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【相続放棄】「3ヶ月」の期限はいつから数える?「知った時」の罠と起算点の真実

相続問題 2025.11.27.

【相続放棄】「3ヶ月」の期限はいつから数える?「知った時」の罠と起算点の真実

 ある日突然、疎遠だった親族が亡くなったという知らせが届く。それと同時に、故人が多額の借金を抱えていたことが判明する。ドラマのような話ですが、これは現実の法律相談で頻繁に持ち込まれる相談内容のひとつです。

 借金を引き継がないための手続きである「相続放棄」には、「3ヶ月」という厳格な期限があります。しかし、この期限の開始時点(起算点)を誤解していたために、本来なら放棄できたはずの借金を背負ってしまうケースが後を絶ちません。

 「亡くなった日から3ヶ月経っているから、もう手遅れだ」と諦めるのは早計です。また逆に、「まだ通知が来ていないから大丈夫」と楽観視するのも危険です。

 本記事では、相続放棄における最も重要な「期間の数え方」について、法的な観点から詳しく、かつ分かりやすく解説します。

相続放棄の基本:「熟慮期間」の3ヶ月とは

 人が亡くなると、その瞬間に相続が開始します。相続人は、亡くなった方(被相続人)の預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産もすべて包括的に承継するのが原則です。

 しかし、身に覚えのない借金を突然背負わされるのはあまりに酷な場合があります。そこで民法は、相続人が以下の3つの選択肢から態度を決めるための期間を設けています。これを「熟慮期間」と呼びます。

・単純承認:プラスもマイナスもすべて引き継ぐ(通常はこれになります)

・限定承認:プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を引き継ぐ

・相続放棄:はじめから相続人ではなかったことになり、一切を引き継がない

 相続放棄この熟慮期間は「3ヶ月」です。この期間内に家庭裁判所へ申述をしなかった場合、自動的に「単純承認」をしたものとみなされ、あとから借金の存在がわかっても放棄することは原則としてできなくなります。

 したがって、負債が明らかである場合や、相続争いに巻き込まれたくない場合は、この期間内に手続きを完了させる必要があります。

法律が定める「知った時」の本当の意味

 では、この運命を分ける「3ヶ月」のカウントダウンは、いつスタートするのでしょうか。 民法915条にはこう書かれています。「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」であると。

 ここでの最大のポイントは、条文が「被相続人が死亡した日から」とは書いていない点です。 一般的に、同居している家族が亡くなれば、その日のうちに死亡の事実を知り、自分が相続人であることも認識します。この場合は「死亡日=知った時」となり、死亡日から3ヶ月が期限となります。

 しかし、現代においては核家族化が進み、親族間の交流が希薄なケースも珍しくありません。死亡の事実自体を知らなかったり、自分が相続人になったことを知らなかったりする場合、死亡日から機械的に期限をカウントするのは不合理です。 そのため、実務上、この起算点は「相続開始の原因となる事実(死亡)を知り、かつ、それによって自分が法律上の相続人となったことを覚知した時」と解釈されています。

ケース別解説①:疎遠な親族が亡くなった場合

 具体例を見てみましょう。

 例えば、両親が離婚しており、長年音信不通だった父親が1月1日に亡くなったとします。あなたがその事実を知ったのが、警察や役所からの通知が届いた4月1日だった場合を考えてみましょう。

 もし「死亡日から3ヶ月」が絶対のルールであれば、4月1日の時点で既に期限切れとなってしまいます。しかし、これでは相続人にあまりに過酷です。 この場合、あなたが「父親の死亡を知った」のは4月1日ですから、この日が起算点となります。つまり、4月1日から3ヶ月後の7月1日までに家庭裁判所に申し立てを行えば、相続放棄は受理される可能性が高いのです。

 このように、被相続人との生前の関係性や、死亡を知るに至った経緯は、手続きにおいて非常に重要な要素となります。

ケース別解説②:先順位の相続人が放棄して自分に回ってきた場合

 次によくある誤解が、相続の順位に関するものです。 相続には優先順位があります。第1順位は「子」、第2順位は「直系尊属(親など)」、第3順位は「兄弟姉妹」です(配偶者は常に相続人です)。

 例えば、借金を残して亡くなった夫について、妻と子供たち(第1順位)が全員相続放棄をしたとします。すると、借金の相続権は、夫の親(第2順位)へ、親もいなければ夫の兄弟姉妹(第3順位)へと次々に移っていきます。

 ここで重要なのは、第2順位・第3順位の方々の3ヶ月のカウントダウンは、「被相続人が亡くなった日」には始まらないということです。 彼らの期間は、「先順位の相続人(妻と子など)が全員放棄したことにより、自分が相続人になったことを知った時」からスタートします。

