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「うちは財産が少ないから関係ない」は危険?相続税がかかるボーダーライン「基礎控除」の計算式を完全解説

相続問題 2025.12.07. #相続問題

「うちは財産が少ないから関係ない」は危険?相続税がかかるボーダーライン「基礎控除」の計算式を完全解説

「相続税なんて、テレビドラマに出てくるような大豪邸に住む資産家だけの話でしょう?」

 もしそのように考えていらっしゃるなら、その認識は少し危険かもしれません。

 かつては確かに、相続税は一部の富裕層だけが対象となる税金でした。しかし、平成27年(2015年)に行われた税制改正により、その常識は大きく覆されました。

 この改正で「基礎控除額(税金がかからない枠)」が大幅に引き下げられた結果、都心近郊に持ち家があるごく一般的なご家庭でも、課税対象となるケースが急増しているのです。

 相続税がかかるか、かからないか。その運命を分けるのは、「遺産の総額」が「基礎控除額」を超えているかどうか、という一点にかかっています。

 このボーダーラインをわずか「1円」でも超えていれば、あなたは相続開始から10ヶ月以内に税務署へ申告する義務を負います。

 本記事では、相続税申告の要否をご自身で判断するための第一歩として、基礎控除額の計算方法と、間違いやすい遺産総額のカウント方法について、法律のプロフェッショナルが詳しく解説します。

相続税の申告が必要か否かの判定基準「基礎控除」

 人が亡くなり相続が発生したからといって、すべてのケースで相続税がかかるわけではありません。

 残されたご家族の生活保障という観点から、国は「遺産が一定額以下であれば、税金はかけませんし、税務署への報告(申告)も不要です」というルールを定めています。

 この非課税となる枠のことを「基礎控除(きそこうじょ)」と呼びます。

 ルールは至ってシンプルです。

  • 遺産の総額 ≦ 基礎控除額

  相続税は0円です。原則として税務署への申告手続きも必要ありません。

  • 遺産の総額 > 基礎控除額

  基礎控除額を超えた部分に対して相続税がかかります。期限内に申告と納税が必要です。

 つまり、ご自身たちの「基礎控除額」がいくらになるのかを知ることが、すべてのスタート地点となります。

今すぐ計算できる!基礎控除額の計算式

 基礎控除額は、ご家族の状況によって金額が変わります。その計算式は、国税庁により以下のように定められています。

 3,000万円 + (600万円 ×法定相続人の数)

 この数式には、2つの要素が含まれています。

 一つは、どのような家庭でも一律に認められる「3,000万円」の定額控除。

 もう一つは、残された家族(相続人)の人数に応じて加算される「600万円 × 人数」の比例控除です。

 つまり、相続人の数が多ければ多いほど、非課税となる枠(ボーダーライン)が広がり、税金がかかりにくくなる仕組みになっています。

【家族構成別】どこから税金がかかる?ボーダーライン早見表

 では、具体的な家族構成の例を挙げながら、実際に基礎控除額を計算してみましょう。

 ご自身のご家庭に近いケースを探してみてください。

(1) 法定相続人が1人の場合(例:配偶者のみ、あるいは一人っ子のみ)

 3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円

 遺産総額が3,600万円を超えると、申告義務が発生します。

 都内に一戸建てやマンションをお持ちであれば、預貯金と合わせるとこの金額を超えてしまうケースは決して珍しくありません。

(2) 法定相続人が2人の場合(例:配偶者と子1人、あるいは子2人)

 3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円

 遺産総額が4,200万円を超えると、申告義務が発生します。

(3) 法定相続人が3人の場合(例:配偶者と子2人、あるいは子3人)

