という重大な刑事罰の対象となるリスクを孕んでいます。
昨日まで順調に営業していたサロンに、ある日突然、警察が捜査にやってくる――。
これは決して他人事ではありません。
特に近年、無資格者によるアートメイクや、医療機器に該当する機器を無届けで使用するケースに対し、警察の取り締まりは厳格化しています。
もしも警察の捜査が入ったとき、あるいは経営者や従業員が逮捕されてしまったとき、どのように対応すべきなのでしょうか。
「逮捕されたらもう廃業するしかない」と絶望する必要はありません。早期に適切な弁護活動を開始することで、不起訴処分や執行猶予の獲得、そして事業の再生への道を探ることが可能です。
本コラムでは、サロン経営者が直面する刑事リスクとその防衛策について、福井県大野市の弁護士法人横田秀俊法律事務所が詳しく解説します。

サロン経営を脅かす医師法・薬機法違反の現実
美容サロン業界において、刑事事件に発展するケースの多くは「医師法」および「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の違反です。
医師法第17条は「医師でなければ、医業をしてはならない」と定めています。
ここでいう「医業」とは、医師の医学的判断および技術をもって行わなければ、人体に危害を及ぼすおそれのある行為を指します。
例えば、針を用いて色素を注入するアートメイクや、高出力のレーザー脱毛などは、現在では原則として医療行為とみなされており、医師免許を持たないスタッフが行えば即座に医師法違反となります。
一方、薬機法違反は、承認を受けていない医療機器を「美容機器」と偽って使用したり、化粧品の範囲を超えた医学的効能を広告で謳ったりした場合に問われます。
これらの法律違反は、たとえオーナー自身に「悪意」がなかったとしても、客観的な事実に基づいて警察の捜査対象となります。

警察の「ガサ入れ(捜索差押)」当日に冷静さを保つための心得
ある日の早朝、予告もなく警察が店舗や自宅にやってくる「捜索差押」、通称「ガサ入れ」は、経営者にとって最大のパニックを伴う事態です。
しかし、ここで感情的になったり、証拠を隠滅しようとしたりすることは、最も避けなければならない行為です。
捜査員は、令状に基づいて店内のパソコン、スマートフォン、顧客カルテ、使用している薬剤や機器を次々と押収していきます。
この際、以下の対応が重要になります。
・令状の内容を確認し、捜査の範囲(罪名や場所)を把握すること。
・捜査員に対して過度に敵対的な態度を取らず、淡々と応じること。
・「任意提出」を求められた物品については、その場で判断せず、弁護士の助言を仰ぐ権利があることを伝えること。
・何よりもまず、その場で弁護士に連絡を取り、状況を共有すること。
ガサ入れの段階でパニックになり、その場の勢いで自分に不利な供述をしてしまうことが、後の裁判で致命傷になることがあります。
法律の専門家である弁護士の立ち会い、あるいは電話での指示を仰ぐことが、権利を守る第一歩となります。

逮捕後の「魔の72時間」と弁護士にしかできないこと
万が一、オーナーやスタッフが逮捕されてしまった場合、法的には極めてタイトなスケジュールが動き出します。
逮捕から勾留(長期の拘束)が決定するまでの「最初の72時間」が、その後の運命を左右すると言っても過言ではありません。
逮捕から48時間以内に警察は事件を検察官に送り、そこから24時間以内に検察官が「勾留」を請求するかどうかを判断します。
この72時間の間、ご家族であっても本人と面会することは原則として許されませんが、弁護士(弁護人)だけは例外的に、時間制限なく、立会人なしで面会(接見)することが可能です。
弁護士は、この短い時間の中で本人と面会し、以下の活動を行います。
・黙秘権の適切な行使方法をアドバイスし、不当な取り調べから守る。
・外部への連絡を遮断された本人の精神的な支えとなる。
・検察官や裁判官に対し、証拠隠滅の恐れがないことを主張し、勾留の回避(早期釈放)を働きかける。


