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内部通報窓口の設置義務化と、社外窓口としての顧問弁護士の役割-不正の芽を摘み、会社を守るための「安全装置」

企業法務 2026.01.12. #企業法務

内部通報窓口の設置義務化と、社外窓口としての顧問弁護士の役割-不正の芽を摘み、会社を守るための「安全装置」

「うちは従業員同士の仲もいいし、風通しの良い会社だから大丈夫だ」

「何か問題があれば、すぐに私(社長)の耳に入ってくるはずだ」

 経営者の皆様、もしそのように確信されているとしたら、少し危険かもしれません。

 横領、データ改ざん、ハラスメント、無断残業の隠蔽…。企業の存続を揺るがす重大な不祥事は、経営陣が最も信頼している「現場」の深層で、静かに、そして誰にも気づかれないように進行します。 「まさかあの人が」

「まさかうちの会社で」

  不祥事が発覚した際、多くの経営者が口にする言葉です。しかし、発覚した時にはすでにマスコミ報道やSNSでの炎上により、取り返しのつかない事態になっていることがほとんどです。

 こうしたリスクを未然に防ぎ、自浄作用のある強い組織を作るための切り札が、法改正により重要性が増した【内部通報制度】です。

 本コラムでは、制度の仕組みと義務化のポイント、そして機能不全に陥らせないための「社外窓口(弁護士)」の決定的な役割について解説します。

自社は風通しの良い会社だという思い込みは危険

改正公益通報者保護法が施行-あなたの会社は対応できていますか?

 近年、大手企業のデータ偽装や品質不正などが相次いで発覚したことを受け、【公益通報者保護法】が改正され、2022年6月から施行されています。

 この改正により、企業には内部通報に適切に対応するための体制整備(窓口の設置、調査、是正措置、通報者の不利益取り扱いの禁止など)が強く求められるようになりました。

 具体的には、従業員数(アルバイト・パート含む)が301人以上の企業に対しては、これらの体制整備が【法的義務】となりました。

 一方で、従業員数が300人以下の企業については、現段階では【努力義務】とされています。

 この「努力義務」という言葉を聞いて、「なんだ、うちは300人以下の地方の中小企業だから、まだやらなくていいんだ」と胸をなでおろした経営者様がいらっしゃるかもしれません。しかし、法務のプロとして申し上げれば、それは非常に危険な判断と言わざるを得ません。

改正公益通報者保護法に対応できていますか? 従業員数301人以上は法的義務 300人以下は努力義務

「努力義務」だからやらなくていい?中小企業こそ背負うリスク

 なぜ、中小企業でも内部通報制度の整備が急務なのでしょうか。 理由は大きく2つあります。

 一つは、【取引先からの要請】です。

 今や大企業は、自社だけでなくサプライチェーン全体でのコンプライアンス(法令順守)を重視しています。取引基本契約書の中に「コンプライアンス体制の整備」が盛り込まれたり、取引開始前の監査で「内部通報制度の有無」をチェックされたりすることが当たり前になっています。

 つまり、制度がない会社は、ビジネスの土俵にすら上がれなくなるリスクがあるのです。

 もう一つは、【一発退場】のリスクです。

 大企業であれば、一つの不祥事が起きても体力でカバーできるかもしれません。しかし、中小企業の場合、一人の従業員による横領や、一つのハラスメント訴訟が、そのまま倒産に直結するほどのダメージになり得ます。

 リスクに対する耐久力が低い中小企業こそ、早期発見のためのセンサー(通報制度)が必要不可欠なのです。

「努力義務」の中小企業だからこそ背負うリスク 取引先からの要請 一発退場のリスク

社長の耳には届かない?現場で起きている「見えない不正」の実態

 そもそも、なぜ内部通報制度が必要なのでしょうか。

 「おかしなことがあれば上司に報告・連絡・相談(ホウレンソウ)すればいい」というこれまでの常識は通用しないのでしょうか。

 残念ながら、不正の性質上、通常の指揮命令系統では情報が上がってきません。

 ・長年経理を任せているベテラン社員が、架空の領収書で着服している

 ・「営業のエース」と呼ばれる部長が、パワハラで部下を精神的に追い詰めている

 ・工場長が、納期を守るために安全基準を無視した操業を指示している

 これらは、経営陣からは「成果を出している信頼できる社員」に見えているケースが多いため、発見が遅れます。

 最も事情を知っているのは、その場にいる部下や同僚です。しかし、彼らが勇気を出して直属の上司に相談しようとしても、その上司自身が加害者であったり、加害者と仲が良かったりすれば、握りつぶされて終わりです。

 経営者の耳に届くころには、すべてが手遅れになっているのです。

現場で起きている「見えない不正」の実態

なぜ「社内窓口」は機能しないのか-従業員を支配する心理的ハードル

 多くの企業では、とりあえず総務部や人事部に「コンプライアンス相談窓口」を設置しています。しかし、箱を作っただけで「一件も相談が来ない」というケースが非常に多いのが実情です。

