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【相続コラム】「自筆」と「公正証書」徹底比較。将来のトラブルを防ぐ遺言書の選び方とは

相続問題 2025.12.11.

【相続コラム】「自筆」と「公正証書」徹底比較。将来のトラブルを防ぐ遺言書の選び方とは

「遺言書なんて、資産家が書くものでしょう?」

「うちは家族の仲が良いから、揉めることなんてない」

 相続のご相談を受ける中で、このような言葉をよく耳にします。しかし、弁護士として数多くの相続紛争(いわゆる「争族」)の現場に立ち会ってきた経験から申し上げますと、遺産分割トラブルの多くは、ごく一般的なご家庭で起きています。

 わずかな金額の差や、過去の介護の負担、生前の贈与の有無など、長年蓄積された感情のしこりが、親御様の死をきっかけに一気に噴出してしまうのです。

 こうした悲劇を未然に防ぎ、大切なご家族の絆を守るための最も有効な手段、それが「遺言書」です。

  遺言書があれば、原則としてその内容が優先されるため、遺産分割協議という、精神的にも負担の大きい話し合いを回避することができます。

 しかし、いざ遺言書を作成しようとしたとき、多くの方が直面するのが「自分で書いてもいいのか(自筆証書遺言)」「公証役場で作るべきなのか(公正証書遺言)」という選択の悩みです。

 本コラムでは、これら2つの遺言形式について、作成の手間や費用だけでなく、法的効力や死後の手続きの負担という観点から徹底的に比較・解説します。

遺言書には厳格なルールがある

 遺言書は、人の死後に財産の権利関係を変動させる非常に強力な法的文書です。

 そのため、民法ではその作成方法について厳格なルール(方式)を定めています。形式が少しでも不備であれば、どんなに故人の真剣な想いが綴られていても、法的には「ただの手紙」となり、無効となってしまいます。

 遺言にはいくつかの種類がありますが、実務上主に使用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。どちらを選ぶかによって、生前の作成の手間だけでなく、遺されたご家族にかかる負担が天と地ほど変わってきます。

手軽だが危険も隣り合わせ。「自筆証書遺言」の特徴

 自筆証書遺言とは、遺言者が紙にペンで、全文を自ら手書きして作成する遺言書です。

【メリット】

 最大のメリットは、紙とペン、印鑑さえあれば、費用をかけずにいつでもどこでも作成できるという「手軽さ」です。誰にも知られずに作成でき、気が変わればいつでも破棄して書き直すことができます。「まずは自分の気持ちを整理したい」という段階では適していると言えるでしょう。

【デメリット】

  一方で、デメリットは非常に深刻です。まず、自宅のタンスや仏壇などに保管されることが多いため、紛失のリスクや、発見されないリスクがあります。さらに恐ろしいのは、死後、自分に不利な内容が書かれていることを知った相続人によって、隠匿されたり、破棄されたり、あるいは書き換えられたり(改ざん)する危険性がゼロではないという点です。

些細なミスで無効に?自筆証書遺言の失敗事例

 自筆証書遺言における最大のリスクは、形式不備による「無効」です。

 民法の要件は非常に厳しく、以下のようなケースはすべて無効となります。

・パソコンで作成した(財産目録以外はすべて手書きでなければなりません)

・日付が「令和○年○月吉日」となっている(特定の日付が必要です)

・夫婦で1枚の紙に連名で書いた(共同遺言の禁止)

・署名はあるが押印を忘れた

・訂正の仕方が法律の定める方式に従っていない

 「これくらい分かってもらえるだろう」という常識は通用しません。

  実際にあった事例として、不動産の所在地を登記簿通りに正確に記載せず、「自宅の土地建物」と曖昧に書いたために、登記手続きができなかったケースや、加筆訂正の印鑑が漏れていたために遺言全体が無効と判断され、結局、親族間で泥沼の遺産分割協議を行うことになったケースなど、失敗例は枚挙にいとまがありません。

死後の家族を苦しめる「検認」手続きの負担

 自筆証書遺言には、もう一つ大きなハードルがあります。

 それが、死後の「検認(けんにん)」手続きです。

 自筆の遺言書を見つけた相続人は、勝手に開封してはいけません。すぐに家庭裁判所に申し立てを行い、相続人立ち会いのもとで開封・確認する「検認」という手続きを経る必要があります。

 この手続きには、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本を集める必要があり、準備だけで大変な労力を要します。さらに、申し立てから実際の検認期日までには1ヶ月から2ヶ月程度の時間がかかります。

 その間、預金の凍結解除や不動産の名義変更などの手続きは一切進められません。葬儀費用の支払いや当面の生活費が必要な時期に、遺言書があるのに使えないという状況は、ご遺族にとって大きなストレスとなります。

費用はかかるが確実性No.1。「公正証書遺言」の特徴

 公正証書遺言とは、公証役場に出向き、証人2名の立ち会いのもと、遺言者が内容を口述し、公証人がそれを法的な文章にまとめて作成する遺言書です。

【メリット】

  法律のプロである公証人が作成に関与するため、形式不備で無効になるリスクはほぼゼロです。内容は法的に整理され、曖昧さのない明確な文章になります。

 また、原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失、盗難、改ざんの心配がありません。

 近年増えている「認知症」に関するトラブルについても、公証人が作成時に遺言者の判断能力(遺言能力)を確認するため、後から「親は認知症で判断できなかったはずだ」と遺言の無効を主張されるリスクを大幅に減らすことができます。

【デメリット】

 作成には費用と手間がかかります。

 遺産の額に応じて数万円から十数万円程度の公証人手数料が発生するほか、証人2名の手配が必要です。また、公証人との事前打ち合わせが必要なため、思い立ってすぐに完成するものではありません。

公正証書遺言を選ぶ最大のメリットは「即効性」

 公正証書遺言の真価は、遺言者が亡くなった直後に発揮されます。

 自筆証書遺言で必須だった家庭裁判所での「検認」手続きが、公正証書遺言では一切不要なのです。

 相続が発生すると、銀行は口座を凍結します。公正証書遺言があれば、検認を待つことなく、すぐに銀行窓口に提示して預金の解約や名義変更を行うことができます。不動産の相続登記もスムーズです。 ご家族が悲しみの中にある時、煩雑な裁判所の手続きをスキップし、速やかに生活の基盤を安定させることができる。この「安心」こそが、公正証書遺言の最大の価値と言えます。

結論:弁護士が「公正証書遺言」を推奨する理由

 ここまで見てきたように、自筆証書遺言は「今の自分が楽」な方法であり、公正証書遺言は「未来の家族が楽」な方法であると言えます。

 確かに、公正証書遺言は作成時に費用がかかります。しかし、それは「無効にならない確実性」と「遺された家族の手続き負担の軽減」、そして「相続トラブルの防止」を買うための必要経費です。

 せっかく遺言を残すのであれば、確実に実行されなければ意味がありません。安価に済ませようとして自筆を選んだ結果、無効になってしまったり、検認の手間で家族を困らせてしまっては本末転倒です。

 弁護士法人横田秀俊法律事務所では、公正証書遺言の作成を全面的にサポートしております。

  将来の紛争リスクを見据えた遺言内容のプランニングから、公証役場との煩雑な打ち合わせ、証人2名の手配まで、すべてお任せいただけます。

「自分の想いを確実に家族に届けたい」

「円満な相続を実現したい」

 とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

 皆様の想いを、法的に揺るぎない確かな形にするお手伝いをさせていただきます。

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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