 3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

 遺産総額が4,800万円を超えると、申告義務が発生します。

 このように、相続人が1人増えるごとに、ボーダーラインは600万円ずつ上がっていきます。

特に注意が必要な「法定相続人の数」の数え方

 計算式の「法定相続人の数」という部分ですが、ここには法律(民法)と税金(税法)の独特なルールがあり、間違えやすいポイントです。

ポイント1:相続放棄をした人も人数に含める

 例えば、借金があったため、子供3人のうち1人が家庭裁判所で「相続放棄」をしたとします。民法上、その子は初めから相続人ではなかったことになります。

 しかし、相続税の基礎控除を計算する上では、相続放棄をした人も「法定相続人の数」に含めて計算します。

 これは、相続放棄を意図的に利用して税金を不当に安くすることを防ぐためですが、納税者にとっては有利な(控除額が減らない)ルールです。

ポイント2:養子の人数には制限がある

 養子も実子と同じく相続人となりますが、基礎控除の計算に含められる養子の数には制限があります。

・被相続人に実子がいる場合:養子は1人までカウント可能

・被相続人に実子がいない場合:養子は2人までカウント可能

 誰が法定相続人になるのかという判断は、戸籍を読み解く専門的な知識が必要です。不安な場合は弁護士にご確認ください。

意外な落とし穴!「遺産総額」に含まれるもの、引けるもの

 基礎控除額(ボーダーライン)が算出できたら、次は比較対象となる「遺産の総額」を計算します。

 ここで多くの方が、「亡くなった人の銀行口座の残高と、不動産の固定資産税評価額を足せばいいんでしょう?」と考えがちですが、それは大きな間違いです。

 相続税法独自の見方をする「みなし相続財産」の存在を忘れてはいけません。

【プラスしなければならない財産】

●預貯金、現金、タンス預金

●不動産(土地、建物)

 ※土地は原則として「路線価」などで評価するため、固定資産税評価額より高くなることが一般的です。

●株式、投資信託、国債などの有価証券

●生命保険金(死亡保険金)

●死亡退職金

●過去3年〜7年以内に行われた生前贈与

●相続時精算課税制度を利用した贈与財産

 特に生命保険金と死亡退職金は、受取人固有の財産ですが、税金計算上は遺産に含まれます(ただし、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠を差し引くことができます)。

マイナスできるもの(債務控除)】

●借金、ローン

●未払いの医療費、税金

●葬儀費用(通夜・告別式の費用など)

 これらをすべて合算・差し引きした「正味の遺産額」と「基礎控除額」を比較する必要があります。

「特例を使えば0円」でも申告は必須?期限内申告の重要性

 ご自身で計算してみた結果、「基礎控除を少し超えてしまった」という方もいらっしゃるかもしれません。

 その場合でも、「配偶者の税額軽減(配偶者は1億6,000万円まで無税)」や「小規模宅地等の特例(自宅の土地の評価を80%減額)」といった特例を使えば、最終的な納税額が0円になるケースは多々あります。

 しかし、ここで絶対に覚えておいていただきたい鉄則があります。

「納税額が0円になる特例を使うためには、期限内の申告書の提出が絶対条件である」ということです。

 「どうせ税金は出ないから、申告しなくていいだろう」と勝手に判断して放置すると、特例の適用が認められず、本来払わなくて済んだはずの数百万円もの税金と、無申告加算税などのペナルティを課されることになります。

 基礎控除を「1円」でも超えているならば、たとえ税金が出なくても、必ず「10ヶ月以内」に税務署へ申告書を提出しなければなりません。

正確な相続人調査と財産評価は専門家の連携で

 ここまで解説してきた通り、相続税がかかるかどうかの判断には、以下の2つの専門的な作業が不可欠です。

1.戸籍を調査して、正確な「法定相続人」を確定させること(法務の領域)

2.不動産や保険金などを含めた、正確な「遺産総額」を算出すること(税務の領域)

 特に不動産の評価や、複雑な親族関係の整理は、一般の方がご自身だけで完結させるのは非常にリスクが高い作業です。

 基礎控除ギリギリのラインだと思っていたら、税務調査で計算ミスを指摘され、多額の追徴課税を受けることもあります。

 「うちは関係ない」と思い込まず、少しでも不安がある場合は、専門家の診断を受けることを強くお勧めします。

 弁護士法人横田秀俊法律事務所では、相続問題に精通した弁護士が、まずは「誰が相続人になるのか」を正確に調査・確定いたします。

 さらに、相続税の申告が必要となる可能性がある場合には、相続に強い信頼できる税理士と緊密に連携し、正確な財産評価と期限内の申告をワンストップでサポートする体制を整えております。

 あなたとご家族の資産を守るために、まずは当事務所にご相談ください。

 専門家の知見を結集し、あなたにとって最善の解決策をご提案いたします。

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