COLUMNコラム
契約書のリーガルチェック-「損害賠償」「合意管轄」条項の重要性
~目次~
大手企業との新規取引が決まった経営者の皆様、おめでとうございます。会社の売上アップや知名度向上につながる大きなチャンスに、胸を躍らせていることと思います。
しかし、その一方で、相手方から送られてきた分厚い「取引基本契約書」を前にして、不安を感じてはいないでしょうか?
「内容が難しくてよく分からないが、相手は大企業だし、変な契約書ではないだろう」
「修正をお願いしたら、機嫌を損ねて取引がなくなるかもしれない」
そう考えて、中身をよく確認せずに判子を押そうとしているなら、少し待ってください。
その契約書には、貴社の経営を揺るがす【爆弾】が埋め込まれているかもしれません。
本コラムでは、契約書チェック(リーガルチェック)がいかに重要か、特に中小企業が不利になりやすいポイントに絞って解説します。

相手の提示する契約書は「100%相手のためのもの」
まず大前提として知っておいていただきたいことがあります。
それは、相手方から送られてきた契約書のひな形(テンプレート)は、
【100%相手に有利に作られている】
ということです。
相手が大企業であればあるほど、優秀な法務部や顧問弁護士がバックについています。彼らの仕事は、自社のリスクを極限までゼロにし、何かあった時の責任をすべて取引先(つまり貴社)に負わせることです。
ですから、「大企業の契約書だからちゃんとしている(中立である)」というのは大きな間違いです。「ちゃんとしている」からこそ、「自社に有利で、相手に厳しい」内容になっているのです。
そのまま判子を押すということは、相手が作った土俵で、相手が決めたルールに従って戦うことを約束するようなものです。不利な条項があれば修正を求めることは、ビジネスにおける【正当な権利】であり、決して失礼なことではありません。

最も恐ろしい「損害賠償条項」-上限なき責任のリスク
数ある条項の中で、中小企業にとって最もリスクが高いのが《損害賠償》に関する条項です。
多くの契約書には、「甲または乙が契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、その損害を賠償しなければならない」といった文言が書かれています。一見、公平に見えるかもしれません。
しかし、ここで注意すべきは【賠償額の上限】が設定されているかどうかです。
例えば、貴社が納入した部品に不具合があり、相手方の工場ラインがストップしてしまったとします。
その損害額は、貴社が受け取る取引金額(例えば数十万円)をはるかに超え、数千万円、場合によっては億単位になる可能性もあります。
もし契約書に賠償額の上限(キャップ)がなければ、貴社は全額を賠償する義務を負い、最悪の場合、たった一度のミスで倒産に追い込まれることになります。
このようなリスクを避けるため、「損害賠償額は、本契約に基づき過去〇ヶ月間に支払われた委託料の総額を上限とする」といった【天井】を設ける交渉が不可欠です。


いざという時に泣きを見る「合意管轄」-なぜ地元の地方裁判所にこだわるべきか
契約書の最後の方に書かれていることが多く、見落とされがちなのが《合意管轄裁判所》の条項です。
よくあるのが、「本契約に関する紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」という記載です。相手の本社が東京であれば、当然のようにこう書かれています。
これをそのまま受け入れると、もしトラブルになって裁判を起こされた場合、あるいは貴社が裁判を起こしたい場合、わざわざ【東京】まで行かなければなりません。
地方の企業にとって、これは極めて不利です。
・東京までの往復交通費と宿泊費
・移動にかかる膨大な時間
・東京の裁判所に対応できる弁護士の手配(または地元の弁護士の日当)
これらのコストが重くのしかかり、「裁判をするだけで赤字になるから、泣き寝入りするしかない」という状況に追い込まれかねません。
だからこそ、管轄裁判所は「自社の本店所在地を管轄する地方裁判所」と記載してもらうよう交渉すべきです。もし相手が難色を示した場合は、せめて「被告(訴えられた側)の本店所在地を管轄する地方裁判所」とするよう粘り強く交渉する必要があります。


些細なミスで取引停止?「解除条項」の落とし穴
《契約の解除》に関する条項も要注意です。
「甲または乙が本契約のいずれかの条項に違反したときは、直ちに本契約を解除することができる」 このような【無催告解除】の条項が入っていませんか?
これを文字通り解釈すると、例えば報告書の提出が1日遅れたり、軽微な仕様違いがあったりしただけで、相手方は「契約違反だ」として、即座に取引を打ち切ることができてしまいます。
特に継続的な取引が経営の柱になる場合、一方的な即時解除は死活問題です。
ここでは、「違反を是正するよう催告(警告)したにもかかわらず、〇日以内に是正されなかった場合」に初めて解除できる、というクッションを置く修正が必要です。うっかりミスを挽回するチャンスを確保しておくことは、安定した経営のために必須の防衛策です。

修正要望は「正当な権利」-対等なパートナーであるために
「修正をお願いして、取引が白紙になったらどうしよう」と不安になるお気持ちはよく分かります。
しかし、これまでの経験上、まともな企業であれば、合理的な理由に基づく修正要望によって取引自体を断ることはほとんどありません。むしろ、契約内容をしっかり確認している企業として、信頼感が高まることもあります。
逆に、「一切の修正を認めない、嫌なら取引しない」という態度をとる相手であれば、その取引はそもそも貴社にとって危険すぎる可能性があります。
トラブルが起きた時に、誠実な対応が期待できないからです。

契約書の不安、サインする前に弁護士へ
契約書は、トラブルが起きなければただの紙切れですが、ひとたび揉め事が起きれば、会社を守る最強の盾にも、会社を滅ぼす凶器にもなります。
「少し表現を変えるだけで、リスクが回避できるか」
「この条項は業界の標準から見て妥当か」
こうした判断は、法律の専門家でなければ困難です。
弁護士法人横田秀俊法律事務所では、地元・福井県の中小企業の皆様を守るため、契約書のリーガルチェック(法的確認)を行っております。
「顧問弁護士から修正の指示があった」と言えば、相手方との角も立ちにくくなります。
判子を押してしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。
そのひと手間が、貴社の未来を守ります。
