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「共有名義」の不動産トラブルと6つの法的解消法(訴訟含む)

相続問題 2025.12.05.

「共有名義」の不動産トラブルと6つの法的解消法(訴訟含む)

 相続財産の中に実家などの不動産が含まれている場合、「遺産分割協議で揉めるのは嫌だ」「とりあえず平等にしておこう」といった理由で、兄弟姉妹や親族間での「共有名義」を選択されるケースが後を絶ちません。

 しかし、不動産の実務や法律の現場において、この「共有名義」は、将来的に資産を「負動産(所有しているだけで負担になる不動産)」に変えてしまう最も危険な選択の一つと言われています。

「建物を売却して現金化したいのに、弟がハンコを押してくれない」

「誰も住んでいない実家の固定資産税を、代表者である私だけが払い続けている」

「共有者の一人が認知症になり、口座が凍結されて修繕費用も出せない」

 これらは決して特別な事例ではありません。共有関係は、一度こじれると当事者同士での解決が極めて難しく、数年、数十年と解決しないまま放置され、その間に新たな相続が発生して権利者が数十人に膨れ上がるといった最悪の事態も招きます。

 本記事では、共有不動産がなぜ法的に「身動きの取れない」状態に陥りやすいのか、そのメカニズムを解説するとともに、その膠着状態を打破するための6つの法的解決策について詳しくご紹介します。

 特に、話し合いが決裂した場合の強力な解決手段である「訴訟」についても触れていきます。

「とりあえず共有」が招く未来の時限爆弾

共有名義とは、一つの不動産を複数の人が共同で所有している状態(例:長男1/2、次男1/2)を指します。

 相続発生直後は「家族仲も良いし、問題ないだろう」と思われがちですが、時が経つにつれて、それぞれの生活環境や経済状況は変化します。「親と同居していた長男はそのまま住み続けたいが、住宅ローンを抱える次男はお金が必要なので売りたい」といった利害の対立が必ずと言っていいほど表面化します。

 さらに恐ろしいのは、時間の経過による「権利の細分化」です。 共有者の誰かが亡くなると、その持分はさらにその配偶者や子供たちに相続されます。これを繰り返すことで、全く面識のない遠い親戚や、連絡先の分からない人物が共有者に加わることになります。 こうなると、全員の合意を取り付けることは事実上不可能となり、不動産は完全に塩漬け状態となってしまうのです。

自由に使えない?民法が定める「同意」の厳格なルール

 なぜ、共有名義の不動産はこれほどまでにトラブルになりやすいのでしょうか。その根本的な原因は、民法で定められた「不動産の管理・変更に関するルール」にあります。

 法律は、共有物に対して行う行為を以下の3つのレベルに分け、それぞれに必要な「同意のハードル」を設定しています。

・保存行為(現状を維持する行為)

【条件:各共有者が単独で可能】

 雨漏りの修理や、不法占拠者の退去要求などが該当します。これは物件を守るための行為なので、他の共有者の同意なしに一人で行えます。

 ・管理行為(利用・改良する行為)

【条件:持分価格の過半数の同意が必要】

  賃貸物件として貸し出して家賃を得る契約や、その契約の解除、また一般的なリフォームなどが該当します。ここで重要なのは「人数の過半数」ではなく「持分割合の過半数」である点です。持分が半々(1/2ずつ)の場合、相手の合意がなければ何も決められません。

 ・変更・処分行為(性質を変える・手放す行為)

【条件:共有者全員の同意が必要】

  不動産全体の売却、建物の取り壊し、大規模なリノベーション、抵当権の設定などが該当します。 これが最大のネックです。例えば、共有者が100人いたとして、99人が売却に賛成しても、たった1人が反対(あるいは行方不明)であれば、売却することは絶対にできません。

 この「全員一致」という極めて高いハードルが、多くの共有不動産を動かせない状態に追い込んでいるのです。

共有状態を完全に解消するための6つの法的手段

 では、このような膠着状態を打破し、不動産を健全な資産として活用、あるいは清算するにはどうすればよいのでしょうか。 法的には、主に以下の6つの解決アプローチが存在します。

(1) 現物分割(げんぶつぶんかつ)

  土地を分筆登記し、物理的に分けてしまう方法です。例えば100坪の土地を50坪ずつに分け、西側をAさん、東側をBさんの単独名義にします。 土地が広く、更地である場合には有効ですが、建物が建っている場合や、分割することで土地の形状が悪くなり資産価値が下がる場合には適していません。

