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ビフォー・アフター写真は掲載OK?NG?広告規制の最新ルール
エステ法務 2026.01.26. #エステサロン経営 #エステ法務 #特定商取引法 #美容サロン法務 #美容広告チェック
~目次~
Instagramや美容系予約サイトなど、美容サロンの集客において「写真」は命です。
特にお客様がもっとも関心を寄せるのが、施術による変化を一目で伝える「ビフォー・アフター写真」でしょう。
しかし、競合他社のSNSを見ていると、「これ、明らかに加工しているのでは?」と思うような劇的な変化の写真や、「絶対に痩せる」といった強い言葉が並んでいるのを目にすることはありませんか?
「みんなやっているから大丈夫だろう」
「少し肌を明るくするくらいなら許されるはず」
もし、あなたがそう考えて、安易に画像を編集したり、根拠のあやふやな宣伝文句を掲載したりしているなら、それは今すぐ見直すべき危険信号です。
美容業界に対する広告規制は、年々厳格化しています。「景品表示法(景表法)」や「医療法」、「薬機法」といった法律が複雑に絡み合い、知らず知らずのうちに法律違反を犯しているケースが後を絶ちません。違反が発覚すれば、行政処分による氏名公表や課徴金の納付命令、さらには「適格消費者団体」からの差止請求など、サロンの存続に関わる重大なダメージを受けることになります。
本コラムでは、多くのサロンオーナー様が悩みやすい「ビフォー・アフター写真の掲載ルール」を中心に、広告規制の境界線や、法的リスクを回避するための正しい知識について、弁護士が詳しく解説します。

美容サロンが直面する「景品表示法」の壁
美容サロンの広告において、もっとも注意しなければならない法律が「不当景品類及び不当表示防止法」、通称「景品表示法(景表法)」です。
この法律は、一般消費者が実際よりも著しく優良であると誤認するような表示や、実際よりも著しく有利であると誤認するような表示を禁止し、消費者が適正に商品やサービスを選べる環境を守ることを目的としています。
サロン経営において特に問題となりやすいのが、以下の2つの不当表示です。
(1)優良誤認表示 サービスの内容や品質が、実際のものよりも著しく優良であると示したり、事実に反して競合他社よりも著しく優良であると示したりすることです。
例えば、実際には食事制限や運動指導を併用して痩せた事例であるにもかかわらず、あたかも「当サロンの施術だけで痩せた」かのように見せるビフォー・アフター写真は、この優良誤認表示に該当する可能性が極めて高くなります。
(2)有利誤認表示 価格や取引条件が、実際よりも著しく有利であると誤認させる表示です。
「今だけキャンペーン価格」と表示しながら、実際には常にその価格で提供している場合(二重価格表示)や、「初回無料」と大きく打ち出しながら、実際には高額なコース契約が必須条件である場合などがこれに当たります。
多くのオーナー様は、「嘘をつくつもりはない」と考えていらっしゃいます。
しかし、お客様に「よく見せたい」という気持ちから行ったちょっとした画像の加工や、言葉の誇張が、法的には「消費者を騙す行為」とみなされてしまうのです。

ビフォー・アフター写真が「違反」になる3つの基準
では、具体的にどのようなビフォー・アフター写真がNGとなるのでしょうか。
消費者庁のガイドラインや過去の事例に基づくと、以下の3つのポイントが判断基準となります。
(1)写真の加工・修正 もっとも明確な違反は、画像の加工です。
施術後の写真をアプリで細く加工する、シミを消す、肌のトーンを極端に上げる、といった行為は論外です。また、意図的な加工でなくとも、撮影時の「条件」を変えることも問題視されます。
・ビフォーは暗い部屋で、アフターは照明を当てて撮影する
・ビフォーは猫背で、アフターは背筋を伸ばして撮影する
・ビフォーは無表情で、アフターは笑顔で撮影する
これらは、施術の効果ではなく、撮影環境の違いによって変化が生じたように見せかけているため、優良誤認表示とみなされるリスクがあります。
写真は「同一の条件(場所、照明、角度、距離)」で撮影されたものでなければなりません。
(2)稀な成功事例の強調 100人中1人しか成功しなかった劇的な変化の写真を掲載し、あたかも「誰でもこのようになれる」かのように見せることも問題です。
人間には個人差があります。「たまたま上手くいった事例」のみを強調することは、消費者に過度な期待を抱かせ、誤認させる行為となります。掲載する場合は、それが平均的な結果なのか、特殊な事例なのかを明確にする必要がありますが、後述する通り、単なる注釈だけでは責任を逃れられません。
(3)期間や回数の明示がない 「たった1回でこの変化!」と謳いながら、実際には10回施術した後の写真を使用することは虚偽表示です。
ビフォー・アフター写真を掲載する際は、
・施術を実施した時期
・施術の回数
・施術にかかった期間
・かかった費用の総額
などの情報を、写真とセットで、消費者が容易に認識できる場所に明記する必要があります。
「※写真はイメージです」といった小さな文字でごまかすことは許されません。


「個人の感想です」という打ち消し表示は通用しない
よく通販番組やウェブ広告で、「※個人の感想であり、効果を保証するものではありません」という小さな注意書き(打ち消し表示)を見かけます。
多くのサロンオーナー様が、この一文を入れておけば、どんなに強い表現を使っても大丈夫だと誤解されています。
しかし、消費者庁は「打ち消し表示」に対して非常に厳しい見解を示しています。 打ち消し表示が有効と認められるのは、消費者がその表示を明確に認識し、かつ、強調された宣伝文句(ビフォー・アフター写真など)の内容と、実際の効果との乖離を正しく理解できる場合に限られます。
つまり、画面の大部分を使って劇的なビフォー・アフター写真を見せつけ、「みるみる痩せる!」と強調しておきながら、隅の方に小さく「効果には個人差があります」と書いても、消費者の誤認を打ち消す効果はないと判断されるのです。
過去の事例でも、打ち消し表示があることを理由に処分を免れたケースはほとんどありません。「書いてあるから大丈夫」という認識は捨ててください。

