COLUMNコラム
HP・LPのリーガルチェック-行政処分を受けないための健康診断
エステ法務 2026.01.30.
~目次~
「ホームページをリニューアルして集客を強化したい」
「新商品のランディングページ(LP)でお客様の心を掴みたい」
そう意気込んで、デザイン会社やWeb制作会社に制作を依頼される経営者様は多くいらっしゃいます。美しいデザイン、心を揺さぶるキャッチコピー。
しかし、そこに「法的な落とし穴」が潜んでいることをご存知でしょうか。
制作会社は「売れるデザイン」のプロですが、「法律」のプロではありません。知らず知らずのうちに景品表示法や薬機法に触れる表現を使ってしまい、ある日突然、行政指導や措置命令の対象となってしまうリスクがあります。
本コラムでは、Webサイト上の広告表現に潜む法的リスクと、それを未然に防ぐための「HP・LPのリーガルチェック」の重要性について、具体例を交えて解説します。

Web制作会社任せは危険?デザインと法律の「埋まらない溝」
自社のホームページ(HP)やランディングページ(LP)を開設する際、多くの経営者様は信頼できるWeb制作会社に依頼されることと思います。
プロが作る洗練されたデザインや、購買意欲をそそる巧みな文章は、ビジネスを加速させる上で必要不可欠な要素です。
しかし、ここに大きな盲点があります。
それは、Web制作会社や広告代理店の担当者が、必ずしも「広告法務」に精通しているわけではないという事実です。
彼らのミッションは、あくまで「クライアントの売上を上げること」や「コンバージョン(成約)率を高めること」にあります。そのため、どうしても「より強い言葉」「より効果を強調する表現」を選びがちになります。
例えば、「誰でも絶対に痩せる」「業界唯一の永久保証」「100%の効果」といった言葉は、マーケティングの視点から見れば非常に魅力的です。
しかし、法的な視点、特に消費者庁が管轄する「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」や、医療・美容に関する「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」、さらには「医療法」の視点から見ると、これらは即座に違法と判断される可能性が高い危険な表現です。
経営者様が「プロに任せているから大丈夫」と安心している間に、自社のサイトが「違法広告の温床」になっているケースは決して珍しくありません。
Web制作の契約書をよく見ると、「納品後の法的責任は負わない」といった免責条項が含まれていることが一般的です。
つまり、いざ行政処分を受けた際に責任を問われるのは、制作会社ではなく、広告主である「あなた自身(あなたの会社)」なのです。
デザインの美しさと、法的な安全性は別物です。
まずはこの認識を持つことが、リスク管理の第一歩となります。


そのキャッチコピーはレッドカード?「断定的判断」の提供禁止
では、具体的にどのような表現が法的に問題となるのでしょうか。
最も代表的かつリスクが高いのが、「断定的判断の提供」と呼ばれるものです。
これは、将来の不確実な事項について、あたかも確実であるかのように告げ、消費者を誤認させる行為を指します。消費者契約法や景品表示法の観点から、厳しく規制されています。
例えば、エステサロンや美容クリニック、あるいは健康食品のLPなどで、以下のような表現を見たことはないでしょうか。
「施術を受ければ、必ず痩せます」
「このサプリで、二度とリバウンドしません」
「100%生えてくる発毛技術」
「絶対に損はさせません」
これらの表現に共通しているのは、「絶対」「確実」「100%」といった、例外を認めない強い言葉が使われている点です。
しかし、科学的・医学的な見地から言えば、人体の反応には個人差があり、どのような施術や商品であっても「100%の効果」を保証することは不可能です。にもかかわらず、あたかも誰にでも確実に効果が出ると信じ込ませるような表現は、消費者の合理的な判断を阻害する「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当する可能性が極めて高くなります。
また、「業界No.1」「地域最大級」といった最上級表現を使用する場合も注意が必要です。これらを記載するためには、客観的な調査に基づいた合理的な根拠(エビデンス)が必要です。
「なんとなく自社が一番だと思っている」や「近隣に競合がいないから」といった主観的な理由でNo.1を名乗ることは、虚偽表示として行政処分の対象となります。
最近では、AI技術の発達により、文章作成をAIに任せるケースも増えていますが、AIは過去のデータを元に「それっぽい」文章を作ることは得意でも、その表現が現在の日本の法規制に適合しているかどうかの厳密な判断まではしてくれません。
最終的に人間の目、それも法律の専門家の目によるチェックが不可欠なのです。


