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【弁護士解説】遺産分割協議書の作成方法と「相続放棄者」がいる場合の対処法|手続きをスムーズに進めるための重要ポイントと落とし穴

相続問題 2025.11.30.

【弁護士解説】遺産分割協議書の作成方法と「相続放棄者」がいる場合の対処法|手続きをスムーズに進めるための重要ポイントと落とし穴

 大切なご家族が亡くなられた後、悲しみに暮れる間もなく訪れるのが、煩雑な相続手続きの数々です。四十九日法要を終え、少し落ち着いた頃に本格化するのが、遺産をどのように分けるかを決める「遺産分割協議」です。

 相続人全員での話し合いがまとまれば、精神的な負担は大きく減ることでしょう。しかし、口頭での合意だけでは、実際の預金の解約や不動産の名義変更はできません。合意内容を法的に有効な書面、「遺産分割協議書」として残す必要があります。

 ところが、この遺産分割協議書の作成は、一般の方が想像する以上に厳格なルールが求められます。たった一文字の記載ミスや、書類の有効期限切れによって、金融機関や法務局で手続きを拒否され、また一からやり直しになってしまうケースも少なくありません。特に、相続人の中に「相続放棄」をした方がいる場合は、書類の整え方が通常とは異なるため注意が必要です。

 本記事では、遺産分割協議書を作成する上で絶対に押さえておきたい具体的な注意点や記載のルール、そして相続放棄者がいる場合の実務的な取り扱いについて、弁護士の視点から詳細に解説します。

なぜ「遺産分割協議書」が必要なのか

 遺産分割協議書とは、被相続人(亡くなった方)の遺産について、「誰が」「どの財産を」「どれくらい」取得するかを、相続人全員で合意し、その内容を記した契約書のことです。

 「家族仲が良いから、書面なんて堅苦しいものはなくても大丈夫」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、遺産分割協議書は、単なる家族間のメモ書きではありません。銀行、証券会社、法務局、税務署といった対外的な第三者機関に対して、「相続人全員がこの分け方に納得しました」ということを証明する唯一の公的な証拠書類となります。

 金融機関や法務局は、後々のトラブル(「勝手に預金を引き出された」といった争い)を防ぐため、形式が整っていない書類での手続きは一切受け付けてくれません。

 そのため、完成した遺産分割協議書には、以下の厳格な要件が求められます。

・相続人全員が署名すること(代筆は避け、必ず本人が自書することが望ましい)

・相続人全員が実印を押印すること(認印は不可)

・全員の印鑑登録証明書を添付すること

 一人でも署名が漏れていたり、実印ではなく認印が押されていたりすれば、その協議書は法的に無効となり、手続きに使用することはできません。

財産の特定は「一言一句正確に」が鉄則

 遺産分割協議書を自分たちで作成しようとした際に、最も不備が起きやすく、かつ修正が大変なのが「財産の記載方法」です。

「自宅の土地と建物は長男が相続する」

「〇〇銀行の預金はすべて妻が相続する」

 一見、意味が通じるように思えますが、このような曖昧な表現では、法務局や銀行では手続きができない可能性が非常に高いです。第三者が見ても、客観的に「どの財産か」が特定できるように記載しなければなりません。

預貯金の場合の注意点

 金融機関名は当然ですが、「支店名」「預金種別(普通・定期・当座など)」「口座番号」まで正確に記載する必要があります。 合併などで銀行名や支店名が変わっている場合もありますので、通帳の表紙だけでなく、見開きページの記載を確認するか、残高証明書を取得して現在の正確な情報を確認することをお勧めします。

(記載例:〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号1234567)

不動産の場合の注意点

 ここが最も間違いの多いポイントです。私たちが普段使っている「住所(住居表示)」と、法務局で管理されている「登記上の表示(地番・家屋番号)」は、異なる場合が多々あります。 遺産分割協議書には、必ず法務局で取得できる「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、そこに記載されている通りに転記する必要があります。 土地であれば「所在・地番・地目・地積」、建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を、一言一句間違えずに記載してください。「〇番地〇」の「番地」という文字が入るか入らないかといった細部まで一致させる必要があります。

 もし記載ミスがあった場合、訂正するためには相続人全員の実印による訂正印(捨印がない場合)が必要になることがあり、郵送でやり取りをしている場合などは大変な手間となってしまいます。

