COLUMNコラム
試用期間での本採用拒否は簡単ではない?解雇との違いを徹底解説
~目次~
採用した社員が期待通りの働きをしてくれなかったとき、「まだ試用期間中だから」という理由で簡単に雇用契約を終了できると考えていませんか?
実は、試用期間中であっても、会社側からの一方的な契約終了は法的には「解雇」の一種として扱われます。
もし、「試用期間=お試し期間だから自由にクビにできる」と安易に考えて対応してしまうと、後々、不当解雇として訴えられ、多額の解決金を支払うリスクを抱えることになります。
本コラムでは、経営者の方が誤解しやすい「試用期間中の解雇(本採用拒否)」のハードルや、通常の解雇との違い、そしてトラブルを未然に防ぐための就業規則のポイントについて、弁護士が詳しく解説します。

試用期間は「自由にお試しできる期間」ではない
多くの経営者様から、「試用期間中なら、気に入らなければ即日辞めてもらっても問題ないですよね?」というご相談をいただきます。
しかし、これは【大きな誤解】です。
法的に見ると、試用期間中の雇用契約は「解約権留保付労働契約」と呼ばれます。
これは、「当初の契約は成立しているが、会社側が適性を判断して契約をキャンセルする権利(解約権)を持っている状態」を指します。
しかし、権利があるからといって、無制限に行使できるわけではありません。
最高裁判所の判例でも、試用期間中の解雇(本採用拒否)が認められるには、【客観的に合理的な理由】があり、かつ【社会通念上相当】であると認められなければならないとされています。
つまり、単に「なんとなく社風に合わない」「社長の好みに合わない」といった主観的な理由だけでは、本採用拒否は認められない可能性が高いのです。


通常の解雇と比べた「本採用拒否」の範囲
では、試用期間中の解雇は、長く勤めている正社員の解雇と全く同じ難易度なのでしょうか?
結論から言うと、通常の解雇よりは【広い範囲で解雇の理由が認められる】傾向にあります。
試用期間はあくまで「適格性を判定する期間」であるため、通常の社員であれば解雇までは至らないような能力不足や勤務態度の問題でも、本採用拒否の理由として認められることがあります。
ただし、それでも「指導すれば改善の余地がある」場合や、「会社側が十分な教育を行っていない」場合には、解雇が無効(不当解雇)と判断されるケースが多々あります。
【会社として適切な指導や注意を行ったか】というプロセスは、試用期間中であっても極めて重要です。

本採用拒否が認められやすい具体的なケース
具体的にどのようなケースであれば、法的に正当な本採用拒否(解雇)として認められやすいのでしょうか。主な理由は以下の通りです。
◎【重要な経歴の詐称があった場合】
採用の決め手となった資格や職歴に嘘があった場合、信頼関係を維持できないため、正当な理由となり得ます。
◎【勤務態度が著しく不良な場合】
無断欠勤を繰り返す、上司の業務命令に正当な理由なく従わない、協調性が欠如しており職場の秩序を乱すといったケースです。
ただし、一度の遅刻程度では認められず、【反復・継続していること】が必要です。
◎【能力不足が著しい場合】
期待していたスキルが全くない場合などです。
しかし、新卒採用や未経験採用の場合は、会社側に教育義務があるため、能力不足を理由とするハードルは高くなります。
中途採用(即戦力採用)の場合は、求められる能力水準が高いため、比較的認められやすい傾向にあります。


「14日以内」が分かれ道?解雇予告手当の注意点
試用期間中の解雇実務において、絶対に知っておかなければならないのが【14日】という数字です。
労働基準法では、従業員を解雇する場合、原則として「30日以上前の予告」か「30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い」が義務付けられています。
しかし、特例として【試用期間に入ってから14日以内】であれば、この解雇予告や手当の支払いは不要とされています。
つまり、採用して最初の2週間以内に「明らかにこの人物は問題がある(経歴詐称や著しい勤務不良など)」と判断し、解雇通知を行えば、即時に契約を終了させることができます。
逆に言えば、試用期間中であっても【採用から14日を超えてしまった場合】は、本採用拒否をするために、通常の解雇と同様に30日前の予告か、解雇予告手当の支払いが必要になります。
「試用期間の終わり=自動的に契約終了」ではない点に十分ご注意ください。

まとめ:判断に迷ったら専門家へ相談を
試用期間満了に伴う本採用拒否は、経営者にとっては「契約のキャンセル」感覚かもしれませんが、労働者にとっては生活の糧を失う重大事であり、法的紛争に発展しやすい場面です。
「能力不足」の証拠は揃っているか? 指導記録は残っているか? 就業規則の規定は整備されているか?
これらを無視して安易に解雇を通知してしまうと、後になって地位確認請求や損害賠償請求を起こされるリスクがあります。
判断に迷われた際は、トラブルが大きくなる前に、ぜひ弁護士などの専門家へご相談ください。
企業様の就業規則のチェックから、具体的な退職勧奨の進め方まで、法的観点からサポートいたします。
