COLUMNコラム
利用規約(同意書)の総点検-その紙切れ一枚がサロンを救う
エステ法務 2026.02.13.
~目次~
美容室、エステサロン、ネイルサロンなどの運営において、新規のお客様に必ずご記入いただく「カウンセリングシート」や「同意書(利用規約)」。
開業時にインターネットで見つけたテンプレートをそのまま使い続けていたり、他店のものを少し手直ししただけで運用していたりはしませんか?
「どうせお客様は細かく読んでいないし、形式的なものだから」と軽視されがちなこの紙切れ一枚が、万が一のトラブルが発生した際、貴店を守る「最強の盾」になることもあれば、逆に内容の不備によって全く役に立たない「無用の長物」になることもあります。
本コラムでは、サロン経営における利用規約の重要性と、法的な観点から必ず盛り込むべきチェックポイント、そしてなぜ「とりあえずの同意書」では危険なのかについて、弁護士法人横田秀俊法律事務所が詳しく解説します。

なぜサロンに「質の高い」利用規約が必要なのか
サロン経営者の皆様にとって、最も避けたい事態の一つが、施術後の肌トラブルや体調不良を理由とした損害賠償請求です。
万が一こうしたトラブルが起きた際、法的な争点となるのは、「サロン側に過失があったかどうか」、そして 「お客様がリスクを正しく理解し、合意していたか」 の二点です。
多くのオーナー様は、規約を「お客様に守ってもらうためのルール」と考えていますが、弁護士の視点では、規約は 「サロンの正当性を証明するための防衛手段」です。
形式的な書類ではなく、自店の施術内容や使用する薬剤のリスクに即した「質の高い」規約を用意しておくことで、不当な要求を退け、正当な営業活動を守ることが可能になります。


免責事項の落とし穴:すべての責任を回避することはできない?
多くのサロンの同意書で見かける「いかなる場合も、当店は一切の責任を負いません」という一文。
実は、この条項は消費者契約法という法律によって「無効」とされる可能性が極めて高いことをご存知でしょうか。
法律では、事業者の重大な過失によって生じた損害について、責任を全面的に免除する条項は認められていません。
つまり、「一切責任を負わない」と書いてあっても、法的な強制力はなく、裁判になればサロン側が負けてしまうのです。
有効な免責条項にするためには、「どのような場合に、どの範囲で責任を負うのか(あるいは負わないのか)」 を具体的かつ合理的に記載する必要があります。
例えば、サロン側の指示に従わなかった場合や、事前の注意事項を守らなかった場合に限定して免責を謳うなど、法的有効性を考慮した文言作成が不可欠です。


「申告義務」の明文化:持病や妊娠、薬の服用リスクをどう管理するか
エステや脱毛、マッサージなどの施術は、お客様の身体に直接触れるものです。
そのため、アレルギー体質、持病、妊娠の有無、服用中の薬などは、施術の安全性を左右する極めて重要な情報です。
利用規約において、 「お客様による正確な情報申告の義務」を明記しておくことは非常に重要です。
もしお客様が重要な事実(例:光過敏症の薬を服用している、特定の成分に強いアレルギーがある等)を隠して施術を受け、その結果トラブルが生じた場合、規約に申告義務が明記されていれば、サロン側の責任は大幅に軽減される、あるいは免責される可能性が高まります。
単に「体調はどうですか?」と口頭で聞くだけではなく、「虚偽の申告があった場合、当店は責任を負いかねます」 という合意を事前に得ておくことが、リスク引き受けの証拠となります。

未成年者トラブルを防ぐ:親権者同意書の確認体制と法的リスク
最近では、若年層の美容意識の高まりにより、未成年のお客様が来店されるケースも増えています。
ここで注意しなければならないのが、民法における 「未成年者取消権」 のリスクです。
親権者の同意を得ずに未成年者が結んだ契約は、後から親権者によって取り消される可能性があります。契約が取り消されると、サロンは受け取った代金を返金しなければならず、提供済みの施術(役務)を返してもらうことはできません。
つまり、サロン側の一方的な持ち出しになってしまうのです。
これを防ぐためには、「親権者同意書の取得」 を徹底するだけでなく、その署名が本当に親権者のものであるかを確認する体制(電話確認など)を規約やマニュアルに組み込んでおく必要があります。「同意書はありますか?」と聞くだけでなく、その重みを規約で定義しておくことが重要です。

同意書は「説明義務を果たした」という動かぬ証拠になる
裁判や紛争において、サロン側が最も苦労するのは「きちんと説明しました」という事実を証明することです。
口頭での説明だけでは、後から「そんなことは聞いていない」「効果ばかり強調されて、リスクの説明はなかった」と言われてしまうと、反論が困難です。
規約や同意書に、具体的なリスク(赤み、腫れ、一時的な不快感など)を列挙し、その項目ごとにチェックを入れてもらう形式をとることで、「サロン側は十分に説明義務を果たし、お客様もそれを理解した上でサインした」 という強力な証拠が残ります。
この「説明のプロセス」を可視化することこそが、同意書の最大の役割といっても過言ではありません。

定期的な「規約の総点検」が必要な理由:法改正への対応
日本の法律は、時代に合わせて刻々と変化しています。
例えば、近年の民法改正や消費者契約法の改正により、契約に関するルールや差し押さえの手続きなどは大きく変わりました。
開業当時の古い規約を使い続けていると、 「現在の法律では無効とされる表現」が残っていたり、逆に「最新の法律で認められた有利な規定」 を盛り込めていなかったりすることがあります。
また、サロンで使用する機器や薬剤が新しくなった場合も、それに合わせたリスク説明の追加が必要です。
少なくとも年に一度は、規約の内容が現在の実務と法律に合致しているか「総点検」を行うべきです。

弁護士が提案する「サロンを守るための規約」作成のポイント
当事務所では、サロン向けの利用規約作成・チェックにおいて、以下の3点を重視しています。
- サロン独自の施術リスクに合わせた「完全オーダーメイド」の文言
- 消費者契約法などの関連法規に抵触しない「法的有効性」の確保
- お客様との信頼関係を損なわない「分かりやすい言葉」での表現
市販のテンプレートは汎用性が高い反面、個別のサロンの「急所」を守ってはくれません。
弁護士が介入することで、貴店のサービス特有のリスクを洗い出し、それを的確にカバーする規約を構築することが可能です。

まとめ:トラブルを未然に防ぎ、接客に集中できる環境を
利用規約(同意書)を整えることは、決してお客様を疑うことではありません。
むしろ、万が一の際のルールを明確にしておくことで、お客様に安心して施術を受けていただくための「信頼の証」でもあります。
適切な規約という後ろ盾があることで、オーナー様やスタッフの皆様は、余計な不安を感じることなく本来の業務である接客や技術の向上に集中できるようになります。
「自分の店の規約は大丈夫だろうか」
と少しでも不安を感じられた方は、ぜひ一度、福井県大野市の弁護士法人横田秀俊法律事務所へご相談ください。
貴店の大切な宝物であるスタッフとブランドを守るため、法務のプロとして全力でサポートいたします。
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