COLUMNコラム
【相続コラム】遺言書を書くなら「出口」まで考える。手続きを確実に実現する「遺言執行者」の重要性
相続問題 2025.12.13.
~目次~
ご自身の財産をどう残すか、誰に託すか。
長い時間をかけて考え抜き、ようやく遺言書を書き上げたとき、多くの方は「これで安心だ」と肩の荷が下りたような気持ちになることでしょう。
しかし、弁護士として数多くの相続案件に携わる中で、皆様に申し上げなければならない冷徹な現実があります。
それは、「遺言書を書いただけでは、何も自動的には動かない」ということです。
遺言書はあくまで「設計図」に過ぎません。その設計図通りに、実際に銀行口座を解約し、不動産の名義を書き換え、現金を分配する「現場監督」が必要になります。この重要な役割を担うのが「遺言執行者」です。
実は、せっかく立派な遺言書があっても、この執行者が指定されていないために、遺されたご家族が慣れない手続きに奔走し、疲弊してしまうケースが後を絶ちません。最悪の場合、手続きの負担が原因で親族間の関係が悪化することさえあります。
本コラムでは、遺言書の実効性を高めるための鍵となる「遺言執行者」の職務と、その役割を弁護士に依頼する大きなメリットについて解説します。

遺言書は自動実行されない。「遺言執行者」とは何か
遺言執行者とは、遺言の内容を具体的に実現(執行)するために必要な一切の行為をする権限を与えられた人物のことです。
民法でもその権限は強力に認められており、執行者が選任されている場合、相続人は遺産を勝手に処分したり、執行者の職務を妨げるような行為をしたりすることはできません。

もし、遺言書の中で執行者が指定されていない場合どうなるでしょうか。
基本的には、相続人全員が協力して手続きを行う必要があります。全員でスケジュールを合わせて銀行の窓口に行ったり、膨大な書類に全員の実印を押して印鑑証明書を提出したりしなければなりません。
ここで問題になるのが、「相続人全員の協力」というハードルです。
もし相続人の中に一人でも「俺はこの遺言の内容に納得していない」とハンコを押さない人がいたらどうなるでしょう。あるいは、相続人の一人が認知症で判断能力がない場合はどうなるでしょう。
たったそれだけのことで、銀行での払い戻しや不動産の名義変更などの手続きはすべてストップしてしまいます。執行者がいなければ、遺言書があっても「絵に描いた餅」になりかねないのです。
こうした事態を防ぐために、遺言書の中で「この遺言の執行者として、○○を指定する」と定めておくことが強く推奨されるのです。

目が回るほど大変。執行者の具体的な職務内容
では、遺言執行者は具体的に何をするのでしょうか。
「銀行に行って解約するだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、その職務は多岐にわたり、非常に事務的かつ煩雑です。
・就任の通知
まず、相続人全員に対して「私が遺言執行者に就任しました」という通知を、遺言書の写しと共に送ります。疎遠な親族がいる場合でも、住所を調べて送付しなければなりません。
・相続財産の調査と「財産目録」の作成、交付
故人の財産がどこにどれだけあるのかを確定させます。自宅内の通帳や権利証を探し出し、金融機関へ残高証明書を請求し、役所で不動産の評価証明書を取得するなどして、正確な「財産目録」を作成し、相続人全員に交付しなければなりません。これは民法上の義務であり、記載漏れなどのミスは許されません。
・預貯金の解約、払い戻し、分配
ここが最も大変な作業です。金融機関ごとに異なる複雑な手続き用紙に記入し、戸籍謄本などの束を提出して口座を解約します。その後、遺言の内容に従って各相続人の口座へ正確に送金します。銀行の窓口は平日の日中しか開いていないため、お勤めの方がこれを行うには、何度も仕事を休む必要があります。
・不動産の名義変更(相続登記)
法務局に対して、不動産の名義を被相続人から指定された相続人へ変更する申請を行います。不備があれば何度も法務局に足を運ぶことになります。
これらを、葬儀後の片付けや四十九日の法要などの準備と並行して行うことになります。
専門知識のない一般の方が、ミスなく完璧に行うのは、想像以上にハードルが高いのが現実です。