「個人の感想です」は免罪符にならない!体験談と医師推薦の落とし穴
次に見落としがちなのが、「お客様の声(体験談)」や「医師・専門家の推薦」に関するルールです。
よくある手法として、驚異的なビフォー・アフター写真や、「わずか1ヶ月で−10kg達成!」といった極端な成功事例を掲載し、その注釈として小さな文字で「※個人の感想であり、効果を保証するものではありません」と記載するケースがあります。これは「打ち消し表示」と呼ばれます。
かつては、この一文を入れておけばある程度許容される風潮がありましたが、現在の広告規制においては、この「打ち消し表示」は万能の免罪符ではありません。
消費者庁は、「打ち消し表示」について非常に厳しいガイドラインを定めています。
もし、体験談として掲載されている効果が、一般的な利用者の平均的な効果と大きくかけ離れている場合、いくら「個人の感想です」と注記していても、消費者が「自分も同じような効果が得られる」と誤認するような表示であれば、それは景品表示法違反(優良誤認)となります。
例外的な成功例ばかりを強調し、それが一般的であるかのように見せる手法は、現在では通用しません。掲載する場合は、その体験談が統計的に見て偏りのないものであることを証明する「合理的な根拠」を用意しておく必要があります。
また、「医師の推薦」や「監修」についても注意が必要です。
「医師が認めた」「ドクター推奨」という言葉は、消費者に強い安心感を与えます。
しかし、その推薦の実態が伴っていない場合、例えば、名前を貸しているだけで実際には商品を監修していない場合や、医師の専門外の分野での推薦である場合は、不当表示とみなされるリスクがあります。
特に医療機関(クリニック等)の広告においては、医療法により「体験談の掲載」自体が原則として禁止されています(医療広告ガイドライン)。
エステサロンとクリニックでは適用される法律が異なるため、他社のサイトを真似して作った結果、自社の業態では違法だったというケースも後を絶ちません。

違反した場合の代償-「措置命令」と「課徴金」の恐怖
もし、HPやLPの表記が景品表示法違反と認定された場合、どのようなペナルティが待っているのでしょうか。
「注意されて修正すれば終わり」と考えているなら、それは大きな間違いです。
まず、消費者庁や都道府県から「措置命令」が出されます。
これは、違法な表示を直ちにやめることだけでなく、「この広告は法律違反でした」という事実を日刊紙などのマスメディアに掲載し、消費者に周知徹底することを命じるものです。
これを「社告」といいます。 社名入りで「法律違反をしていました」と新聞に掲載されれば、企業のブランドイメージは失墜し、信用は地に落ちます。これまで築き上げてきた顧客との信頼関係が一瞬で崩壊するのです。
さらに恐ろしいのが「課徴金納付命令」です。
不当表示を行っていた期間(最大3年間)の対象商品・サービスの売上額に対し、3%の金額を国に納めなければなりません。
例えば、そのLP経由で年間1億円の売上があった場合、300万円の課徴金が科されます。
もし3年間続いていれば、900万円です。これは罰金のようなものであり、経費として処理することもできません。中小企業にとっては、経営の根幹を揺るがすほどのダメージとなり得ます。
また、近年では適格消費者団体による「差止請求」も活発化しています。
行政だけでなく、消費者団体からも訴訟を起こされるリスクがあるのです。
さらに、SNSが普及した現代では、一度炎上してしまえば、「詐欺まがいの広告を出している企業」というデジタルタトゥーが半永久的に残ることになります。
これらのリスクを考えれば、制作段階でリーガルチェックを行うコストは、将来発生しうる損害に比べて極めて低い「保険」であると言えます。

スポット依頼か、顧問契約か-継続的なリーガルチェックのメリット
HPやLPのリーガルチェックは、弁護士にスポット(単発)で依頼することも可能です。
新しいキャンペーンを始める際や、サイトをリニューアルするタイミングで、都度チェックを受けるだけでも、リスクは大幅に軽減されます。
しかし、ビジネスのスピード感を落とさず、より強固な守りを固めるためには、「顧問契約」の範囲内で継続的にチェックを行うことを強くお勧めします。
なぜなら、広告表現の規制は「生き物」だからです。
景品表示法や薬機法の解釈は、行政の運用方針や新たなガイドラインの策定によって常に変化しています。昨日はセーフだった表現が、今日はアウトになることも珍しくありません。
また、2023年10月からは「ステルスマーケティング(ステマ)規制」も導入されました。
このように刻々と変わる法規制を、経営者様がすべて把握し続けるのは現実的ではありません。
顧問弁護士がいれば、自社のビジネスモデルや商品特性を深く理解した上で、文脈に沿った的確なアドバイスが可能になります。
「この表現はダメです」と指摘するだけでなく、「この表現なら法的に問題なく、かつ商品の魅力も伝わります」という代替案の提案までスムーズに行えるのが強みです。
また、万が一行政から調査が入った場合でも、顧問弁護士がいれば、初期段階から適切な対応が可能となり、処分を回避したり、軽減したりするための交渉を有利に進めることができます。
HP・LPのリーガルチェックは、企業が健全に成長するための「健康診断」です。
病気になってから治療するのではなく、病気にならないための予防を行う。
大切なお客様を守り、そして貴社の永続的な発展を守るために、ぜひ一度、弁護士によるWebサイトの診断をご検討ください。
当事務所では、広告法務に精通した弁護士が、貴社のHP・LPを隅々までチェックし、リスクのない、かつ訴求力のある表現への改善をサポートいたします。

