COLUMNコラム
債権回収は完全な「スピード勝負」-裁判を待たずに財産をロックする「仮差押え」の決断
~目次~
「取引先からの入金が遅れている」
「担当者と連絡がつかなくなってきた」
「業界内で、あの会社の資金繰りが危ないという噂を聞いた」
経営者の皆様、もし取引先についてこのような不穏な予兆を感じたら、一刻の猶予もありません。債権回収の実務において、時間は最も残酷な敵です。
「長年の付き合いもあるし、とりあえず話し合いで解決したい」
「裁判をして白黒はっきりさせれば、いつかはお金が戻ってくるだろう」
そう考えて悠長に構えている間に、相手が倒産したり、めぼしい財産を隠してしまったりしたら、回収は絶望的になります。
本コラムでは、時間がかかる通常の裁判(訴訟)を待たずに、相手の財産を確保する強力な法的手段【仮差押え(かりさしおさえ)】について、その仕組みと有効性を徹底解説します。

裁判をしている間に「資産隠し」?訴訟が抱える致命的なタイムラグ
未払いトラブルが発生した際、多くの経営者の方がまず思い浮かべるのが「裁判(訴訟)を起こして、勝訴判決をもらう」ことだと思います。
確かに、判決文は裁判所による公的なお墨付きであり、強制執行(差し押さえ)をするために必要な書類(債務名義)を得るための王道ルートです。
しかし、通常の裁判には、債権回収において【時間がかかりすぎる】という致命的な弱点があります。
訴状を提出してから第1回目の裁判が開かれるまで約1ヶ月、そこからお互いの主張を戦わせ、証拠を出し合い、判決が出るまでには、早くても半年、長ければ1年以上かかることも珍しくありません。
経営状態が危ぶまれている相手企業が、その長い期間、じっと待っていてくれるでしょうか?
答えは「否」です
裁判で争っている間に、相手企業の銀行口座から現金が引き出されたり、不動産が親族や第三者に名義変更されたり、あるいは破産手続きを開始されたりするリスクが極めて高いのです。
いくら裁判で「1000万円支払え」という判決を勝ち取っても、その判決が出た日に相手の会社が空っぽになっていれば、1円も回収することはできません。

奇襲攻撃で財産を完全ロック!「仮差押え」という最強の武器
そこで、裁判という長いプロセスの【前】に、緊急で行うべき手続きが《民事保全》、いわゆる【仮差押え】です。
仮差押えとは、その名の通り、判決が出る前に「仮に」相手の財産を押さえてしまい、勝手に処分できないように凍結(ロック)する手続きです。
この手続きの最大の特徴にして最大の武器は、【密行性(みっこうせい)】にあります。
通常の裁判は、相手に訴状が送られ「あなたを訴えましたよ」と通知されてから始まります。つまり、相手に防御の準備や資産隠しの時間を与えてしまいます。
一方、仮差押えは、相手に知られないように水面下で裁判所に申し立てを行います。裁判官との面接を経て決定が出れば、相手に一切予告することなく、ある日突然、銀行口座や不動産、取引先への売掛金が凍結されます。
相手からすれば、まさに「寝耳に水」。資産を隠したり移動させたりする隙を一切与えずに確保できるため、債権回収において極めて強力な奇襲攻撃となります。

相手にとって最大のダメージとなる「狙い目」の財産とは
では、仮差押えを行うとして、具体的に相手のどのような財産をターゲットにすべきでしょうか。
ターゲットの選定が、回収の成否と相手に与えるプレッシャーの大きさを左右します。
(1) 不動産(土地・建物)
自社ビルや工場、社長の自宅などの不動産は、金額が大きいため有力な候補です。仮差押えの登記が入れば、勝手に売却することができなくなります。
しかし、経営難の企業の場合、すでに銀行の抵当権が限度額いっぱいまでついている(オーバーローン状態)ことが多く、いざ競売にかけても、配当が回ってこないケースも少なくありません。事前の登記簿調査が必須です。
(2) 銀行預金
最も手っ取り早いのが銀行口座の凍結です。口座が凍結されると相手は事業資金を動かせなくなるため、強烈なダメージを与えることができます。
ただし、「〇〇銀行の××支店」まで特定する必要がある上、タイミングによっては残高がほとんどない(給料支払い直後など)場合もあり、空振りのリスクも伴います。
(3) 第三者への売掛金(これが最も効果的)
実務上、相手企業に最も強烈なプレッシャーを与え、早期解決につながりやすいのがこれです。相手企業が、別の取引先(第三者)に対して持っている「売掛金」を差し押さえるのです。
これにより、裁判所から相手の取引先に「仮差押え命令」が届くことになります。
するとどうなるか。
相手企業は、予定していた入金が止まり資金繰りがショートするだけでなく、大切な取引先に「あそこは経営が危ないらしい」「差し押さえを受けた」という事実が知れ渡り、社会的信用を完全に失います。
この最悪の事態を避けるために(あるいは取引先に知られた直後に信用不安を解消するために)、相手企業が「お金を何とか工面して払うから、どうか仮差押えを取り下げてほしい」と泣きついてくるケースが非常に多いのです。



勝訴判決=回収成功ではない!「無い袖は振れない」という冷徹な現実
残酷なようですが、法律の世界には《無い袖は振れない》という大原則があります。
たとえ相手が悪くても、たとえ裁判所が支払い命令を出しても、相手に資産がなければ、回収は物理的に不可能なのです。
これを「回収不能(貸し倒れ)」と呼びます。
弁護士として最も歯がゆいのは、ご相談に来られた時点で既に相手の資産が散逸しており、「あと1ヶ月早く仮差押えをしていれば回収できたのに…」というケースです。
勝訴判決という「紙切れ」を手に入れることが目的ではありません。貴社の口座に現金を取り戻すことが目的のはずです。
そのためには、「裁判に勝つこと」よりも「資産を逃がさないこと(保全)」に全力を注ぐ必要があります。

仮差押えのハードル-「疎明」と「保証金」の準備
非常に強力な仮差押えですが、誰でも簡単にできるわけではありません。
相手の言い分を聞かずに財産を凍結するわけですから、裁判所も慎重になります。
申し立てには、以下の2点が必要です。
1.被保全権利の疎明:「確かに債権が存在している」ことを、契約書や請求書、未払いの経緯書などで、裁判官に一目で分かるように説明(疎明)すること。
2.保証金の納付:万が一、こちらの言い分が間違っていて相手に損害を与えた場合に備え、裁判所が定めた金額(請求額の20〜30%程度が相場)を法務局に供託(預け入れ)すること。
特に「疎明」の資料作りはスピードと正確性が求められます。ここが甘いと裁判所は仮差押えを認めてくれません。

1日の遅れが命取り-日頃の顧問弁護士との連携が勝率を決める
このように、仮差押えを成功させるためには、短期間で膨大な資料を作成し、さらに相手の財産(銀行口座や主要な取引先)を特定する必要があります。
トラブルになってから「相手の取引先はどこだっけ?」「契約書はどこに行った?」と探しているようでは、手遅れになる可能性が高いのです。
普段から顧問弁護士と連携し、「取引先の動きが少しおかしい」という段階で相談できていれば、相手の信用調査を行ったり、契約書を見直したり、いざという時の仮差押えの準備を水面下で進めたりすることができます。
債権回収は、まさに情報戦であり、スピード勝負です。

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