親族が執行者になると「争族」の火種になることも
「それなら、しっかり者の長男を執行者にしておこう」 そう考える方も多いですが、親族(相続人の一人)を執行者にすることにはリスクも伴います。
最大の懸念は「不公平感」と「疑心暗鬼」です。
例えば、長男が執行者として通帳や実印を預かり、財産調査をしている間、他の兄弟からはどう見えるでしょうか。
「兄さんが勝手に財産を隠しているんじゃないか」
「自分に有利なように手続きを進めているんじゃないか」
「通帳を見せてくれないのは怪しい」
といった疑念を持たれやすいのです。一度こうした不信感が芽生えると、その後の関係修復は困難になります。
また、執行者になった長男自身にとっても大きなストレスとなります。平日の昼間に何度も銀行に通い、面倒な書類を作成しているにもかかわらず、兄弟からは感謝されるどころか疑いの目を向けられる。
「なぜ自分だけがこんなに苦労しなければならないのか」と不満が爆発し、兄弟間の亀裂につながるケースは枚挙にいとまがありません。
良かれと思って指名したことが、結果として「争族」の原因を作ってしまうのです。


弁護士を執行者に指定する3つのメリット
そこで強くお勧めするのが、遺言書の作成段階で、弁護士を遺言執行者に指定しておく方法です。
これには大きく3つのメリットがあります。
●メリット1:圧倒的な「中立性」でトラブルを防ぐ
弁護士は、特定の相続人の味方ではなく、あくまで「遺言書の内容を実現する代理人」として動きます。第三者である専門家が間に入り、事務的に淡々と手続きを進めることで、相続人同士が直接お金のやり取りをする必要がなくなり、感情的な対立を未然に防ぐことができます。
「弁護士がやっているなら間違いないだろう」という安心感が、親族間の無用な争いを沈静化させます。
●メリット2:手続きが迅速かつ正確
弁護士は法律と手続きのプロフェッショナルです。戸籍の収集や財産調査の徹底はもちろん、銀行や法務局での手続きもスムーズに進みます。特に金融機関の対応は、専門家が相手だと非常に円滑に進む傾向があります。複雑な案件や、株式等の有価証券が含まれる場合でも、法的に正確な処理が可能です。
●メリット3:相続人の負担をゼロにする
ご遺族は、面倒な手続きをすべて弁護士に一任することができます。平日に仕事を休んで役所や銀行に行く必要はありませんし、難しい書類を書く必要もありません。弁護士からの完了報告を待つだけで、遺言通りの財産を受け取ることができます。
大切な方を亡くした悲しみの中で、事務手続きに追われることなく、静かに故人を偲ぶ時間を確保できることは、何よりのメリットと言えるでしょう。


「遺言作成」と「執行者指定」はセットで考えるべき
遺言書は、書いて終わりではありません。
その内容が実行されて初めて意味を持ちます。
「遺言書の作成」と「遺言執行者の指定」は、車の両輪のようなものです。どんなに立派な遺言書(車体)でも、それを実行するエンジン(執行者)が貧弱であれば、目的地(円満な相続)には辿り着けません。
また、遺言書の内容自体も、将来の執行を見据えて作成する必要があります。
「この書き方だと、銀行で手続きができない可能性がある」
「不動産の特定が曖昧だと、登記が通らない」
こうした実務上の落とし穴を熟知している弁護士だからこそ、執行の段階で躓かない、完璧な遺言書を作成することができます。

最後まで責任を持つ。それが弁護士の役割です
自分の死後、大切な家族が手続きに追われ、財産を巡って争う姿など見たくないはずです。
弁護士法人横田秀俊法律事務所では、遺言書の作成サポート(入り口)から、遺言執行者としての職務(出口)まで、一貫してサポートする体制を整えております。
私たちが作成に関与し、執行者として指定を受けていれば、万が一の時もすぐに動くことができます。ご家族は、当事務所にご連絡いただくだけで、その後の煩雑な手続きから解放されます。
「家族に苦労をかけたくない」
「確実に想いを届けたい」
とお考えの方は、ぜひ「遺言執行者」の指定も含めたトータルな相続対策をご検討ください。
あなたの想いを、私たちが責任を持って最後まで見届けます。