(2) 代償分割(だいしょうぶんかつ)

  共有者の一人が、他の共有者の持分を買い取り、単独所有にする方法です。 例えば、実家に住み続けたい長男が、次男の持分(1/2)に相当する現金を支払って、すべての権利を取得します。不動産を残したい人に資金力があり、かつ「いくらで買い取るか」という評価額の合意ができればスムーズな方法です。

(3) 換価分割(かんかぶんかつ)

  共有者全員が合意して不動産全体を第三者に売却し、諸経費を差し引いた売却代金を持分に応じて分配する方法です。 現金化するため1円単位まで公平に分けやすく、市場価格で売却できるため経済的メリットも大きい方法です。ただし、前述の通り「全員の売却意思」が一致していることが絶対条件です。

(4) 自己持分のみの売却

 他の共有者の同意が得られない場合、自分の「持分」だけを第三者(不動産買取業者など)に売却してしまうことも可能です。 他の共有者との関係を絶つことができる最も早い方法ですが、完全な所有権ではない「共有持分」は利用価値が低いため、通常の市場価格よりもかなり安く買い叩かれる傾向にあります。

(5) 持分の放棄

  「売れなくてもいいから、とにかく管理責任や固定資産税の負担から逃れたい」という場合の最終手段です。自分の持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。 ただし、登記の移転手続きには他の共有者の協力が必要であり、勝手に放棄して終わり、というわけにはいきません。

(6) 共有物分割請求訴訟

  上記の話し合い(協議)がまとまらない場合に用いる、強力な法的手段です。次項で詳しく解説します。

話し合いが決裂した時の切り札「共有物分割請求訴訟」とは

 当事者同士の話し合いでは、「売りたい」「売りたくない」の平行線であったり、法外な金額を要求されたりと、感情的な対立から解決の糸口が見えないことが多々あります。

 そのような膠着状態を打破するために法律が用意しているのが、「共有物分割請求訴訟(きょうゆうぶつぶんかつせいきゅうそしょう)」です。

 これは、裁判所に対して「共有状態の解消」を求める訴えです。

 この訴訟の最大の特徴は、「共有関係の解消は各共有者の権利であるため、裁判所は原則として分割を拒否せず、必ず何らかの解決方法(判決)を示す」という点にあります。

 裁判所は、当事者の希望や事情を考慮しつつ、以下の順序で強制的な分割方法を決定します。

1.現物分割(分けられるなら物理的に分ける)

2.代償分割(誰かが対価を払って取得する)

3.競売分割(競売にかけて代金を分ける)

 最も注目すべきは、3つ目の「競売(けいばい)分割」です。

  物理的に分けられず、誰も買い取る資金がない場合、裁判所は「競売で売って、お金を分けなさい」という判決を下します。 競売になると、一般市場価格の6〜7割程度で安く買い叩かれてしまうリスクがあります。お互いに損をするこの結末は、原告(訴えた側)も被告(訴えられた側)も避けたいものです。

複雑な権利調整と訴訟対応は弁護士にお任せください

 共有不動産のトラブルは、親族間の感情的な対立が根底にあることが多く、当事者だけで冷静に解決を図るのは至難の業です。 また、解決手段の一つである「訴訟」は、司法書士や税理士では代理人になることができず、交渉や法廷での主張を行えるのは弁護士だけです。

「共有物分割請求訴訟」は、実際に判決まで進むこともあれば、訴訟という強いプレッシャーを背景に話し合いで解決することもある、非常に高度で戦略的な手続きです。 どのタイミングで訴訟に踏み切るか、どのような解決案(和解案)を提示するかによって、最終的に手元に残る金額や資産価値は大きく変わります。

 弁護士法人横田秀俊法律事務所では、不動産問題に精通した弁護士が、依頼者様の代理人として相手方との交渉から訴訟手続きまでを一貫してサポートいたします。

「共有者と顔を合わせたくない」

「理不尽な要求をされて困っている」

「塩漬けの不動産をどうにかしたい」

  そのようなお悩みをお持ちの方は、問題がさらに複雑化する前に、ぜひ当事務所にご相談ください。  

 法律の力を正しく使い、あなたの大切な財産を守るための最適な解決策をご提案いたします。

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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