意外な落とし穴?添付書類の「有効期限」

 遺産分割協議書そのものには、法律上の有効期限はありません。一度成立すれば、数年後でも有効な合意として扱われます。

 しかし、手続きの際にセットで提出を求められる添付書類、特に「印鑑登録証明書」には、提出先によって独自の有効期限が設けられていることが一般的です。

 多くの金融機関では、預金解約や名義変更手続きにおいて「発行後3ヶ月以内のもの」または「発行後6ヶ月以内のもの」といった期限を定めています。不動産登記(相続登記)においては、印鑑証明書の期限は設けられていませんが、金融機関の手続きと並行して行うことが多いため、やはり新しいものを用意するに越したことはありません。

 

 よくある失敗例として、「協議が長引くかもしれないから」と早めに全員分の印鑑証明書を集めておいたものの、実際に話し合いがまとまって協議書が完成した時には、発行から半年以上が経過していた、というケースがあります。この場合、再度全員に役所へ行ってもらい、取り直してもらわなければなりません。これは相続人にとって心理的にも手間の面でも負担になります。

 書類の取得時期と、協議の進捗、そして手続きのスケジュール管理はセットで考えることが大切です。

「相続放棄した人」がいる場合の協議書の作り方

 相続手続きにおいて、非常に誤解が多いのが「相続放棄」の扱いです。ここでの「相続放棄」とは、家庭裁判所で正式に申立てを行い受理された、法的な相続放棄のことを指します。

 「私は財産はいらないから」と口頭で言っただけの場合や、遺産分割協議の中で「自分の取得分をゼロ」とすることに合意した場合は、法的な意味での相続放棄ではありません。これらは「事実上の放棄」に過ぎず、その方はあくまで相続人の一人です。したがって、遺産分割協議書への署名・押印が必要ですし、印鑑証明書の添付も必須となります。

一方で、家庭裁判所で正式に相続放棄をした人は、法律上「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。 そのため、以下のルールが適用されます。

・遺産分割協議に参加する必要はない

・遺産分割協議書への署名・押印も不要

 しかし、ここで実務上の問題が発生します。金融機関や法務局の担当者が戸籍謄本を見たとき、本来相続人であるはずの人の名前があるのに、協議書に署名がないと、「なぜこの人の署名がないのか?合意が取れていないのではないか?」と疑問を持たれます。

 この疑問を解消し、手続きを進めるためには、その人が相続人から外れていることを公的に証明しなければなりません。そのために必要なのが「相続放棄申述受理証明書」です。 これは家庭裁判所で発行される書類で、手続きの際には、遺産分割協議書とセットで金融機関や法務局へ提出します。もし身内に相続放棄をした方がいる場合は、事前にこの証明書を手配してもらうよう依頼しておく必要があります。

不備のない協議書作成のために

 遺産分割協議書の作成は、相続人調査(戸籍の収集)、財産調査、そして正確な書面の作成と、専門的な知識と緻密な作業が求められます。

 特に、将来発見されるかもしれない新たな財産についてどう扱うかを決める条項(「後日判明した財産については〇〇が取得する」等)を入れておくなど、リスク管理の視点も欠かせません。不備が見つかれば、銀行窓口で何時間も待たされた挙句に受理されなかったり、最悪の場合、親族間で再度判子の押し直しをお願いすることになり、人間関係の悪化を招いたりすることさえあります。

 確実かつ迅速に手続きを完了させ、ご家族が新たな生活へスムーズに進めるようにするためにも、遺産分割協議書の作成や、それに伴う戸籍収集、財産調査については、専門家である弁護士にお任せいただくことを強く推奨いたします。

 遺産分割協議書の作成、複雑な戸籍の読み解き、あるいは相続放棄の手続きなど、相続に関するお悩みは、ぜひ一度、弁護士法人横田秀俊法律事務所にご相談ください。

 当事務所では、形式的な書面作成の代行にとどまらず、ご依頼者様のご事情やご家族の状況に合わせ、後々のトラブルを防ぐための最適な解決策をご提案いたします。法的に不備のない書面作成から実際の手続きまで、トータルでサポートし、安心できる未来へ進むお手伝いをさせていただきます。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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