 これは、会社が健全だからでしょうか? 恐らく違います。従業員が【怖くて通報できない】のです。

 従業員の心理になって考えてみてください。

「総務課長に相談したら、その日のうちに加害者である上司に筒抜けになるのではないか」

「もし通報者だとバレたら、『告げ口をした裏切り者』として左遷されたり、いじめられたりするのではないか(報復の懸念)」

 社内の人間が窓口を担当している限り、情報の秘匿性に対する疑念を完全に払拭することは困難です。特に、地方の企業や中小企業では人間関係が濃密であるため、「誰が言ったかすぐ分かる」という恐怖が、従業員の口を重く閉ざさせてしまいます。

社内窓口が機能しない要因 情報漏洩への不安 報復への懸念 根本的な課題

弁護士を「社外窓口」にするメリット①:圧倒的な心理的安全性と秘密保持

 そこで推奨されるのが、会社から独立した第三者である顧問弁護士などを【社外窓口】として設置する方法です。

 弁護士を窓口にする最大のメリットは、【守秘義務】による圧倒的な心理的安全性です。

 従業員に対して「弁護士には法律上の厳しい守秘義務がある。通報者の氏名を会社に伏せたまま、事実確認だけを進めることも可能だ」とアナウンスすることで、報復を恐れる従業員が勇気を出して声を上げやすくなります。

 「会社の人には知られたくないが、弁護士になら話せる」 この安心感が、埋もれていたリスク情報を吸い上げるための鍵となります。

弁護士を社外窓口にするメリット① 圧倒的な心理的安全性と秘密保持

弁護士を「社外窓口」にするメリット②:プロによる「交通整理」と適正な調査

 社内窓口の担当者が疲弊してしまう原因の一つに、「通報の質のバラつき」があります。

「上司の言い方が気に入らない」

「給湯室が汚い」

 といった単なる愚痴や不満、あるいは事実無根の個人的な誹謗中傷までが寄せられ、どれが本当の「公益通報」なのか判断がつかないという悩みです。

 弁護士が窓口となることで、これらの情報の【初期スクリーニング(交通整理)】が可能になります。

  法律のプロとして、通報内容を精査し、「これは法的に調査すべき不正事案だ」「これは職場のマネジメントの問題だ」「これは単なる個人の不満だ」と切り分け、会社が優先して対応すべき事案を的確に報告します。

 また、実際に調査を行う際も、第三者の立場から公正中立なヒアリングを行うため、従業員の納得感も高まります。

弁護士を社外窓口にするメリット② プロによる交通整理と適正な調査

通報者を守ることは、結果として「会社を守る」こと(リーク防止)

 経営者の中には、「従業員からの通報なんて、会社の恥をさらすようで嫌だ」「密告社会にしたくない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、その認識は改める必要があります。

 もし、社内に信頼できる通報窓口がなかったら、追い詰められた従業員はどうするでしょうか? 彼らは、外部に助けを求めます。 具体的には、労働基準監督署などの役所への駆け込み、週刊誌などのマスコミへのリーク、そしてX(旧Twitter)などの【SNSへの投稿】です。

「この会社は不正をしている」

「パワハラが横行している」

 といった情報が、証拠写真とともにネットに拡散されたら、それを消すことはほぼ不可能です。炎上により、またたく間に社会的信用を失い、採用活動も停止し、銀行取引にも影響が出るでしょう。

 内部通報制度とは、こうした情報が外部に漏れる前に、社内で吸い上げ、自らの手で解決するチャンスを得るための【安全装置】なのです。

 通報者(公益通報者)を守ることは、不祥事の芽を摘み取り、会社そのものを守ることに直結します。

通報者を守ることは、結果として「会社を守る」こと

実効性のある内部通報制度の構築は、弁護士法人横田秀俊法律事務所へ

 単に「何かあったら弁護士へ」と伝えるだけでは不十分です。

「どのようなルートで通報を受け付けるか」

「匿名通報を認めるか」

「調査は誰が行うか」

「通報者の秘密はどう守るか」

 といった詳細なルールを定めた【内部通報規程】を策定し、従業員に周知徹底する必要があります。

内部通報制度は会社を守る「安全装置」

 弁護士法人横田秀俊法律事務所では、企業の規模や実情に合わせた内部通報制度の構築支援を行っております。

 また、当事務所の弁護士が【社外通報窓口】として直接通報を受け付けるサービスも提供可能です。 「形だけ」ではない、本当に機能するコンプライアンス体制を作りたい経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。

内部通報制度の構築支援 社外通報窓口サービス
弁護士法人横田秀俊法律事務所
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