提出できなければ即アウト?「不実証広告規制」の恐ろしさ
景品表示法には、事業者にとって非常に厳しい「不実証広告規制」というルールがあります。
これは、優良誤認表示の疑いがある広告について、消費者庁が事業者に対し「その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」の提出を求めた場合、事業者は「15日以内」に提出しなければならないというものです。
もし、この期間内に資料を提出できなかった場合、あるいは提出した資料が合理的な根拠として認められなかった場合、その広告は問答無用で「不当表示」とみなされます。
ここで求められる「合理的な根拠」とは、単なる体験談やアンケート結果ではありません。客観的に実証された試験結果や、専門家・専門機関による調査結果など、第三者が見ても納得できる科学的・統計的なデータが必要です。
「お客様が喜んでいるから」
「スタッフも効果を実感しているから」
といった主観的な理由は、根拠として認められません。
一般的な小規模サロンが、15日以内にこれだけのデータを揃えることは事実上不可能です。
つまり、広告を出す前の段階で、すでに確実な根拠(エビデンス)を持っていなければ、調査が入った時点で詰んでしまうのです。

「永久」「治る」はNG!エステサロンと医療機関の決定的な違い
景品表示法と並んで注意が必要なのが「医師法」や「医療法」に関連する規制です。
エステサロンやリラクゼーションサロンは、医療機関ではありません。そのため、医師や看護師しか行えない「医行為」を連想させる表現や、治療効果を謳うことは固く禁じられています。
特に脱毛サロンやHIFU(ハイフ)などの施術において、以下のようなNGワードを使用していないか確認してください。
【使用できない言葉の例】
・「永久脱毛」
・「治療」「治る」「完治」
・「医学的根拠に基づいた」
・「細胞を破壊する」
・「ニキビが治る」「シミが消える」
「永久脱毛」という言葉は、医療機関(クリニック)のレーザー脱毛などでしか使用が許されていません。
エステサロンの光脱毛で「永久」を謳えば、それは虚偽であり、かつ医師法違反の疑いも生じます。
また、「ニキビケア」や「肌荒れ予防」といった表現はギリギリ許容される場合がありますが、「ニキビを治す」と言い切ってしまうと医療行為の標榜となります。
お客様は「効果」を求めてサロンを探しますが、サロン側は「効果」を約束してはいけません。このジレンマの中で、法律の範囲内で魅力を伝える表現を工夫する必要があります。

行政だけではない!「適格消費者団体」からの監視とリスク
広告規制のリスクは、消費者庁や都道府県などの行政機関による処分だけではありません。
近年、存在感を増しているのが「適格消費者団体」です。
適格消費者団体とは、内閣総理大臣の認定を受け、不特定多数の消費者の利益を守るために、事業者に対して不当な行為(不当な広告や契約条項など)の差止めを請求できる権限を持った民間団体です。
行政の調査は動き出すまでに時間がかかることがありますが、適格消費者団体は日常的に市場を監視しており、問題のある広告を見つけると、事業者に対して直接「申入書(お問い合わせ)」を送付します。
「貴社のホームページにある〇〇という表現は、景品表示法に違反する疑いがあります。根拠を示してください。示せないなら削除してください」 といった内容の書面が、ある日突然、弁護士事務所や団体から届くのです。
これに対応せずに無視したり、不誠実な回答をしたりすると、公表されたり、最終的には裁判(差止請求訴訟)を起こされたりする可能性があります。
実際に、多くの美容サロンや健康食品会社が、適格消費者団体からの指摘を受けて、広告の修正や削除に追い込まれています。

サロンを守るために今すぐできる予防法務
ここまで解説してきた通り、美容サロンの広告は、景表法、医師法、薬機法など、数多くの法的地雷原の上に成り立っています。
「集客したい」という一心で攻めた広告を出した結果、行政処分を受けたり、ネット上で炎上して信用を失ったりしては、元も子もありません。
ご自身のサロンを守るために、以下の対策を徹底してください。
・掲載する写真は、同一条件で撮影し、加工修正は一切行わない。
・ビフォー・アフター写真には、必ず施術内容、回数、期間、費用を明記する。
・「絶対」「100%」「永久」「治る」といった断定的な言葉や医療用語を避ける。
・根拠(エビデンス)のない効果効能を謳わない。
・他店の真似をするのではなく、自社の広告が法律に適合しているかを常にチェックする。
しかし、どの表現がセーフで、どれがアウトなのか、その境界線は非常に曖昧であり、法改正や最新のガイドラインによって常に変化しています。現場のオーナー様だけで判断するのは限界があるでしょう。
弁護士法人横田秀俊法律事務所では、美容業界特有のトラブルや広告規制に精通した弁護士が、サロン様のホームページやSNS広告のリーガルチェックを行っております。
「この写真は載せても大丈夫か?」
「このキャッチコピーは法的に問題ないか?」
といった疑問に対し、最新の法規制に基づいた具体的なアドバイスを提供いたします。
長く愛されるサロンであり続けるためには、技術だけでなく、法的な信頼性も不可欠です。
不安な点がございましたら、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。