 先順位者が放棄してから数ヶ月、あるいは数年後に債権者から「あなたが相続人になりました」という通知が来て初めて、自分の番が回ってきたことを知るケースも多いです。この場合、その通知を受け取った日が起算点となります。「兄が死んでから1年以上経っているから関係ない」と放置せず、通知が来たらすぐに行動を起こす必要があります。

ケース別解説③:死後数年経ってから借金が発覚した場合

 最も判断が難しく、かつ専門的な知識が必要となるのがこのケースです。 被相続人が亡くなり、自分たちが相続人であることも知っていた。しかし、「故人に借金などあるはずがない」と信じており、預貯金などの遺産もほとんどなかったため、特に何の手続きもしないまま3ヶ月が過ぎてしまった。 ところが、死後1年が経過してから、消費者金融から督促状が届いた、というような場合です。

 原則通りに考えれば、自分が相続人であることを知ってから3ヶ月が経過しているため、単純承認したことになり、借金を払わなければなりません。 しかし、最高裁判所の判例(昭和59年4月27日判決)では、一定の要件を満たす場合、例外的な救済を認めています。

 もし、相続人が「相続財産が全く存在しない」と信じるについて正当な理由がある場合には、例外的に「相続財産の全部または一部の存在を認識した時(督促状が届いた時など)」から3ヶ月の期間を起算する、という考え方です。

 ただし、これはあくまで「例外」です。「調査をするのが面倒だったから調べなかった」というような理由では認められません。被相続人との生前の交際状況や、資産状況を知り得なかった事情などを、裁判所に対して説得力を持って主張する必要があります。

うっかりやってはいけない「単純承認」の罠

 期限の問題と合わせて注意しなければならないのが、「法定単純承認」という制度です。 たとえ3ヶ月以内であっても、相続人が「相続財産の処分」を行ってしまうと、法律上、単純承認をしたとみなされ、相続放棄ができなくなります。

・故人の預金を引き出して自分の生活費に使った

・故人の車や不動産を売却した

・故人の借金の一部を遺産から返済した

 これらはすべて「処分」にあたる可能性があります。 「期間はいつから始まるか」を気にする以前に、これらの行為をしてしまうと、その時点でアウトになってしまう恐れがあります。遺品整理や形見分けの範囲であれば許容されることもありますが、その線引きは非常に微妙です。

 放棄を検討している場合は、遺産には一切手を付けないのが最も安全です。

裁判所への説明が成否を分ける

 ここまで解説してきたように、相続放棄の「3ヶ月」は、単にカレンダーの日付を数えるだけの単純なものではありません。

 特に、死亡から3ヶ月以上経過してからの申立て(期間徒過後の相続放棄)においては、

「なぜ放棄の申立てが遅れたのか」

「いつ、どのようなきっかけで借金の存在を知ったのか」

を、証拠に基づいて論理的に説明する「事情説明書」の作成が極めて重要になります。 裁判所は提出された書類だけで判断します。「事情を汲んでくれるだろう」という甘い期待は通用しません。一度却下されてしまうと、即時抗告という不服申し立ての手続きはありますが、覆すのは極めて困難になります。事実上の一発勝負の手続きなのです。

最後に:弁護士法人横田秀俊法律事務所へご相談ください

 ご家族を亡くされた悲しみの中で、慣れない法律手続きを行うことは精神的にも大きな負担となります。ましてや、借金の督促という不安な状況下では、冷静な判断ができずに誤った対応をしてしまうことも少なくありません。

「通知が来てから慌てている」

「自分がいつから相続人になったのか正確に知りたい」

「死後数年経っているが放棄できる可能性があるか知りたい」

  このようなお悩みをお持ちの方は、自己判断で手続きを進める前に、まずは専門家にご相談ください。

 弁護士法人横田秀俊法律事務所では、相続放棄に関する豊富な経験とノウハウを有しています。特に、3ヶ月の期間が経過してしまった案件や、複雑な親族関係が絡む案件においても、ご依頼者様の事情を丁寧に聞き取り、裁判所に認めてもらえるよう法的な主張を組み立てます。

 相続放棄は時間との戦いです。手遅れになる前に、私たちにご相談ください。

 あなたを不当な負債から守り、安心できる日常を取り戻すお手伝いをいたします。

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監修・執筆:弁護士 横田 秀俊 福井弁護士会所属

日本弁護士連合会の中小企業法律支援センター幹事を務め、中小企業の法的支援体制の構築に携わる。
福井県内地域においては、福井県事業承継・引継ぎ支援センターのエリアコーディネーターとして、数多くの事業引継ぎや経営課題の解決を主導。
法律のプロフェッショナルとして、緻密な法理と現場主義を両立させた的確なアドバイスを提供している。

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