逮捕=即廃業ではない:不起訴や執行猶予を目指す戦略的弁護
逮捕されたからといって、必ずしも前科がついたり、すぐにサロンを畳まなければならなかったりするわけではありません。
刑事弁護の目的は、事案の実態に応じた「最善の結果」を勝ち取ることです。
初犯であり、悪質性が低い(例えば、医療行為にあたるという認識が薄かったなど)場合には、徹底した反省の意を示し、直ちに問題のある施術を停止し、再発防止策を講じることで「不起訴処分(裁判にならないこと)」を目指すことが可能です。
もし裁判(公判)になったとしても、これまでの地域社会への貢献や、真摯な謝罪、被害者(もし健康被害が生じている場合)への適切な賠償、そして何より「二度と法に触れる施術を行わない」というコンプライアンス体制の構築を立証することで、実刑を回避し「執行猶予」を獲得する道が開けます。

従業員が逮捕された際の会社としての危機管理と初動対応
経営者自身ではなく、雇用しているスタッフが個人の判断で(あるいはオーナーの指示の下で)違法な施術を行い、逮捕されるケースもあります。
この場合、法人としての「両罰規定」により、会社自体も罰金刑などの処罰を受ける可能性があります。
従業員が逮捕された際、会社として取るべき対応は以下の通りです。
・事実関係の迅速な調査(社内調査)。
・他のスタッフや顧客に対する動揺を抑えるためのアナウンス。
・当該従業員の処分(懲戒規定等に基づく対応)の検討。
・再発防止策の即時実行。
会社として「個人の暴走」と切り捨てるのではなく、組織としてどのように管理し、今後どのように改善していくのかを対外的に、そして捜査機関に対して説明できる状態を整えることが、法人の社会的信用を守ることに繋がります。

コンプライアンス体制の再構築が「情状酌量」を引き出す鍵
刑事事件において、裁判官が刑の重さを決める際に重視するのが「再発の可能性」です。
「すみません、もうしません」という口頭の約束だけでは不十分です。
弁護士の指導の下、以下のような具体的なコンプライアンス体制を構築し、それを書面や証拠として提出することが、大幅な「情状酌量(刑を軽くすること)」を引き出す鍵となります。
・施術メニューの全面見直しと、法的グレーゾーンの排除。
・スタッフに対する定期的な法令遵守研修の実施記録。
・顧問弁護士による定期的なリーガルチェック体制の導入。
・医師や医療機関との適正な提携関係(もし継続する場合)の再構築。
こうした「目に見える改善」は、単なる反省ポーズではなく、サロンを再生させるための実質的な力となります。

まとめ:法的な守りを固め、信頼されるサロン運営へ
医師法や薬機法の違反は、サロンのブランドを一日で崩壊させる力を持っています。
しかし、起きてしまった事態にどう向き合い、どう対応するかによって、その後の展開は大きく変わります。
刑事事件はスピードが命です。
警察の影がちらついたとき、あるいは不幸にも身内が逮捕されてしまったとき、一人で悩む時間は一秒もありません。
法的な権利を最大限に活用し、最善の出口を見つけるために、今すぐ専門家の門を叩いてください。
福井県大野市の弁護士法人横田秀俊法律事務所では、刑事弁護における迅速な接見対応から、サロン特有の法令遵守アドバイスまで、経営者の皆様に寄り添ったサポートを提供しています。
当事務所では、ZOOMなどを利用したオンライン相談も随時受け付けておりますので、遠方のオーナー様や、急を要するご相談でも場所を問わず対応が可能です。
サロンの未来を守るために、確かな法的な守りを手に入れてください。
【問合せ先】
〒912-0087 福井県大野市城町8番6号
弁護士法人横田秀俊法律事務所
電話:0779-64-4099
Email:info@hidetoshi-lawoffice.com


